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【レビュー】ゾンビランド

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もはや大抵のネタを出し尽くした2009年のゾンビ映画
そんな中、公開されたこの作品『ゾンビランド』は、斬新かつ大胆であった。


とはいえ、変わったことがあるとすれば、主人公のコロンバスが自身に課した32のルールが存在していることくらいか。
ゾンビ映画でのお約束の死に方」を回避するために作られたこのルールはユーモアがあって面白い。キャラの行動の至る所に取り入れられているのもルールの設定を忘れることなく見れてよい。
けれど、たったそれだけで面白くなるのであれば、ゾンビ映画はもっとヒット作だらけだ。この作品には、もっと面白くなるための工夫が為されていた。


中でも一番輝いていたのはキャラクターだろう。
イケてるタフガイ・タラハシー、胃弱で慎重派のコロンバス、美人詐欺姉妹の姉ウィチカ、妹リトル・ロック。
曲者揃いの凸凹凸凹チームで繰り広げられるサバイバルは、ゾンビパンデミックが起きた世界とは思えないゆるーい空気を作り上げていた。このギャップこそが笑えるところでもあったわけだが。
また、キャラクターを演じる俳優陣が強い。
ウディ・ハレルソンジェシー・アイゼンバーグエマ・ストーンアビゲイル・ブレスリンの4人による掛け合いは、我々をいとも容易く『ゾンビランド』へ連れたってくれる。
特に、ウディ・ハレルソンの生き生きとした演技は、タラハシーという男のワイルドさと何物にも縛られない自由さを感じさせて好意を抱かずにはいられなかった。トゥインキーがなにかも分からないけれど、彼と同じようにトゥインキーが欲しくなる。


こうしたキャラクターを用いたコメディセンスは天才的であったがアクションも充実している。
遊園地パシフィック・プレイランドでの攻防戦では、アトラクションを使い大量のゾンビを倒していくのだから最高のコメディ・アクションを実現していたと言える。
笑えるし、ハラハラできるし、ゾンビの恐ろしさを味わえる絶妙な匙加減はルーベン・フライシャー監督の伝説の始まりを見た気分になった。


この作品、2019年には2作目が公開され、シリーズ化されているが、その始まりとしては素晴らしい構成にもなっている。
というのも、この作品ではメインキャラ4人共がまだパンデミック発生前の時代を引き摺っているのだ。
コロンバスは分かりやすく、楽観的でパンデミックが起きた中でも目標は「女の子の髪をかき上げること」である。
タラハシーは、トゥインキーで平穏だった時代を思い起こそうとしている。
ウィチカとリトル・ロックは遊園地に行きつき、そこのアトラクションで遊んでいた。
彼ら4人共が他のゾンビ映画よろしく、まだ現実に未練を残しているのだ。
そんなお約束をきっちりと取り入れつつ、作品をネガティブな方向に持っていかせないのだから凄い。
最後には4人共が思いを満たして再出発ともなっているし、ドラマとしても仕上がっていたと言えるだろう。


公開時(2009)には、ゾンビ映画歴代興行収入で『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004)抜き去り、1位にまで上り詰めた本作。(現在は、1位『ワールド・ウォーZ』(2012)、2位『モンスター・ホテル』(2012)に次いで3位となっています。興行は7559万ドル)
それまでのゾンビ映画とは一線を画す存在であったことは想像に難くない。
とはいえ、2012年公開の2作に興行収入が抜かれていたように、またしても『ゾンビランド』のような革新的なゾンビ映画が登場することだろう。
アメリカという国がゾンビ映画を作り続ける「ゾンビランド」なのだから。