【ネタバレあり・レビュー】テイクバック | 雪山でジーナ・カラーノが駆け回る!寒いけど熱い作品!
女優ジーナ・カラーノといえば、総合格闘技でも活躍をした人物です。
その経歴から『ワイルド・スピード EURO MISSION』(2013)、『デッドプール』(2016)などに出演し、一躍有名となりました。
そんなカラーノが雪山でのアクションに臨んだのが今回レビューする『テイクバック』です。
作品概要
原題:Daughter of the Wolf製作年:2018年(日本未公開)
監督:デビッド・ハックル
脚本:デビッド・ハックル、ニカ・アジアシュビリ
主演:ジーナ・カラーノ
ストーリー
元軍人でシングルマザーであるクレアは、誘拐された息子を救うため身代金を持ち、雪山の取引場所に向かった。犯人たちはクレアから金を受け取ると彼女を殺そうとする。
それを返り討ちにしたクレアは一味の一人ラーセンを人質に、黒幕である"父親"のもとへ向かう。
【感想】意外と悪くないけれど何かが足りないサスペンス・アクション
白熱の雪山アクション
突然ですが、私は個人的に雪山(あるいは雪原)アクションが好物です。ビジュアルの美しさは然ることながら、動きがある程度制限される状況(走りづらかったり)、自然の猛威など、普通のシチュエーションとは異なる展開を見ることが出来ますから。
本作はそんな雪山アクションがガッツリ見れる作品でした。というか、雪山でのシーンしかありませんでした。
そのため、雪山アクションの色々な魅力を詰め込んだいたと思います。
雪に足を取られながらの追走劇、氷の張った湖への落下、林の中での銃撃戦、スノーモービル同士のカーチェイスなどなど、街中ではできない(起こりえない)要素を見せていました。
その中でも狼との攻防戦はなかなかに見もの。あれこそまさに雪山だからこそのシーンだと思います。
また、この作品ではなにかと雪山の景観を使ったシーンが多いです。
雪山への愛なのか、はたまた尺稼ぎなのかは分かりませんが、クレアが滝の真上で戦うシーンは、その景観を生かした面白いシーンであったと思います。
雪山ファンにとって、環境を生かしたアクションシーンというのは魅力的でしたね。
グダグダ・ドキドキの展開
雪原でのアクションが良かったものの、そこへの持っていき方には少し苦言を呈したいです。というのも、グダグダが過ぎます。
たしかに、雪山での動きが制限されるシーンは好みだと書きましたが、それを何度も見せられると流石にテンポの悪さを感じました。
なにより、追いかけて捕まえる→逃げられる→また追いかけて捕まえる、なんていうシーンは必要性がありません。
敵が人質であるクレアの息子を拘束が緩かったという理由で逃げられたりもしますし、詰めが甘い……というかただただマヌケなグダグダ展開が多かったように思えました。
まあ、そうしたグダグダな展開からアクションにつなげていたので、結果的には必要になるわけで……
結果(アクション)ありきでストーリーを作るとこんな感じになるのかもしれませんね。
情緒不安定なキャラクターたち
上に書いたアクションへのつなぎ方はツッコミどころ満載でした。ただし、他にもツッコミを入れずにはいられない所はありました。
中でもキャラクターの動きは色々と凄まじいです。
例えば、悪党の一人ラーセンはクレアに命を狙われているにも関わらず、彼女がピンチに陥ると救うという行動を見せます。
「人殺しは嫌だ」という理由こそありますが、一度は殺そうとしていたのに心変わりした理由がよく分かりません。
とはいえ、改めて考えてみて「やっぱり無理」となったと解釈すれば一応筋は通るのかも……?
