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【レビュー】野生の呼び声(ネタバレあり)

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犬と人間の関係は、時折奇跡を呼び起こします。
例えば、『ハチ公物語』のように待つ犬もいれば『南極物語』のように帰ってくる犬もいます。
そんな犬と人間の奇跡の関係を描いた作品が『野生の呼び声』でした。

 

時は19世紀末。サンフランシスコの裕福な家で飼われていた犬バックが、誘拐されゴールドラッシュに沸くカナダ・アラスカ国境地帯でそり犬にされるという話。
主演はハリソン・フォードですが、彼の活躍は全体の5割あるかどうかくらいです。
バックが誘拐されそり犬に、オマール・シー演じる郵便配達員ペローの相棒を経て、ジョン・ソーントン(ハリソン・フォード)と出会うという流れを見て分かるように、主人公はあくまで犬のバックでした。

 

開始当初気になったのがバックのCGです。
なめらかで「CGすごい!」となりました。……なりましたが、すごいために違和感がハンパじゃなかったです。
まるで人間でも中に入っているのではないかと思うような動きはなんとも受け入れがたくありました。
とはいえ、人間とは慣れてしまうもの。後半には気になることもなく、不遇な境遇を乗り越えてきたバックに感情移入することが出来ました。

 

そんなバックの物語。見どころとなるのが、やはり冒険につぐ冒険です。
本作は、ジャック・ロンドン著の同名小説が原作となっています。(なんと通算6度目の映画化だとか)
そのため、ストーリーはしっかりとしていて、全ての物語に筋が通っている印象です。
人間の温かさや身勝手さに翻弄されつつも、バックが自らの奥底に潜む野生の本能を呼び覚まし、ルーツに辿り着く流れは、100年以上前の原作でありながらも感情を動かされる力強さが感じ取れました。

 

で、そのストーリーを映像化したのはどうだったかというと、個人的には満足でした。
バックのCG(他の動物含め)は、先ほども書いたように慣れると別に気になりません。重要なのはバックたちの物語ですから。
良かったのは、風景もろもろです。
雪山や氷の湖、森の中など、美しい風景の数々はおそらくこれまでの映画化の中でも最高峰の出来だと思います。(見てないから分かりませんが……)
バックがそりを引いて雪山を駆けるシーンなんかは、躍動感があって見ごたえもありました。
こうしたシーンが見れただけでも、映像化をした意味があったと言えるでしょう。

 

そして、最も注目だったのがハリソン・フォードでした。
ボサボサの白髪と白髭を蓄えたその姿は『スター・ウォーズ』シリーズとは異なり、かなり年を取った役という印象が強かったです。
ただ、優しいおじいちゃんの雰囲気を漂わせており、バックとも温かみのある関係になっていたのは良かったです。
一方で、無鉄砲な若者に毅然とした態度で注意をしたりと、カッコイイ姿も見せており、ハリソンの魅力を生かしていたと思います。とはいえ、最後には撃たれて死んでしまうというのはなんだか悲しいものがありました。
年を取ってもハリソンには、強い男として生きていてほしかったというのが個人的な意見した。

 

今回で通算8度目の映画化となった『野生の呼び声』
その話を聞いた当初は「そんなに何回も映画化する必要はないのでは?」と思ったものです。
しかし、よりリアルなCGが取り入れられ、今だからこそ出演できる俳優が集まった映像を見ると、そんなことを言うのは野暮に思えました。
過去の映画化作品を超えようとする気概。それがある限りは再映画化が無駄だったなんてことはないと言えるでしょう。