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【レビュー】オートマタ

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人工知能を持つAIを題材にした作品は、現代のSF映画ではもはや珍しくもないネタとなっ

ている。
この作品『オートマタ』もそういった大量生産された「AIモノ」のように思えた。


近未来2044年を舞台に、ルールを破ったロボットを調査官ジャックが調べる、なんていう

ストーリーはウィル・スミス主演作『アイロボット』を思い起こさせる。

とはいえ、この作品が他の「AIモノ」と異なるのはロボットに課せられたルールだ。
基本、広義に知られているロボット三原則アシモフ基準)は「人を傷つけない」、「命令への絶対服従」、「その二つに反しない限り自らを守る」といった感じである。
対して今作は「人を傷つけない」、「自らを改造、改修しない」となっていた。要は、ロ

ボットに権利はない。壊れたらそこまでなのだ。
そのため、これまで大量生産されてきた「AIモノ」は自我を持ったロボットが人間に脅威

を与える話なのに対して、今作は人間がロボットに脅威を与える話となっている。
自我を持ったロボット=人間の脅威というイメージが定着している中で、こうした逆転の

発想は斬新だ。
汚染によって滅びようとしている人間の生命を、ロボットが継承するという考え方もこれ

までに見たことがなかった。

 

今作は『ブレードランナー』のような金字塔SF作品と比較すると、映像的な近未来要素は

薄い。
けれどストーリーや設定など、土台が割としっかりとしているためか、他のSF作品と大差

ないくらいにはSF味があった。
荒廃した世界にちょっとばかりロボットを付け加えるだけで本格派SFが出来上がるのだか

ら、構想がいかに大事なのかが分かる。
人間もロボットも、主要な人物はほとんど死に絶えてしまうが、不快にならないのはスト

ーリーに筋が通っているからなのだろう。

 

どんどん人間社会に組み込まれていくAI技術。
それがもたらす果てが人類の滅亡、ロボットの台頭というのはあながち的外れな話ではな

いのかもしれない。
我々がその未来を見ることは無い。けれどその未来を連想させる辺り、近未来SF映画とし

ては楽しい作品であった。