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【レビュー】カリフォルニア ジェンマの復讐の用心棒(ネタバレあり)

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ジュリアーノ・ジェンマという俳優をご存知でしょうか?

『夕陽の用心棒』(1965)でその名を轟かせ、一躍西部劇のスターとなったイタリアの俳優です。

タイトルにそんな彼の名前が付いている映画が今回レビューする『カリフォルニア~ジェンマの復讐の用心棒』です。

もちろんそんな名前が付いているのは邦題だけで、原題は『California』です。

 

本作はタイトルの通り復讐モノ……ではなく奪われた女性を助け出す奪還モノです。

一応、南北戦争終戦時に知り合った相棒ウィリーを南部軍狩りが殺したため、復讐の相手はいるのですが、作中では特に触れられていません。

では、敵は何者かというと、元賞金稼ぎの賞金首です。

彼らは、南部軍の生き残りを過剰な方法で追い詰めていたことから賞金首となっていました。

そのため「南部軍を目の敵にする者」という意味であるなら復讐にも当たるのかもしれません。

 

このように、本作は南北戦争終戦直後というのが大事な要素となっています。

冒頭から敗北した南部軍(カリフォルニアとウィリー)の姿を描き、はした金で働くか、放浪者として生きていくかを選択させられるなど、悲惨な現実を映し出していました。

それはカリフォルニアも同じで、唯一の仲間であったウィリーは殺され、心の拠り所となるウィリーの姉ヘレンは誘拐され廃人になってしまうという残酷な現実を突きつけられることに。

見ていても「南軍の彼らが何をしたんだ!」と言いたくなるようなシーンがたびたび訪れていました。

「1865年に南北戦争終結した」と、史実だけを語るのなら簡単ですが、その後も確執があったわけです。そこら辺を考えさせられる内容でした。

 

そうした、史実路線をいくからか、いわゆる西部劇特有の演出(カッコいいアングルを切り取ったり、早撃ちでじっくり時間を掛けたりなど)は、あまり見られませんでした。

というか、そもそも銃撃戦自体が少ないです。

最後なんて、悪党と殴りあって取っ組み合った末に木片に刺さった釘で倒しちゃいますからね。復讐というかケンカのようでした。

 

とはいえ、それで主演のジュリアーノ・ジェンマの魅力が損なわれるかといったらそうではありませんでした。

ミステリアスな登場から、何事にも動じないクールさ、命のやり取りになれば牙を剥くワイルドさ、銃を扱わせれば右に出るもののいないカッコよさまで、西部劇の主人公に必要な要素を全て持っていたと言えます。

個人的にジェンマは、クリント・イーストウッドフランコ・ネロといった俳優と比べると渋さよりも、爽やかイケメン度が高いイメージがあります。

そこへ、無愛想さとちょっとした無精髭を生やしたカリフォルニアの役柄は、普段のイメージよりもミステリアスさとワイルドさがプラスされている感じがあって素敵でした。

後半からは、家庭的な爽やかイケメン要素もあって、タイトルに彼の名前が入るのも頷ける魅力だったと思います。

 

西部劇において、南北戦争前後の時代を切り取った作品は珍しくありません。

そんな戦争の決着直後の情勢を見ることのできる本作は面白いのと同時に勉強にもなりました。

結局、見終わったあとの感想が「ジェンマカッコいい!」に行き着くのが彼の罪作りな所ですけどね。