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【レビュー】スウィング・キッズ(ネタバレあり)

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韓国の音楽映画という、なかなかお目にかかれないジャンルの映画でした。
しかも時代は1950年、舞台は巨済島(コジェとう)の捕虜収容所なのですから珍しい事この上ありません。

 

そんな本作は中身も変わっていました。
韓国への絶対的な忠誠心を抱くロ・ギスが、アメリカ文化のタップダンスに惹かれていくという内容……なのですが、ギスには「韓国人に仇なす国の文化に染まるな!」という思想があるんですね。
今の時代の私たちからすると、なんとなくは分からないでもありませんが、そこまで頑なに否定するのかとなかなかに衝撃でした。

 

そんなジェネレーションギャップ(?)はあるものの、分かりやすくはありました。
お遊び程度で作られたはぐれ者たちが集うタップダンスチームが成長し絆を深めていったり、それを通してギスが「踊りたい」という欲求に素直になったりと、王道的な展開があるわけですからね。
テンポよく話が進んでいくこと、コメディ調で描かれていることもあってか、非常に見やすかったです。

 

そして、やはりと言えばやはり見どころとなるのがダンスシーンでした。
「困ったことがあればまずダンス」とでも言わんばかりに巻き起こるダンスシーンの連続には笑えました。
ただ、何事も本気でやればカッコよく見えるもの。キレッキレのダンスでカッコよくキメればこちらのテンションも上がりました。タップダンスシューズが床を叩く音は、きっと誰もが気持ちよく感じるハズです。
そうした盛り上がりの末に待っている終盤のダンスシーンは、最高に盛り上がる本作の目玉となっていました。
ああいったシーンこそ、映画館で見る価値のあるシーンと言えるのでしょう。

 

そうした盛り上がりがある一方で、シリアスな展開があったのも記憶に残っています。
特に、アメリカとの関係は作中でも印象深かったです。

ギスとジャクソンがタップダンスによって心を通じ合わせる一方で、その他大勢のアメリカ人と韓国人たちは、半戦争状態にありました。

それがもたらした結果は、無実であったタップダンスチームの死につながることに。まさに、戦争の不毛さを感じさせる展開となっていました。
史実ではないとはいえ、こうした巨済島(コジェとう)の捕虜収容所の状況(収容所内での国ごとの関係)をざっくりと学ぶことが出来るのはありがたかったですね。
「こんなこともあったかもしれない」と思えるくらいにはリアルな緊張感を味わうことが出来たと思います。

 

タップダンスという文化を使い、韓国とアメリカの絆や溝を浮き彫りにしていた本作。
音楽やダンスといった文化は国境間をも超え得る。そんな可能性を感じさせる作品でした。