一番分からないのは黒幕である"父親"の行動です。
彼は初めの内はクレアの息子チャーリーに対して好意的な感情を見せていました。(なぜか励ますような言葉すらかけていますし)
しかし、後半になっていくにつれて何故か牙をむくようになり、最終的には憎むべき相手のように振舞い始めます。
一体、何が彼をそうしたのか謎でした。
義理とはいえ息子であるラーセンをすぐに裏切者扱いしたかと思えば「お前のことを気に入っていた」と言い始めたり、情緒不安定さを随所に感じさせていました。
このせいで、リチャード・ドレイファスは大物そうなのに言動は小物となってしまっており、色々ともったいない存在となっていたと思います。
他のキャラクターも「魅力的」と呼べる人物はおらず、損をしている感じがしましたね。
この作品のタイトルについて
この作品で一番ポイントとなっていたのはタイトルだと思います。邦題は「テイクバック」(take back)で、意味としては「取り返す」、「連れ戻す」となっています。
主人公のクレアが息子を取り返そうとする内容からすればそのままの意味として読み取れますよね。
で、気になるのが原題の方。
一番上の概要にも一応書いていますが原題は「Daughter of the Wolf」(狼の娘)となっています。
作品と照らし合わせてみると、黒い狼が随所で登場していることからもそれが関係していることは確実です。
で、この狼が何を象徴しているのかというと、個人的な推察ですがクレアの父(息子チャーリーの祖父)だと思います。
クレアの前に見守るようにして現れ、敵であった"父親"に対しては牙をむき出しにするその姿は、結構明確に示唆していたのではないでしょうか。
まあ、そもそもこの作品で「娘」と定義づけられるのはクレア一人だけですし、彼女のことであるのは確実なんですけどね。
ちなみに、狼には「死者の死者」であったり「聖者の守護者」の象徴としての意味もあるそう。(他にも色々と意味があるらしいです)
本作がそれを意図していたのかは不明ですが、符合する点もあって面白いものだと思いました。
邦題だと「狼の娘」なんてタイトルを付けてもなかなか見る人は現れないでしょう。たぶん自分も興味を持たないかと思います。
英語だからこそ出せる良いセンスのタイトルでしたね。
【ネタバレあり・レビュー】大いなる幻影 | ジャン・ルノワール監督が世界にもたらした戦争に抱く幻影
戦争映画というのは、その歴史を伝えると同時に、その製作国の兵士がいかに偉大であったのかを伝える役割も担っています。
そのため、多少のリアリティの欠如があっても贔屓目で描いてしまうのは仕方がないことだと言えるでしょう。
今回紹介するフランスで製作された『大いなる幻影』は、リアリティを重視した一作。
監督ジャン・ルノワールが反戦の意を込めて製作し、物議を醸した作品です。
作品概要
原題:La Grande Illusion製作年:1937年(日本公開:1949年)
監督:ジャン・ルノワール
脚本:シャルル・スパーク、ジャン・ルノワール
主演:ジャン・ギャバン
ストーリー
第一次世界大戦下、ドイツ軍に捕虜にされたマレシャル中尉は、ボアルデュー大尉らと収容所へ送られる。彼らは捕虜ではあるものの、ドイツ軍たちと
戦争の脚色した悲劇ではなくリアルを描いた作品
第一次世界大戦下の捕虜たち
ドイツ軍捕虜にされた将校たちの物語と聞くと、個人的にはスティーブ・マックイーン主演の『大脱走』を連想します。あちらも捕虜収容所からの脱走という意味では似た展開を見せていると言えるでしょう。
ただ、違ったのは時代。
この時代の違いから、ドイツ軍の捕虜に対する扱いの柔和さが感じられました。
というのも、この作品での捕虜の扱いはとても緩さを感じました。
ドイツ軍は敬意を払いながら接していますし、食べ物なんて捕虜のほうが良いものを食べている描写さえありました。
息抜きの時間や物もしっかりと確保されており、捕虜というよりはお客のような印象さえあったと思います。
捕虜の役割は脱走にあり
上に書いた捕虜の扱いの良さもあって、正直見ていても「脱走する必要ある?」と思わずにはいられませんでした。しかし、マレシャル中尉らもフランス軍に所属する捕虜。威厳を保つために彼らは脱走の準備をしていました。
たしかにそこに軍人の気高き精神はあるのですが、皮肉にもその脱走計画は完璧とは言えない結果に終わってしまいます。
1度目はせっかく掘り進めたトンネルを収容所移動のために使わずじまい。
2度目はマレシャル中尉、ローゼンタール中尉が脱走こそ成功させるものの、ボアルデュー大尉は射殺され、中尉たちもボロボロになっていました。
また、1度目のトンネルを使わず仕舞いだった際に「俺たち実は脱走するために穴を掘っていたんだ」と、マレシャル中尉がドイツ軍兵にバラすシーンがありました。
しかし、言葉が通じておらず彼らが脱走を企てていたという事実は本人らしか認識していないことに。
普通、脱走系の映画では自国の兵士たちの脱走を美談のように描くイメージが強いです。(戦争事情が絡んでいると余計に)
それを完ぺきとは言えない形で描いていたというのは印象に残るものがありました。
幻影がもたらす生と死
