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【レビュー】屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ

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殺人鬼とは往々にして人の好奇心をくすぐるものです。
「殺人ピエロ」ことジョン・ゲイシー、「シリアルキラー」の代表格エド・ゲインはアメリカを代表(?)する有名な殺人鬼でもあります。
ドイツにおいて、その二人に匹敵する猟奇殺人鬼がフリッツ・ホンカです。
4人の娼婦を殺害し、部屋に隠し続けたというホンカは、半地下……ではなく屋根裏に暮らしていました。
そんな彼の殺害時の動向を描いたのが本作『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』です。

本作のメインストーリーは1974年なのですが、冒頭はその4年前の1970年から始まります。
この始まり方が色々と衝撃的でした。
なんと!殺した女性の死体をホンカが解体するシーンから始まるんですね。
ギコギコグチュグチュ鳴らしながら解体するシーンは掴みとしてはこれほどにないほどのインパクトを残していました。
インパクトがあると言えば、クリッツ・ホンカその人にも。
曲がった鼻、汚い歯、斜視といった特徴は記憶に残る不気味さをまとっていました。
後々、知ったのですがホンカを演じたヨナス・ダスラーはまだ24歳とのこと。
特殊メイクと演技による賜物らしいです。完全にオッサンだと思っていました。

で、話は1974年に。
ホンカはタバコの火を若い女性に貸してあげるのですが、紳士な男には到底見ることができません。
むしろ「早く逃げて」と嫌な予感ビンビンでした。
それもこれも冒頭のシーンがあったからでしょう。

とはいえ、ホンカは前述したように、見るも不気味な風体をしています。
そのためか、相手をしてくれるのは薄汚れた娼婦ばかり。
そんな娼婦相手にホンカが性欲剥き出しでがっつく様子はまさに地獄絵図のようでした。
とにかく生理的嫌悪感を刺激するという新体験を味わわされます。

そんな嫌悪感を発散(?)させてくれるのが殺害シーンでした。
猟奇的ではありますが、これを見るために映画館に足を運んでいましたし、発散と言っていいのではないかと思います。
個人的にはもう少し直接的なグロテスクな描写があるのかなとは思っていましたが……

面白かったのが、ホンカの殺人がたどたどしかったことです。
彼は、基本的に「どうやって殺そうかな?」と計画を練るのではなく、「ふざけるな!殺してやる!」と感情的に殺すことの方が多かったです。
そのため、ド派手に抵抗されたり、一度に殺しきれていなかったりとスマートには程遠い結果となっていました。
実際、レイプ未遂で終わったり、殺意がありながらも逃げられてしまったりなんてこともありました。
そもそも行き当たりばったりな性格でもない限り、部屋に死体を隠そうなんて思いませんからね。

このように、ホンカの人間性が垣間見えるのが本作の特徴でした。
例えば、弟との関係が描かれていたり、バー仲間と程よくコミュニケーションを取っていたり、アルコールを抜けばまともに生活出来ていたりと、彼を知る機会が本編中たっぷりと得られているんですね。
そのためか、彼に肩入れしたくなる気持ちも沸いてきて、ラストシーンでは「逃げて逃げて」とハラハラしてしまいます。
ホンカにもまともな人生があったのでは……と考えたくなるおいしいキャラでした。

1974年という時代でなければおそらくすぐに露見したであろうフリッツ・ホンカ事件。
そうなれば、こうして映画になることもないこともなかったでしょう。
時代が作ったら殺人鬼。それがクリッツ・ホンカなのかもしれませんね。