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【レビュー】リアル

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駄作には2種類ある。『死霊の盆踊り』のようなネタにできる駄作と、ネタにできない駄作だ。
この作品は後者に当たる、つまらないだけでなくネタにもならない。


かなり辛辣な書き方をしているように思えるかもしれないが、実際に見てもらえれば分かるかと思う。
簡単にストーリーを説明するなら「二重人格の男の片方の精神が、(死んだ別の男の肉体に入り込んで)肉体分離を起こして現実に現れる」というものだ。
もしこれを、作中の早い段階で説明をきちんとしてくれれば、まだいささか救いはある。
けれど、これが明かされるまでに軽く1時間くらいは掛かる。その間、何をしているかと言えば意味もなく長い映像表現で話をややこしくしているのだ。


まるで箇条書きにしたプロットをそのまま落とし込んだかのような脈絡のない映像表現の連続はただただ疲れる。
そこへ拍車を掛けるのが、入れ替わりの話だ。
先ほど簡単にストーリーを説明したように、この作品では肉体を持った二重人格が現れる。
もちろん、同じ俳優で(キム・スヒョンという韓国では有名な俳優、何故か4役も演じている)演技の緩急こそあれ、見た目は似たり寄ったりである。


そこへ先ほど書いた箇条書きのようなストーリーが展開されるのだから、どちらがどちらか分からなくなる。
狙ってやっているのなら由とするが、完全に私たち鑑賞者は人物を認識していないといけないようなシーンが続いていたため、擁護のしようがない。

主演のキムも「6回見て初めて内容が分かる」と発言したらしい。演じた人間でも6回見ないと分からないのだから私が1回見て完全に理解することなど不可能だろう。

なにより、自身の主演作とはいえ、この作品を6回見た彼にプロ精神を感じずにはいられない。


苦痛な点はまだある。話の盛り上がりがないことだ。
この作品の核は、乖離した二重人格との対峙であるため、基本的には会話による心理戦が多い。
間に肉弾戦が挟まるのが唯一の救いではあるが、それも付け焼刃だ。
終盤には、訳の分からない特殊能力を使った戦い(おそらく精神世界での戦い)が繰り広げられるが、この辺りまで来ると「ようやく終わるのか」という思いで、訳が分からないことも気にならなくなってくる。


ネット上に挙げられているレビューを見たりもしたが、明確に「これ」といった答えもないし、それこそ6回以上は見ないと分からないのかもしれない。そこまでする忍耐は私にはないので「何か分からんが終わりに向けて盛り上がった」とだけ解釈しておこう。

さて、最後になったが最も辛かったのが上映時間だ。
2時間18分という長さには、上述した諸々の要素も相まってさすがに疲れた。
幸い私が見たのはBlu-rayだったため、3回程休憩を挟むことでようやく見れた。

とはいえ、キム・スヒョンという人気俳優が主演していることもあってか、この作品は割と話題作ではあったようだ。
もし、このレビューを見て不快に思われたのなら申し訳ない限りである。あくまで、一個人の感想として受け取ってもらいたい。
また、キム・スヒョンの演技はこの作品唯一の美点であったと思う。それを知ることが出来ただけでも見た意味はあったと言える。

おそらく、私が記憶障害を起こすか、あるいは価値観が180度ひっくり返る事態でも起こらない限りこの作品を再度見ることは無いだろう。
もし再び見ることがあるとすれば、その時は私にもう一つの人格が芽生えているのかもしれない。