上に書いた脱走に対して完ぺきと言えない描き方をしたのはどうやら監督自身が、脱獄映画で自国をよく見せるための脚色を嫌ったからだそうです。そうした反戦的な考え方がこの作品のテーマのひとつ。
中でも人間同士のつながりについてはかなり訴えかけるものがありました。
例えば、ボアルデュー大尉がドイツ軍収容所の署長であるラウフェンシュタイン大尉と奇妙な友情を築く、死にそうになっていたマレシャル中尉らをドイツ人女性が助けたりといったシーンは、そうしたメッセージ性を強く感じさせました。
国や考え方が違えども抗うことのできない人間らしさが見えるシーンの数々(特に作品の後半部)は、戦争の無情さを直接的な描写なく考えさせてくれました。
一方で、そうした区別がマレシャル中尉らの命を救ったのが皮肉な話であったように思えます。
目には見えない国境をもしもドイツ軍が無視して銃を撃っていればおそらく彼らは命を落としていましたからね。
そうしてみると、国境という目に見えない幻影が命を救ったとも読み取れるような気がしました。
今の時代だからこそ、こうした視点を「面白い解釈だ」と見ることができますが、公開当時はまだ1937年というのですから驚きです。
いかにセンセーショナルな内容であったのかは、当時の人のみぞ知ることでしょうね。
『大いなる幻影』が各国にもたらした影響
この作品、第二次世界大戦に入る前の公開作であることから(1939年から第二次世界大戦)、各国はその反戦的な内容に過敏になっていたそう。日本でも上映中止という事態(のちに公開)という形をとったそうで、その影響の凄まじさを感じさせます。
では、各国の上映事情はどうだったのか、主要な国だけですが以下にまとめてみました。
〇フランスでのプレミア公開が1937年6月
〇(再)が付いているのは一度公開されながらも上映禁止による再公開
イギリス | 1938年1月 |
アメリカ | 1938年9月 |
フランス | 1944年9月(再) |
イタリア | 1947年10月(再) |
オーストリア | 1947年12月(再) |
ドイツ | 1948年9月 |
日本 | 1949年5月 |
こうして見ても分かるように、国によって大きな差が出ています。
で、そこには様々な理由があったようで、フランスでは愛国心の感じられない内容が不適切だとして上映禁止をしたそう。
特に大きな影響をもたらしたのがドイツ・ナチスの動きでした。
ドイツはこの作品に、イデオロギー批判が込められているとして作品を批判。
中でもヨーゼフ・ゲッベルスはこの作品にたいして並々ならぬ敵意を向け「Cinematographic Enemy Number One」(映画における敵ナンバー1)と、発言を残しています。
パリ占領後にはネガを押収し、長らくの間完全版は消失していました。(のちのちにモスクワで保管されているのが発見されます)
逆に作品を高く評価したのがアメリカ。
当時の大統領であったルーズベルトが民主主義でもあったことから「民主主義者は皆、この映画を観なくてはならない」と、宣言すらしました。
1939年のアカデミー賞では受賞こそ逃したものの、作品賞にノミネートもされており、当時から名作として認識されていたようです。
一方、日本は第二次世界大戦時にドイツとの同盟関係にあったこともあり、この作品は1949年まで日の目を見ることはありません。
また、49年に公開されたのもドイツ・ナチスから検閲を受け、幾つかのシーンカットが為されたものだったのだとか。
今では完全版を見ることができるのですが、こうなると逆にナチスのカット版も見たくなりますね。(現存するのかもよく分かりませんが1時間53分より大幅に短いバージョンがあればそれがカット版なのかも?)
反戦の内容を描いていた本作が、戦争により上映禁止や正当な評価を受けていなかったというのはなんとも皮肉な話。
作品の内容のみならず、その扱いにおいても歴史のある作品であったと言えますね。
【ネタバレあり・レビュー】禁断の惑星
『スター・ウォーズ』の1作目(のちのエピソード4)からおよそ20年も前(1978年-1956年=22年前)のSFということでそこまで期待していなかったこの作品。
見て驚き、凄いしっかりしていました。
惑星アルテア4を舞台に、ロボットや超最先端技術、謎の生物などが登場するのですが、どれも56年に作ったとは思えないクオリティを保っていました。
そんなクオリティの素晴らしさについての感想を書いていこうと思います。
作品概要
原題:Forbidden Planet製作年:1956年(日本公開:1956年)
監督:フレッド・M・ウィルコックス
脚本:シリル・ヒューム
主演:ウォルター・ピジョン
ストーリー
宇宙船C-57-Dのキャプテン、アダムスが率いるクルーらは、20年前に惑星"アルテア4"へ向かったものの、連絡を絶った仲間を探索・救助するため旅をしていた。"アルテア4"にたどり着いた彼らは、星での唯一の生き残りモービアス博士と、彼の娘アルティラと出会う。
彼は、仲間たちが不慮の事故などにより仲間たちは全滅したと告げる。
しかし、モービアス博士は"アルテア4"のある秘密を隠していた。
宇宙にロボット怪物まで!SFロマンを詰め込んだ傑作!
