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【レビュー】マザー!

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家というものは、人が住んで初めて命が吹き込まれるものです。
そうして吹き込まれた命は、住民に安心感を与えてくれます。
そんな家と人間の美しい関係をぶち壊すホラーが、今回レビューする『マザー!』です。

 

胸糞悪い展開の数々!他人が家に入る恐怖!
本作はいろいろと凄まじい作品です。
鑑賞して、これほどまでに驚かされ、二度と見たくないと思わされる作品はありませんでした。
それもそのハズ、本作はものすごく不快感の強い作品なんです。
事の発端は、母親(ジェニファー・ローレンス)と彼(ハビエル・バルデム)が男性(エド・ハリス)を家に招き入れたことから始まります。
そこから妻(ミシェル・ファイファー)を呼び、息子を呼び、入り浸ろうとするのですから恐怖です。

面白いのはその不快感の抉り方もでした。
「申し訳ない」、「もう少しで出ていくから」をチラつかせ、なあなあで滞在を続けるんですよ。
わざとじゃない風を装いながら、物を壊したりもしてしていました。
人間、いくら大切にしている物でも初対面の人間に激昂なんてできるハズもありません。ましてや平謝りなんてされればなおのことです。
ただ、それを盾にするかのようにやりたい放題やるエド、ミシェルの姿は、思い出すだけでも胸糞悪くなります。
そうした胸糞悪くなる演技を自然にしているのですから、ある意味すごい演技力です。

また、そうした2人の横暴を受け入れてしまっているハビエルが地味にムカつきます。
ジェニファーの味方のように振舞っておきながら、状況をどんどん悪くしていくのですから悪人よりもタチが悪いと思いました。

で、エド一家の暴走で終わるのかと思いきやまだまだ不快な話は続きます。
なんと、小説家として大成したハビエルがファンたちを勝手に家の中へご招待しちゃいます。
案の定、家の中はボロボロにされ、あげくは泥棒まで出る始末。ここら辺のタガの外れた人間の動きは、あり得なさそうですがリアルに感じられて気味が悪かったです。

 

登場人物たちの奇怪な行動によって胸糞悪い展開が次々と巻き起こっていました。
こうした展開が嫌いな人にとっては見るのも嫌になる作品となるのでしょうけど、個人的には大好物なので満足度は高めです。
非日常感を味わえるという点においては、これほどまでにピッタリな作品はないでしょう。

 

 

 

ヤバすぎるラスト!
本作は非日常感を味わえる、という意味では面白い作品です。
しかし、二度と見たくないと思わされるのは終盤の展開にありました。
母親(ジェニファー・ローレンス)が生んだ赤ん坊が殺されてしまうんですね。しかも、バラバラに裂かれて肉片を食われるという形で。
ジェニファーの発狂もあって、非常にショッキングなこの展開にはただただ唖然とさせられるばかりでした。モザイクが掛かっているとはいえ、酷すぎる展開です。
しかし、本作で終始流れ続けている気味の悪い空気を考えるなら、これくらいのラストが待っていてもなんらおかしくないのですから嫌になります。
要は、赤ん坊を八つ裂きにして殺すという展開さえも、作品としてはプラスに感じられてしまうんですね。それが何より気味が悪かったと思います。
また、ラストには彼(ハビエル・バルデム)が持つ欲望が世界を作り上げていることを匂わせていて、新たな犠牲者が出ていることを仄めかしていました。本当に救いがないラストがまた胸糞。

 

どんどん状況が悪化するという意味では、最後まで右肩上がりで盛り上がり続けていました。
いい意味で期待を裏切る胸糞悪くなる終盤の盛り上がりは、見ごたえはあったと言えるでしょう。