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【レビュー】ジャック・リーチャー NEVER GO BACK(ネタバレあり)

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トム・クルーズ主演による『ジャック・リーチャー』シリーズ第二作。
個人的な認識ですが、今作は一作目の『アウトロー』と作風が大きく異なっていたように感じられます。
というのも、前作は街中で起きた狙撃事件を追った、所謂「刑事もの」のような展開。
けれど、今作は軍の中で起きた二人の兵隊の射殺事件を追ったストーリーとなっています。
その中でリーチャーもまた追われる身となるわけで、無理やりジャンル付けするのなら「スパイもの」に近いかもしれません。


こうした変化は、監督がクリストファー・マッカリーからエドワード・ズウィックに交代したことが理由として挙げられます。
脚本もクリストファー・マッカリー一人からエドワード・ズウィックら三人に。
とはいえ、どちらかに優劣が付くわけでもなく、どちらも違ったテイステト楽しむことができました。

 

今作の中でも一番、変化球であったのがリーチャーの娘(疑惑)サマンサの存在です。
直接、事件には関係ないのですが、敵側にリーチャーの娘だという噂を知られたことから追われる身となります。
彼女がいることで、リーチャーの生き様が変わってくるのがひとつ面白い点でした。
よく「子供が生まれると人生観が変わる」なんていう言葉を耳にしますがまさにその通りなのでしょう。
今まで存在を知りもしなかった娘を認知したことによって、リーチャーは孤独な一匹狼から親になるわけですから。
親として彼女に不器用に接するリーチャーの姿は微笑ましかったです。

 

今作、もう一つ変わった点がありました。それは女性の扱いです。
前作はロザムンド・パイク演じる女弁護士ヘレンを救うためにリーチャーが奔走していたのが印象的。
しかし、今作ではコビー・スマルダーズ演じるターナー少佐がリーチャーと同じ立ち位置から事件を追っていたんですね。
それは、今作の事件で殺された二人の軍人がターナーの部下であったこともありますが、女性=守られる立場というのを嫌ってのことでもありました。


とはいえ、これが災いしてリーチャーとターナーの間に亀裂が走るんですね。
敵は別にいるにも関わらず、男女差別がどうこうで味方同士がぶつかり合うのだから皮肉な話でした。
これまで、男優が主演のアクション映画であれば「男が戦い、女が守られる」というのがテンプレートでした。
しかし、本作ではそうした「映画のお決まり」が一筋縄にいかないという、時代を感じさせる展開となっていました。
ターナーとサマンサの活躍シーンも描かれており、男女平等が作中内で成り立っていたからこそ、意味のあるやり取りであったと言えるのでしょう。

 

そして、前作同様にいいアクセントを与えていたのがアクションシーンです。
格闘技多めのアクションシーンは緊迫感が高く、前作以上に見ごたえがありました。
殺さない具合に、一瞬で敵を制圧する技は何度見ても美しいです。

また、今作でリーチャーが銃を使うのは埠頭での銃撃戦の一度のみでした。
しかし、このシーンの迫力が凄まじかったです。
敵から奪ったアサルトライフルをこれでもかと撃つ様は爽快。
マズルフラッシュ(銃口から飛び散る火花)多めの迫力はテンション上がります。
やはりデカい銃にはロマンが詰まっていますね。

 

現在、原作の『ジャック・リーチャー』シリーズは、23冊が刊行されています。
今作はその内の一冊でしかありません。(前作『アウトロー』も一冊)
つまり、シリーズ化しようと思えばいくらでも映画を作ることが出来ちゃいます。
しかし悲しいことにトム版『ジャック・リーチャー』シリーズは、テレビ版で他の俳優を起用してのリブートとなるとのこと。もうトムのジャック・リーチャーは見られません。
タイトルの『ネヴァー・ゴー・バック』(決して戻るな)が実現されてしまうとはなんとも皮肉な話ですね。