【レビュー】リチャード・ジュエル(ネタバレあり)
クリント・イーストウッド監督作40作目となる『リチャード・ジュエル』
イーストウッド監督39作目『運び屋』からおよそ1年での公開は異例のスピードです。
さらに驚くべきは2016年『ハドソン川の奇跡』から1年毎のペースで公開しているということ。
毎年、コンスタンスに感動作を作り続けられるのは本当にすごいと思います。
で、本作はどうだったかというと、これまた当たりの作品でした。
予告編やチラシのあらすじなどで把握していた通り、爆破事件の英雄であったリチャード・ジュエルという男性が一変、容疑者として扱われるようになる、というストーリー。
予想外の展開も衝撃のどんでん返しもあるわけではありません。
けれど、間違いなく面白かったです。
その理由として挙げられるのが、再現度の高さでしょう。
リチャードが事件へ巻き込まれるまでの経緯、事件当日の行動、英雄から容疑者へと変わるまで、一挙手事細かに描いた再現度には息を呑むような緊迫感がありました。
そうした事実に、より説得力を与えていたのが出演者による演技でした。
リチャード・ジュエルを演じたポール・ウォルター・ハウザーはそもそも見た目がリチャードに似ています。
ただ演技も絶妙で、正義感の強さが空回りしてしまう悶々とさせられる演技の仕方が巧かったです。見ていてハラハラはさせられるのですが、決して嫌いになれないキャラクター性は彼の演技力があればこそ。終盤に見せるFBIに語り掛ける姿にはカッコよさもあって、リチャードの信念の強さをそのまま表現していたように感じられました。
弁護士ワトソ役を演じたサム・ロックウェルも素敵でした。
口が悪く、我関せずな性格かと思いきや、誰よりもリチャードの事を考え行動する姿は、純粋にカッコイイです。
本作の半分の魅力が彼による活躍と言っても過言でないと思います。
そして、影の立役者であったのが、リチャードの母ボビを演じたキャシー・ベイツでした。
リチャードの信頼を勝ち取るために彼女が行うスピーチシーンは、おそらく本作の中でも一番の名シーン。
リチャードの一番の理解者であり、最も心配している人物であることが言葉だけでも伝わってくる説得力はキャシーの演技力があればこそでした。
これまでにも何本物もの作品で、実話を基にした映画を作ってきたクリント・イーストウッド監督。
それだけに、必要な尺で、必要な情報を、必要な見せ方で見せる手法を熟知しているかのようでした。
それは、映画を見ている私たちをアトランタ爆破事件の起きた1996年へとタイムスリップさせくれました。
そうした没入感があるからこそ、それぞれの人物に惹きつけられ、感動することが出来たのでしょう。