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【レビュー】野獣教師(ネタバレあり)

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「教師は生徒を守るもの」

そんなフレーズをよく耳にします。

今回レビューする『野獣教師』は、物理的に戦うことで生徒を守る教師の映画です。

 

と、本作のタイトルだけ見ると、戦う教師の物語に見えますが、実際にはそうではありません。

というのも、本作の主人公であるジョナサン(別名スミス)は、もともと傭兵でした。

恋人ジェーンが犯罪組織「KOD」に襲撃されたことから、代理として教師をすることになっていました。

そのため、原題は『The Substitute』(代理、代役)。

教師の物語というよりは、ジョナサンの物語と言えるかもしれません。

 

で、代理として教師なんて簡単に言いますが教師には教職員免許が必要となります。

その課題を作中どのようにして越えていたかというと、経歴詐称でした。

傭兵の技術どうこうで、傭兵であるジョナサンは、高学歴持ちの教師になっていたんですね。

 

この設定を見ても分かるように、本作は肝心な所はぼかしていくツッコミどころ満載の映画でした。

犯罪組織「KOD」は、麻薬を取り扱い殺人をも厭わない集団でありながら、いち学生がトップを務めていますし、かと思えば元警察官の校長が黒幕であったりします。

対するジョナサンも、生徒を暴力で制圧したり、2階から人を投げ飛ばしたりとやりたい放題。

基本的には「やったもん勝ち」な世界なんですね。まさに、世紀末な学校でした。

 

そのため、ジョナサンを演じたトム・ベレンジャーの活躍が光りました。

スーツを着て教師風に見せてはいますが、その強面は傭兵の雰囲気をまったく隠せていなくてもはやギャグにしか見えません。

無法者の生徒を暴力で鎮圧し、生意気な生徒を凄みで服従させる無茶苦茶さは、まさに「野獣」でした。

とはいえ、教師らしいことも一応やっており、自身のベトナム戦争での経験談を語ったり、犯罪に走る生徒たちに教えを説いたりしました。

「野獣」であり「教師」でもある所を見ると、「野獣教師」というタイトルは、見る前こそふざけているように思えましたが、最終的にはしっくりときました。

 

そんな、野獣教師の最後の戦いは、なんと学校内での銃撃戦でした。

生徒がいない深夜なのが救いではありますが、学校中を銃痕だらけにして、死体もそのまま放置で敵を殺して去っていく姿はワイルド過ぎました。

 

そんなコメディチックなツッコミ要素の多い作品ではありますが、ジョナサンの境遇は意外とヘビーでした。

というのも、冒頭で彼は仲間たちと共に傭兵としてキューバへ潜入している訳ですが、アメリカ政府から責任を押し付けられて無職に。

唯一、信頼できる仲間たちは「KOD」との最終決戦でほとんどが命を落としてしまうというスッキリとはいかない展開を見せていました。

なんだか使い捨て傭兵たちの末路を見せられた気がして、ちょっと鬱でした。

 

前知識なしで見たため、初めは教師の奮闘物語かと思っていました。

しかし、蓋を開けると傭兵が学内に救う犯罪者を制裁するような内容で少し驚きでした。

しかし、トム・ベレンジャーのワイルドな言動を見られるだけでも楽しめる作品だったと思います。