これぞSF!素敵な世界観
「SFといったら宇宙」そのイメージを定着させたのはおそらく『スタートレック』や『スター・ウォーズ』でしょう。
ただ、この作品はその先駆けでもあります。偉大な先人なのです。
そんな本作は宇宙を航行する宇宙船C-57-Dと、エレクトロニックなBGMで始まります。
個人的にはこれだけでSFロマン心をくすぐられるようでした。視覚的にも聴覚的にもSFらしさが感じられましたからね。
そのバッチリな掴みから展開されるのが、惑星"アルテア4"を舞台とした物語。
宇宙船の着陸から、惑星の景観、クルーらが持っている光線銃などなど、CGを使わない中での苦心が見られるSF要素は常に楽しませてくれました。
そうしたSF要素の中でも心を掴んだのが、ロビー・ザ・ロボットでした。
この二足歩行バケツ型ロボットは見た目こそポンコツそうなのですが、実は優秀。
そのギャップと、ロボットらしい言動、それでいてちょっとしたユーモアを感じさせるキャラクター性は愛着が湧きました。
作中、大きな鍵を握るわけでもないのですが、サポート役に徹しているというロボットらしさもあって最も記憶に残るキャラクターでした。
こうした世界観を構築していたことにより、CGが使えなくても面白いSFを作り上げていたのが個人的には素敵だったと思いますね。
ワクワクの最先端技術
この作品でさらに世界観をより良くしていたのが、クレール人の最先端技術でした。IQ増幅機や思考の3D投影機、エネルギー観測機、etc..
聞いているだけでもワクワクしてしまうような設定の機会が次々に登場します。
さらに凄いのがビジュアル面。
本当にそうした機械があるかのような動作を見せている作り込みは、これまたワクワクを促進させていました。
極めつけはその動力源となる施設の巨大さ。
一体、どのようにして作ったのか分からないくらい巨大かつ作り込まれた動力源となる施設はまさに圧巻の一言。
作品の世界観に引き込まれ没頭してしまう見事な美術でした。
怪物を生み出すのは人間
作中、最も謎となるのが謎の怪物の正体です。序盤から中盤にかけてはモービアス博士の噂話としてしか登場しませんが、終盤、その怪物が実在していたことが判明します。
この"イドの怪物"がまたいい味を出していました。
巨大でいて姿は見えない、チラリと見えるその輪郭はまさに怪物と呼ぶにふさわしい雄々しさ。名前負けしていないヤツでした。
初め私は、姿が見えない怪物という設定は、経費削減のために作られたものだと思っていました。(実際、その考えはあったのかもしれません)
しかし、その理由付けがされているのもこの作品の素晴らしい所だと思います。
"イドの怪物"は、モービアス博士の生み出した潜在意識の怪物とされていたんですね。
先人であるクレール人たちもこの潜在意識の怪物により自滅したとされており、「あまりに発展しすぎた文明は滅びる」という展開はなんだかバベルの塔の話を思わせる設定でした。
そんな神聖な雰囲気も漂わせていただけに、なんだかより壮大で人の真理をついた内容のように思えましたね。
【ネタバレあり・レビュー】ザ・バウンサー
ジャン=クロード・ヴァン・ダムといえば、アクション映画好きであればおそらく誰もが知っているスター俳優です。
格闘家から俳優へ進出したという異色の経歴を持っており、80、90年代のアクション映画界をけん引してくれました。
そんなヴァンダム主演作ということで「見るしかない!」と思ったこの作品。
彼も年(公開時の2018年には58歳)ということで、派手なアクションは期待していませんでしたが、想像以上にじみーな作品でした。
とはいえ、それだけで凡作と位置付けるには忍びないので、作品を振り返りつつ良かった点をピックアップしていきます。
作品概要
原題:Lukas製作年:2018年(日本公開:2019年)
監督:ジュリアン・ルクレルク
脚本:ジェレミー・グエズ
主演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム
ストーリー
8歳の娘を持つシングルファーザーのルカスは、夜な夜なクラブの用心棒として働く日々を過ごしていた。ある夜、彼は酔っ払いを追い払う際に、彼を事故死させてしまう。
責任を問われクビにされたルカスは、ストリップクラブの用心棒として職を得た。
そこのオーナー、ヤンは警察からマークされていた。
ルカスは警察から、過去に起こした事件を引き合いにだされ協力を強要される。
