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【レビュー・解説】ランボー3/怒りのアフガン(ネタバレあり)

ランボー/怒りの脱出』から約3年(1985年8月→1988年6月)

戦いの終わったハズのランボーに再び戦争の魔の手が伸びてきます。

今回の舞台はアフガニスタン

そんな『ランボー/怒りのアフガン』を今回はレビューしていきます。


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<h3>【感想】トラウマも陰謀もない!ただ暴れるランボーの戦い!</h3>

タイの寺院で隠居生活を送るランボーにトラウトマン大佐がアフガニスタンへの同行を依頼することから始まる本作。

個人的に「大佐は酷なこと言うなぁ」と思いました。

一作目でランボーの戦争へ対する苦しみを知り、二作目で政府への失望を味わわせておきながら本作での依頼ですからね。

しかも大佐は「まだ吹っ切れてないんだろ?」と、勝手にランボーの気持ちを決めつけちゃってますからね。

上官とはいえさすがに酷いことすると思いました。

 

そんなわけでランボーにフラレた大佐は他のメンバーと共にアフガニスタンへ。(敵はソ連

すると案の定、敵の捕虜となってしまいます。

一作目から感じていましたが、大佐って大物感を出していますが、これといった活躍はしてないんですよね。

ある意味、今作でようやく見せ場を作れたと言えるのかもしれません。

 

大佐がきっかけとなり、ランボーもまたアフガニスタンへ向かうことに。

現地の人に「一人で行くのは無謀だ!」、「報復されるのは現地人だ!」という声も上がる中「大佐を助けにいく」の一点張りで聞かないところが実にランボーっぽかったです。

 

とはいえ、ランボーも別に現地人と敵対しようと言うわけではありません。

むしろ、ソ連という共通の敵を打倒しようとする味方でした。

これがシリーズの中でも本作が異色なところです。

現地の案内人や子供とコミュニケーションを交わしたり、アフガニスタンの国技である「ブズカシ」(ヤギの死体を円に入れる競技)をやってみたりと、珍しく人と接するランボーの姿を見ることができました。

そんなふれあいをしていただけに、ソ連による現地人への容赦ない攻撃は、ランボーに怒りの炎を点けます。

邦題の『怒りのアフガン』もここ由来なのでしょう。

 

そんなわけで、案内人と(勝手についてきた)子供の3人でソ連要塞へ侵入することに。

ほとんどランボー1人で要塞を爆破させて脱出してしまうのですからさすがはゲリラ戦のプロ。

隠密行動をしていたとは思えない爆発を残して去る爽快さすらありました。

 

この要塞爆破シーンで、ランボーはケガを負うのですが、個人的に一番記憶に残るのはこの治療シーンです。

というのも、表現が異常に生々しいから。

貫通した木片を押し出すとニュルンと出てくる描写や、傷口を火薬で焼く痛々しさは嫌でも記憶に残ってしまいます。

しかし、ランボーが人間であることを再認識させる意味でも重要なシーンだと言えるでしょう。(後で大佐に「訓練通り痛いと思わないようにしてもやはり痛いです」と本音を言うのが面白いです)

 

復活したランボーは再び要塞へ侵入。

大佐を助け出すと、アフガニスタン脱出を邪魔するソ連兵をバッタバッタと倒していきます。まさに止まランボー

しかし、ソ連は数と武器で彼らの邪魔をします。

そんな危機を救ったのが、アフガニスタンの現地人たちでした。

友好を深めた人たちがピンチに助けに来るという熱い展開にはテンションMAXに!

そうなれば、機関銃で敵を掃射するランボーも、火炎ビン持って馬を乗り回すランボーも、アパッチを戦車の正面衝突で落とすランボーも全てが面白い!

やっていることはソ連との全面戦争ですが、普通にアクションエンターテイメントとして楽しめる展開でした。

 

1作目、2作目と、ベトナム戦争に関係するランボーの戦いを描いてきた『ランボー』シリーズ。

本作では、ランボーの抱えるトラウマ描写を最小限にして、アフガニスタンでの戦いをアクション映画寄りに描いていたのが印象的でした。

ストーリーの骨太さが薄くなる変わりに、非常に見易い作品になっていました。

 

<h3>【解説】アフガン民族に捧げてしまった映画</h3>

おそらく、多くの方が知っているであろう事実。

現在、アメリカとアフガニスタンは戦争状態にあります。

きっかけは2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件。これに対して、ジョージ・W・ブッシュ大統領が戦争を宣言したことから現在まで続く戦争となっているわけです。

そのため、本作のタイトル『怒りのアフガン』と聞くと「ランボーアフガニスタンと戦争するの?」と間違われることもたまにあります。(私の周りに少なくとも2,3人はいました)

 

しかし、本作ではアフガニスタンへのリスペクトが満載なのですから皮肉な話です。

例えば、トラウトマン大佐がアフガン民族の不屈さを称賛しソ連は勝てないと揶揄をしていたり、アレクサンダー大王の逸話(5人の精鋭部隊で戦争に勝利したという「500の羊より5頭の獅子」の話)をランボーが聞いたりしていました。

また、やたらと砂漠地帯の美しい映像が盛り込まれていたり、ランボーが「ブズカシ」を体験したりするのもまた、アフガニスタンリスペクトなのでしょう。

で、そのリスペクトの最たるはラストシーン。以下のメッセージで映画を〆ています。

 

「勇敢なるアフガン民族に捧ぐ」(THIS FILM IS DEDICATED TO THE GALLANT PEOPLE OF AFGHANISTAN)

 

なんと、アフガニスタンへ映画を捧げてしまっているんですね。

今の時代にこんなことをすれば、タイムトラベラーか正気を疑われるかを、どちらにしても変人扱いされることでしょう。

とはいえ、実際にソ連アフガニスタン侵攻を阻止した過去もあっただけに、当時のアメリカではアフガニスタン=味方という構図があったわけです。

 

時代と共に状況が変化するのは当たり前のことではありますが、かつては共に戦ったアフガニスタンが、今やアメリカの敵となっているのはなかなか切ないものがありますね。