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【レビュー】「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」 "これ"を見たら本当に終わり!

27年後がやってきた。もちろん作中内で、だ。
2年の時を経て公開された今作は、見る前から衝撃を与えてきた。
なんと本編時間が169分、3時間近くもあるというではないか。
途中でトイレに行きたくならないか、眠くならないか、と違う意味での恐怖の鑑賞となった。
けれど、蓋を開けてみればどうだろうか。時間をまったく感じさせない面白さだったのだ。


ホラー要素も、ドラマ要素も前作を見ている、見ていない問わず面白い。むしろ洗練されていると言っても良かった。
とにかく、サービス精神とユーモアセンスがバリバリに光っていたのだ。
カメオ出演者として、原作者スティーブン・キングを初め、『おかしなおかしな大追跡』、『ペーパー・ムーン』の監督ピーター・ボグダノヴィッチ、『マイ・マザー』や『Mommy/マミー』の監督グザヴィエ・ドランなど、著名な映画人が出演していた。
映画業界に属さない私たちにとっては、言われてようやく「おお!あの人か!」となるくらいではあるが、そうした小ネタが潜んでいるという事実を知っているだけでもワクワクして細かい所まで集中してみてしまうものだ。


そうした、愛は作品へもしっかりと表れており、前作で見られた「怖いけど笑えてしまう」を上手く昇華させていた。
特に終盤からの怒涛の畳みかけには目を見張る勢いがあった。まさにジェットコースターだ。
そんなネタが多く詰め込まれた作品ではあったが、ドラマもしっかりとしていた。
大人になったビルたちが、子供時代のトラウマを払しょくするため、再度ペニー・ワイズと戦うという展開は純粋に面白い。
一人一人の抱えるトラウマをじっくりと描くことで、本当の意味で大人へ成長していく様子は前作とは異なる感動があった。ここまで丁寧に作られていれば、長丁場になってしまっても文句は言えない。
ペニー・ワイズが消滅前に「お前ら成長したなぁ」と親戚のおっさんのようなことを言うのも頷ける。


彼らが大人になったことで、一番変わったところと言えばやはり容姿だろう。
前作で子供時代を演じていた子役たちが大人の自分の役をキャスティングしたというのだからこれまた面白い。
ビルをジェームズ・マカヴォイ、ベバリーをジェシカ・チャステインが演じるなど見どころが多い中、一番目を惹いたのがベンを演じたジェイ・ライアンだろう。
子供時代は太っちょだったベンが、筋肉ムキムキ、高身長、ヒゲの生かすワイルド男になっているのだから誰だって驚くハズだ。
そうした一方で、子供時代の体型を引き摺り、恋愛での劣等感を抱いたりと繊細な一面を見せているのが人間味を感じさせる。
けれど、最終的に全てを持っていくのが、ビル・ヘイダーが演じたリッチーであった。
前作同様に、おふざけキャラで恐ろしい目にあっている時でも観客を笑わせるような言動が多い。
その一方で誰よりも仲間思いで、その死を悼むのだから彼のことを好きにならずにはいられない。
大人になったことによって、どのキャラにも子供時代以上に深みが増し、好感を持てるようになっていた。
スタンリーを含めた7人で中華を食べるシーンを見てみたかったものだ。


子供時代、大人時代、両面を上手く繋ぎつつ、ペニー・ワイズとの戦いを描かれていたこの作品。
"ルーザーズクラブ"の面々が集まるのが最後なのかと思うと「これを見たら終わり」なのが惜しくさえ思えてしまう。