感想
娘を思う父親の孤独な戦い
「孤高な男による孤独な戦い」それは80年代、90年代アクション映画のロマンだと私は勝手に思っています。
そんな男の晩年期の姿をそのまま描いたような本作は、個人的には割と好きでした。
派手なアクションもしなければ、大胆すぎる行動もしない、経験則がモノを言うような大人な立ち振る舞いは見方によればイカすものです。
その晩年期を迎えた主人公ルカスが戦いの渦中に巻き込まれることとなる理由が、一人娘を守るためでした。
もはやアクション映画ではお約束の展開。しかし、それでいいんだと思います。
家族を守るという動機に青年も中年も晩年も関係ありませんからね。
そうした戦いに挑むルカスを演じたヴァンダムがまた渋い。
どんな状況にも決して焦らず、どんな状況でも決して屈しない姿は、まさに主人公そのもの。
それでいて、娘のためならば熱くなるのですから魅力的でした。
一人の男として、娘を持つ父親として、それぞれカッコよさがあったのは素敵だったと思います。
ヴァンダムと悪党たち
ヴァンダム演じるルカスが置かれる状況。それが悪党たちによる板挟みでした。片や裏社会で偽札を取り扱うストリップクラブのオーナー、片やルカスの弱みをエサに偽札情報を流すことを促す悪徳刑事。この緊迫感はなかなかのものでした。
ヴァンダム自身、昔のように無双ができる状態でなく、娘も人質に取られている状況でもあり「一体どうやって解決するんだ?」という興味はそのまま、作品へ没頭することにつながりました。
ストリップクラブのオーナーの指示で汚れ仕事をやりつつ、その情報を刑事たちに流すという展開は、アクション面、サスペンス面両方を抑えており、そこに面白さがあったと思います。
最後には裏切り、裏切られな展開もあって、ヴァンダムもボロボロに。こうした所からも彼の年齢が感じられるようでした。
緊迫感を増す長回しの演出
本作を見ていて、やたらと使用されていたのが長回しショットでした。普通に歩くシーンはもちろん、アクションシーンでもそれが盛り込まれていました。
作品中盤で繰り広げられる、あるターゲットをルカスが誘拐するシーンなんかは、この演出がしっかりと生きていたと思います。
銃撃戦の緊迫感、ルカスの的確な立ち回りを表現するにはピッタリなこの手法は、派手なアクションがなくてもきっちりと面白さを演出していたと思います。
50歳差の親子の事情
本作を見ていて一番気になったこと、それがルカスと娘サラの年齢差。作中、ルカスの年齢は明示されていませんが、ヴァンダムの実年齢58歳から考えると8歳のサラとの年齢差はなんと50。
ヴァンダムの実の息子、娘がアラサー(2018年当時、長男31歳、長女28歳、次男23歳くらい)であることを考えてもその年齢差は際立ちます。
では、なぜにこれだけの年齢差がついたのかですが、これはもう憶測ありません。というわけで、ここからは勝手な考察となります。
手掛かりとなるのがルカスの経歴。
作中、彼は南アフリカで要人警護の仕事をしていたと語られていました。
で、南アフリカといえば治安の悪さが有名。世界一治安の悪い犯罪多発都市とよばれるヨハネスブルグもこの国に属しています。
つまり、この国で要人警護をするというのは命がけ+かなり忙しいと言えるわけです。
そのため、ルカスが出会いや結婚といった色恋沙汰に発展するに至らなかったのではないかと考えられます。
というか、作中のルカスの姿を見ているとどのようにして女性と知り合って結婚するに至ったのか想像がつきません。
妻を殺され、その相手を全員ぶっ殺し、ベルギーに国外逃亡とかいう過去も抱えていますし、今作の前日譚だけでもう一本作品が作れそうな設定でした。
なんにしても、およそ50歳差の親子というのは、並々ならぬルカスの過去を想像させる設定であったと思います。
【ネタバレあり・レビュー】ハイジャック・ゲーム
ストーリー
FBI捜査官であるグレッチェンは、犯人の命を救うため命令違反をしたことからワシントンでのデスクワーク勤務に左遷させられることとなった。その移動のため乗った飛行機で彼女は、テリーという男と隣の席になる。
彼はグレッチェンがFBIだと知ると、飛行機がハイジャックされるため自分を守ってほしいと告げる。
感想
あらすじからも分かるように、FBI捜査官が乗っていた飛行機がたまたまハイジャックされるという、昔ながらのアクション映画を彷彿とさせる作品。正直言って、イマイチな作品だったと思います。
