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【レビュー】ゾンビランド:ダブルタップ

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ゾンビランドは最高だ!」
10年の時を経てとうとう公開された続編にまず贈りたいのはこの言葉だ。
こんなセリフが出てくるのも当然のことで、今作は一作目を見たファンへのサービスで溢れていた。
コロンバスの語り部、キャラ同士の掛け合い、動詞"マレる"etc...
ストーリー自体は単作として楽しむことが出来るが、1作目を見ていると隅々まで楽しめるようになっていた。
それだけではなく、ホワイトハウス乱入、ゾンビの進化、タラハシー大統領、ターミネーターエルヴィス・プレスリーの記念館、ビル・マーレイによるアクションだったりと、映画ファンへの愛も満ち満ちている。
まさに、映画マニア(もといオタク)に向けて作られた映画であったといえるだろう。
ゆえに、個人差はあるだろうが私は大満足であった。

唯一、ネックがあったとすれば一作目との比較になってしまうことだろう。
コメディ面においては、一作目の方がキレがあったし、全体的な構成としてもテンポが良かった。
今作も悪いわけではなかったが、一作目と比べるとやや見劣りしてしまう感は否めなかった。

しかし、驚きであったのがアクションである。
ルーベン・フライシャー監督が『L.A. ギャング ストーリー』や『ヴェノム』などで腕を磨いたからだろうか、圧倒的に見せ方が巧くなっていた。
ハラハラするようなアクションシーンの中にもしっかりと笑いの要素を入れつつ、キャラをカッコよく描くのだからそのセンスには脱帽させられる。
アルバカーキ、フラグスタッフとの一連のシーケンスを「T-800」の下りから始まり『ターミネーター2』の「アスタラビスタ・ベイビー」で〆る流れには鳥肌が立った。

10年の経過はもちろん俳優陣にも変化を与えていた。
ウディ・ハレルソンは変わりなく最高潮。一作目からブレることなくタラハシーという男を生き生きと演じていることが感じられる。主人公コロンバスの人気を食うワイルドさなのに、どこか相棒的ポジションで前に出過ぎていないのにも好感が持てる。
ジェシー・アイゼンバーグは、言動のキレが明らかによくなっていた。自信を付けて恋愛も、ゾンビ討伐にも慣れている辺りに10年の変化を感じさせる。けれど、突然の出来事にはビビる辺りがしっかりとコロンバスであった。
エマ・ストーンは大きく変わっていた。見た目も、演技も、だ。前作ではまだ若干、あどけなさも残っている感じがあったが、今作では完全に大人の女性に。なんだか逆に切なくもなった。
演技はコロンバスとの恋愛関連で様々な表情を見せており、その演技力の高さを発揮していた。「なんつー顔してるんだ」と思わず笑えてしまうシーンもあった。
一番変わったのは、アビゲイル・ブレスリンだろう。今作、一番重要な役どころであるが、それゆえに出番が少ないというのは悲劇だ。

こうした10年の経過はストーリーにも表れていた。
上述したコロンバスの自信もそうだし、ゾンビが進化したのも時間が経過したことを感じさせる。
なにより、大きな変化がトゥインキーだ。
一作目でタラハシーがあれほど欲していたトゥインキーであるが、今作では一言すら発していない。
もちろん、賞味期限が切れたことが一番の原因ではあるのだろうが「食べたい」という願望すら話していないのだ。
これは個人的な見解にはなるが、過去との未練を断ち切っているからではないだろうか。
一作目において、タラハシーがトゥインキーを探していたのは、大好物であると同時に平穏な時代を思い起こせるからでもあった。
一作目のラストでトゥインキーを食べることが出来たことでその未練を断ち切り、ゾンビのいる世界で生きることを受け入れていたのではないだろうか。
そもそも、ゾンビが現れてから10年が経過した今作の世界だ。もはやゾンビがいるのが当たり前、平穏な時代を思い起こすこともないのかもしれないが。

10年の時が経過し、あらゆる面で変化と進化を感じられた今作。
前作の例にもれず、今ではごまんとあるゾンビ映画に新たな衝撃を与えてくれた。
そんな今作を見て改めて言いたい。
ゾンビランドは最高だ!」と。
このダブルタップ(二度撃ち)で今回は締めさせて頂く。