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【レビュー】邂逅(めぐりあい)(1939)(ネタバレあり)

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人の出会いは一期一会。 そんなことわざがあるように、どんな時に運命の相手と出会い、恋に落ちるか分かりません。 そんな男女の数奇な運命を描き、第12回アカデミー賞(1939年)を席巻した(作品賞、主演女優賞、助演女優賞、原案賞、美術賞、歌曲賞)作品が、今回レビューする『邂逅(めぐりあい)』です。

ヨーロッパからアメリカへ向かう豪華客船内で、プレイボーイのミシェル・マルネーが、大富豪の令嬢テリー・マッケイに偶然出会い、一目惚れしたことが始まり。 ミシェルがプレイボーイとして有名なだけあって、船の乗客からの注目を避けたいテリーはことあるごとに彼を避けます。 しかし、ミシェルからの度重なるアプローチにだんだんと惹かれていくんですね。 それもそのハズで、ミシェルは見た目のイケメンさはもちろんのこと、セリフからして魅力が溢れているんですね。 「シャンパンのように楽しく過ごせないかな?」なんていうシャレたセリフはそうそう出てきませんし、普通のルックスの人間が言っても寒いだけですからね。 テリーが少しずつ惹かれていったのも納得でした。 アプローチ側(ミシェル)の魅力を描きつつ、二人の距離感が詰まっていく展開は、王道的なブロマンスであったと思います。

道中、寄港したマデイラ島でミシェルの祖母と親睦を深めるといったミシェルの過去含めた性格などを知る機会があるのも、ラブロマンスではお約束。 後々、テリーが歌手になることや二人の関係をつなぎ止める贈り物を残すなど、重要なエピソードでもありました。 祖母が再び船に乗り込もうとするミッシェルに対して「船の汽笛なんて嫌いよ」と告げるのは、彼のことを心の底から愛していることが分かるようでした。

そうした王道的なラブストーリーにアクセントを与えていたのが、お互いに婚約者がいるという事でした。 どちらのお相手も、お金持ちで愛してくれて性格もよいという、振ってしまうのはおしい相手に思えました。 けれど、二人はそんな事実には目もくれずあっさりと婚約破棄をしてしまいます。 それはひとえに、二人の間に婚約者以上の愛があったからでしょう。 特になにか事件が起きるわけでもないですが、二人が互いを愛し、信じているのを強く感じさせるアクセントであったと言えるでしょう。

で、本作のメインストーリーとなるのが、二人の待ち合わせでした。 アメリカに到着した二人は、ミシェルの仕事が6ヶ月の間に軌道に乗ったら、エンパイアステートビルの展望台で会うことを約束します。(ちなみにテリーの歌曲シーンは割とガッツリ描かれており、) そのため、二人は同じ街に暮らしながらも6ヶ月間、別々に生きることを決意。 それでミシェルは画家として、テリーは歌手として大成するのですから、すごい才能……というより覚悟が為せる業なのかもしれませんね。 しかし、約束の日にテリーは車に轢かれてしまい下半身不随になってしまいます。 彼女が約束の場所に来ないことから、ミシェルは6ヶ月の間に心変わりしたのだと勘違いしたままに。 こういう時、現代なら携帯で連絡を取ってしまえますが、それが出来ないのが時代を感じさせましたね。

テリーが「下半身不随である自分を愛せるはずがない」と、ミシェルに事実を伝えないのがまた切なかったです。 そのため、二人が再開を果たしてもすぐに復縁とはなりません。 裏切られたと思いながらもまだ愛しているミシェルと、愛するが故に突き放さざるを得ないテリーのやり取りはなんとも歯がゆい思いでした。 それでも、ミシェルの描いた絵をテリーが持っていたことで、二人はお互いの思いに気づくのですから素敵です。 まさに王道的ラブロマンスだったと言えるでしょう。

シンプルながらもロマンチック。 偶然のめぐりあわせと純粋な愛を描いた、名作と呼ぶにふさわしい作品でした。