【レビュー】デッド・リミット
映画において、大使館がテロリストに占拠される展開というのはよく見かけます。
その場合、要求されるのは大抵が、大物テロリストの解放です。
今回レビューする『デッド・リミット』はそんな展開を地で行くスタイルの作品でした。
感想
アクション?サスペンス?何かが足りない作品
テロリストの立てこもりと聞いて真っ先に思い浮かぶ映画が『ダイ・ハード』です。
ブルース・ウィリス演じるマクレーン刑事が悪党を1人ずつ倒していく内容は、今もなお楽しめます。
では、本作もその路線かというと、正直微妙です。
たしかに主人公スティーヴがテロリストたちに見つからず、マクレーン刑事よろしく孤軍奮闘するのは合っています。
しかし、スティーヴは一般人でした。
できることと言えば、熱探知機から身を隠すためにタオルを被るか、手に入れた銃を乱射して偶然やっつけるかくらいです。
相手を殺さんばかりの戦いをスティーヴから仕掛けるという所はあまり見られませんでした。
では、何に重きを置いているかというとサスペンスです。
なんと、米大使館の地下には核爆弾が埋まっています。
それがもし、テロリストの手に渡れば最悪の事態すら引き起こされる可能性があるわけです。
そんな一刻の猶予もない中で、核爆弾を止めるコードを知っているエリカを助けたり、人質に取られていた息子を助けたりしていました。
こうして見ると、時間に追われながらも人間を助けなくてはならない、超緊迫した映画に思えるかも知れませんが、そうでもありませんでした。
というのも、テロリストがマヌケであったり、安全が確保されている場所でゆっくりテロリストを観察していたり、元恋人であるスティーヴとエリカがイチャイチャしていたりと、どこか緊張感にかけているんですよね。
セキュリティが簡単に掻い潜れてしまうチープなものが多かったのもイマイチハラハラさせられませんでした。
終わってみれば、アクション、サスペンス、どちらも微妙だったという印象しか残らなかったですね。
登場人物たちのにツッコミを入れる映画?
本作を見ていて個人的に面白かったのが、登場人物たちの立ち位置や行動でした。
基本的に、苦労人か自分勝手しかいないんですよね。
例えばスティーヴの場合、言うことを聞かない息子、エリカの裏切りもろもろで苦労していました。
とはいえ、エリカとよろしくやっていたりとまだましな方だと思います。
最も苦労人と呼べるのは、救出隊を率いていたスウェインです。
彼は、現地の警察から文句を言われ、裏があると感づいていながらもお偉い方の命令に従うしかなく、そのせいで人質からは怨みを買うという、板挟みで苦しんでいました。
まさに命令に従う兵士の苦労をそのまま体現したかのような存在でした。
こうした、苦労人への同情と自分勝手なやつらへのツッコミを入れながら見るとそれなりには楽しめました。
そうしたツッコミを狙ってのキャラづくりだったのなら、成功だったと思います。