下品だとか、おふざけがすぎるとか、そういうネタ的な要素もなくて、ただただ盛り上がらなかった感。
というわけで今回は何がイマイチという感想に至ったのかを作品を振り返りつつレビューしていこうと思います。
ハイジャックが始まるまでの道のり
冒頭、主人公グレッチェンの交渉人としての仕事から始まるこの作品。そんな導入があったものですから、タイトルと合わせてグレッチェンがハイジャック犯と交渉しながら事件解決に向かうものだと思っていました。
しかし、実際には交渉人要素はこの冒頭だけ。
ストーリーが進むにつれ「冒頭やる必要あったのか?」という疑問が膨らみ、最後までその意味は分かりませんでした。
このように、本作はハイジャックが始まるまでの無駄なパートが多いです。
「それを言ってしまえばビックタイトルでもそうだろ!」という意見もあるかもしれませんが、この作品は一味違います。
単純に導入がつまらない……
本来、導入部で主人公のキャラクターであったり、ハイジャック犯たちが行動を起こそうとする緊迫感であったりが見られるものなのですが、本作はそこを失敗していたと思います。
印象に残ったとすれば、グレッチェンが飛行機で自分の席を奪われたことに激怒したり、仕事の愚痴を言ったりするシーンくらい。マイナスイメージが強いです。
もうひとつ記憶に残ってるのは客室乗務員が飛行機の中で踊っているシーン。
数少ない個性的なキャラクターであったのにあえなく即死させられる可哀想なヤツでした。
そんな導入を経てハイジャックにつながるわけなのですが、すっごい地味に始まります。
乗客たちが「おいおいなんか様子がおかしくないか?」→「これハイジャックじゃない?」→「ハイジャックだ」と察するという、なあなあな感じ。
そんなだからなかなか座らない乗客に邪魔をされたりと、グダグダなことをしているハイジャック犯にマヌケさを感じたりしました。
邦題とはいえ『ハイジャック・ゲーム』なんていう緊張感のないタイトルを付けられたのも納得な気がします。
ドルフ・ラングレンの扱いがひどい!
そもそもこの作品を見たのは、ドルフ・ラングレンが出演しているというのを聞いたからでした。彼がハイジャック犯側(悪役)なのは珍しいことでもないのでよしとしましょう、敵側の女ボスにお熱というのも目を瞑りましょう。
なんでドルフ・ラングレンを呼んでおきながらアクションシーンがほとんどないのか!
あんなガタイのいい男を連れてきておいてまさかのパイロット係とか何がしたいのか分かりません。
しかも唯一あるアクションシーンでは主人公のグレッチェンではなく、コソ泥のテリーにノックアウトさせられるというガッカリさ。
活躍シーンであるハズの飛行機を操るシーンはなんだかラングレン自身の演技もたどたどしく見えて、ホントなんで出演したのか分からない状況でした。
登場シーンがピークで後はどんどん株を落としていく姿は、彼の出演作の中でもワーストだったのではないかと思います。
ハイジャックの動機が酷すぎる
作中、最も衝撃を受けたのがハイジャックの動機でした。ダイヤを盗んだテリーが仲間を裏切って独り占めしたので、それを奪い返すためにハイジャックをしたというんですね。あまりにも大胆過ぎます。
「死を偽装するため」ともっともらしい理由もありましたが、それで乗員乗客全員殺そうとしているのですからシリアルキラーも真っ青なイカレっぷりですよ。
それに賛同している奴が多数いるのもおかしな話ですが……
なんにしても気軽すぎる動機でした。
ツッコミどころが多すぎる
この作品、真面目に作っているのですが、やたらツッコミどころが多いです。例えば、乗員乗客を逃がすのに走行中の飛行機から飛び降りさせたり、山焼きをして滑走路を造っていたり、ドアを開けたまんまで飛行機を飛ばしたりと、シリアスなのにどこかツッコミを入れずにはいられない展開が多いです。
面白いアクション映画とかだと熱中しているからか、そうした常識的におかしいことでも気にならないのですが、この作品は退屈していたからそうした粗を探してしまっていたのかもしれません。
ラストシーンでは、半袖でアルプス山脈のような雪山に不時着なのにハッピーエンド感出していますし、初めから終わりまでツッコミどころ満載であったと思います。
【ネタバレあり・レビュー】映画『スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間』に見る、死後の人体のアレコレについて!
