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【レビュー】「ボーダー 二つの世界」 知らない世界がここにある!

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スウェーデンデンマーク合作、R18+、「ぼくのエリ 200歳の少女」と同じ作者が原作。
これだけの要素が揃っていただけに変化球な作品だとは分かっていたが、そのさらに上を行く変化球作品であった。


そもそも、税関職員であるティーナに犬の嗅覚のような能力が備わっているという所から明確な説明がない。
このように、この作品は小説が原作だとは思えないほど映像による表現が多い。スタンリー・キューブリック顔負けのフィーリングだ。

そこへ、さらにティーナ同種族(トロール)であるボーレまで現れるからもう意味不明である。謎は深まっていくばかりだった。


とはいえ、ティーナが人間社会からだんだんと離れていくことは感じ取ることが出来る。
冒頭から容姿の醜さや言動などから少しズレた感じはあったが、あくまでそれは「人間社会にいる変わった人」という感じであった。
それが「人間社会という境界線を越えた自由な人間」となるのだ。

けれど、ティーナにとってはその方が自由でノビノビ幸せに暮らせているのだから面白いものである。作風の映像で語る表現がマッチしていたのも印象的だ。


ただ、それが一筋縄ではいかず、ボーレの人間に対する価値観のぶつかり合いが始まるのがサスペンス。
人間の赤ん坊と自身の産んだ脆弱な子供(トロールはどうやら男でも赤ん坊を産めるようであった)を入れ替えて売り飛ばすということをするわけだ。人間からすればたまったものではない。
トロールではあるものの、人間社会で育ってきたティーナにとってはそれが倫理に反することだと思うのは当然。ボーレを裏切る形で別々の道を歩むことに。
人間社会で育ち、人間らしい心を持ったトロールティーナが二つの世界の境界線に立つ人物だという流れは綺麗な終わり方であったと言える。


とはいえ、人間の中にも綺麗な人間、汚い人間、十人十色だ。作中でもそれぞれの人間の思いが交錯していた。

もしかすると、ボーレの考え方に賛同できる人もいるのかもしれない。彼も生きるために必死であったのだから。

こうして考えると、タイトルは「二つの世界」ではあるが、1人1人の思想や価値観に1つ1つ「世界」があると言えるのだろう。