今となっては無数に存在するゾンビ映画。
様々なシチュエーション、様々な特徴を持ったゾンビによるそれらの作品は面白さはあるものの、ゾンビへの恐怖というのはどんどん薄くなってきているように思います。
今回紹介する『スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間』は、そんなゾンビに対する恐怖を少し変わった視点から描いた作品です。
ストーリー
レズビアンであるサマンサはある夜、友人のパーティーで謎の男に薬を盛られレイプされる。
翌日、パーティーでの出来事を思い出せないサマンサはいつも通りの生活を送る。
しかし、あり得ない量の出血など体の不調が次々に起こり始めた。
感想
本当にタイトル通り、主人公サマンサがゾンビになるまでの3日間を追っているだけの作品。
劇的展開もなければ、そこまで派手なシーンもない、ただただサマンサが体調を崩していってゾンビになっていくだけです。
けれど、それが斬新でした。
ゾンビ映画は数多く存在していますが、本作のように感染から発症だけを描く作品なんてなかなかないかと思います。
また、サマンサ自身はもちろん、国もゾンビウイルスの存在なんて知らないというのが面白かったです。
これによりサマンサの体に並々ならぬ事態が起こっているのに、その病状が誰一人分からないという展開を見せていました。
これが本作の恐ろしさを引き出していたと思います。
ちょっとした二日酔いかと思いきや、大量に出血をしたり、歯が抜けたり、髪が抜けたりと、次々とエスカレート。
その止められない、手の下しようのない絶望は、タイトルから彼女の結末が予想できることからもただただ悲惨でしかありませんでした。
しかもそのきっかけとなるのが、パーティーで変な男に出会ってしまったというだけ。
その不条理さは、見ているこちら側にも「ゾンビウイルスでなくとも変な病気を移されるかも……」という恐怖を易々と連想させていました。
少し話は逸れますが、本作の原題は『Contracted』(契約)
サマンサが、(意思とは関係なく)契約をしてしまい、そこから逃れられなくなる恐怖を匂わせるタイトルでした。
なかなかに皮肉の効いたタイトルだとは思いますが、おそらく日本人としてはそのままカタカナで「コントラクティッド」としてもほとんど興味を示さないでしょう。
「ゾンビ」と入れるだけで私のようなB級映画好きが集うのですから面白いものです。
殺し殺されの勢いでいくゾンビ映画も面白いものですが、ゾンビ映画の当たり前に着眼したこの作品は、いい発想であったと思います。
人の体は中から腐るか外から腐るか
主人公サマンサの体が少しずつゾンビに近づいていく(腐っていく)のを3日かけて描いているこの作品。
見ていると分かりますが、その過程はグロテスクながらも丁寧さを感じさせました。
それを見ていてふと思ったのが、この作品の描写はどのくらい正確なのかということ。
そこで簡単に死の流れと本作での扱いについてを比較してみました。
あくまで検索して調べたにわか仕込みの知識なのでそこまで正確とは言えないかもしれませんがご了承ください。
1 | 20分~30分 | 細胞が破壊され、細胞液が点状の斑点として出現 |
2 | 2時間~3時間 | 破壊された細胞が増え、斑点が融合 |
3 | 2時間~6時間 | 死後硬直が始まる(だいたい3日間続く) |
4 | 6時間~8時間 | 手足の筋肉に死後硬直が表れる |
5 | 8時間~10時間 | 筋肉に力を加えて伸ばすと柔らかくなり、再び硬直を起こす |
6 | 1日~2日 | 腐敗が始まる(消化器系である胃や腸から)腐敗により体内にガスが発生 |
7 | 1日~2日 | 内臓からしみ出した血液がガスにより圧迫され体外に染み出す |
8 | 1日~2日 |
ガスの匂い(腐敗臭)に引き寄せられたハエが体に卵を産み付ける (孵化した蛆が体を喰い始める) |
9 | 20日~50日 | 酪酸発酵現象が起こり始める(死体は乾燥し、腐敗汁を出して肉体は溶け出す |
10 | 1年以上 | 骨になる |
※体温は、1時間あたり0.8度のペースで気温と同じになるまで下がります。
大雑把に死体が骨になるまでの流れをまとめてみました。
で、これを見ると、作中ではだいたい6~8の工程を重点的に描いています。(あとは死斑の描写とか)
印象としては、作品の核である要素でだけにしっかりと体が腐っていく工程を表現していたように思えました。
とはいえ、外見的な変化はガッツリ起こっているのに死臭については誰も触れていなかったり、死後硬直は一切起こっている様子はなかったりと、死体に起こるはずの現象が起きていないのも事実。
まあ、そこはゾンビウイルスがなんかいい感じに作用していると補完してしまえばいいのかもしれませんね。
それでは作中にサマンサの体に起きた不調と、今回挙げた工程とを照らし合わせてみましょう。
●体温の低下⇒血液循環が行われていないため。
●膣からの出血⇒腐敗による内臓の破壊による出血と思われる。
●目が赤くなりやがて白くなる⇒血液の漏洩によるもの(?)白濁は死後24~48時間で起こる現象。
●脱毛⇒皮膚が腐り始めているため。
●膣内から蛆の発生⇒腐敗臭によるハエの仕業
こんな感じになるのではないかと思います。
しかし、考えてみると血液循環は行われていないのに考えたりすることができるのはこれいかに。
やはりゾンビウイルスによる特殊な事象が起こっているとかんがえるのがよいのかもしれません。
そしてこの項目のタイトル「人体が内側から腐るか外側から腐るか」についてですが、当然内側から腐敗していきます。
上でも少し触れていますが、最初に腐敗が始まるのは消化器系である胃や腸から。
サマンサの体の内側は見た目以上にボロボロであったと考えられます。えげつない話ですが。
それでも彼女は3日間活動をし続けていました。
それはまさに、ゾンビ=生ける屍であったと言えるのでしょう。
遂に決定!午前十時の映画祭のまとめ!
2021年3月5日(金)、映画ファン待望の「午前十時の映画祭11」の上映作品とスケジュールがようやく解禁されましたね。
そこで個人的な使用目的もあり、作品の一覧表を作ってみました。
ソート機能も搭載しております。
要素名(「作品名」、「製作年」などをクリックすると機能するハズです。
No. | 上映期間 | 作品名 | 製作年 | 製作国 | 上映回数 |
---|---|---|---|---|---|
1-A |
A:4/2~4/15 B:4/16~4/29 |
ザ・ロック | 1996 | アメリカ | 1 |
1-B |
A:4/16~4/29 B:4/2~4/15 |
アンタッチャブル | 1987 | アメリカ | 2 |
2-A |
4/30~5/13 |
ティファニーで朝食を | 1961 | アメリカ | 2 |
3-A |
A:5/14~5/27 B:5/28~6/10 |
マディソン郡の橋 | 1995 | アメリカ | 1 |
3-B | A:5/28~6/10
B:5/14~5/27 |
ノッティングヒルの恋人 | 1999 | イギリス | 1 |
4-A | A:6/11~6/24
B:6/25~7/8 |
イージー★ライダー | 1969 | アメリカ | 1 |
4-B | A:6/25~7/8
B:6/11~6/24 |
ロミオ+ジュリエット | 1996 | アメリカ | 1 |
5-A | A:7/9~7/22
B:7/23~8/5 |
2001年宇宙の旅 | 1969 |
イギリス アメリカ |
3 |
5-B | A:7/23~8/5
B:7/9~7/22 |
シャイニング北米公開版<デジタル・リマスター版> |
1980 |
イギリス アメリカ |
1 |
6-A | 8/6~8/12 | ターミネーター | 1984 | アメリカ | 1 |
7-A | 8/13~8/19 | ターミネーター2 | 1990 | アメリカ | 1 |
8-A | A:8/20~9/2
B:9/3~9/16 |
真昼の決闘 | 1952 | アメリカ | 1 |
8-B | A:9/3~9/16
B:8/20~9/2 |
座頭市物語(1962)<4Kデジタル修復版> | 1962 | 日本 | 1 |
9-A | A:9/17~9/30
B:10/1~10/14 |
赤ひげ | 1965 | 日本 | 2 |
9-B | A:10/1~10/14
B:9/17~9/30 |
隠し砦の三悪人(1958)<4Kデジタルリマスター版> | 1958 | 日本 | 1 |
10-A | A:10/15~10/28
B:10/29~11/11 |
未来世紀ブラジル | 1985 | イギリス | 1 |
10-B | A:10/29~11/11
B:10/15~10/28 |
ユージュアル・サスペクツ | 1995 | アメリカ | 1 |
11-A | A:11/12~11/25
B:11/26~12/9 |
グッドフェローズ | 1990 | アメリカ |
1 |
11-B | A:11/26~12/9
B:11/12~11/25 |
ファイト・クラブ | 1999 | アメリカ | 1 |
12-A | A:12/10~12/23
B:12/24~1/6 |
ナイトメアー・ビフォア・クリスマス | 1993 | アメリカ | 1 |
12-B | A:12/24~1/6
B:12/10~12/23 |
モスラ(1961)<4Kデジタルリマスター版> | 1961 | 日本 | 1 |
13-A | A:1/7~1/20
B:1/21~2/3 |
シカゴ | 2002 | アメリカ | 1 |
13-B | A:1/21~2/3
B:1/7~1/20 |
天使にラブ・ソングを… | 1992 | アメリカ | 1 |
14-A | A:2/4~2/17
B:2/18~3/3 |
ファーゴ | 1996 | アメリカ | 1 |
14-B | A:2/18~3/3
B:2/4~2/17 |
スタンド・バイ・ミー | 1986 | アメリカ | 2 |
15-A | A:3/4~3/17
B:3/18~3/31 |
グラディエーター | 2000 | アメリカ | 1 |
15-B | A:3/18~3/31
B:3/4~3/17 |
イングリッシュ・ペイシェント | 1996 | アメリカ | 1 |