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【レビュー】レッド・サイレン(ネタバレあり)

オリヴィエ・メガトン監督をご存じでしょうか? フランスの監督で、『トランスポーター3 アンリミテッド』(2009)や『96時間/リベンジ』(2012)、『96時間/レクイエム』(2015)など、フランス発のアクション映画の続編を監督することに定評のある人です。(勝手なイメージです) そんな監督が2002年にメガホンを取った作品が今回レビューする『レッド・サイレン』です。 ちなみに、タイトルの意味は本編中にも触れられていますが「赤い妖精」となります。

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ストーリー

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(1992-1995)に傭兵組織『自由の鐘』として参加していたヒューゴは、子供を誤射して殺してしまう。

フランスのとある警察署にアリスという少女がDVDを持ち駆け込んでくる。 そのDVDを受け取ったアニータ警部補は、アリスのメイドが覆面を被った者たちによって惨殺される映像を見る。 アリスはそうした映像を母親であるエバが撮影しているという。 しかし、物的証拠がない事には逮捕に踏み切ることも出来ず、アリスはエバに連れ帰られることとなった。 母から逃げ出したアリスはその道中ヒューゴと出会う。

【感想】傭兵と少女。どこかで見たような設定

見終わった後にあらすじを書いてみて思った「紛争の描写いる?」と。 冒頭の掴みとして、観客が置いてけぼりになるシーンでもあってこのシーンはなかなかのネック。 後々のことを考えても「子供を誤射してしまった」という事実以外はあまり生きることのない場面なだけに、必要性を問いたくなるシーンです。 とはいえ、この作品の原作小説モーリス・G・ダンテック著『La Sirène rouge』(映画と同名)が1993年に書かれたものと考えるとなかなか面白くもあります。 あらすじにも書いてあるように1993年は紛争真っただ中ですからね。 リアルタイムに起こる現代での物語であれば楽しめたのかもしれません。 しかし、私が見た2020年はもちろん、本作が制作された2002年にも一切リアルタイム性はないという事実。 果たしてこの描写は必要だったのか……それを知るのは公開当時に劇場で見た人のみぞ知ることでしょう。

それはさておき、本作のメインストーリーは母親エバ率いる悪党組織からヒューゴがアリスを守るというものです。 孤独な傭兵として生き疲弊したヒューゴと純粋無垢なアリスによる逃亡劇はフランス映画の名作『レオン』を彷彿とさせます。 本作も同じくフランス発の作品。フランスはおっさんと少女を絡ませるのが好きなのか、単に本作が『レオン』リスペクトなのか…… ちなみに『レオン』は1994年の映画。原作『La Sirène rouge』(モーリス・G・ダンテック著)の方が1993年と、1年早いですがどこまで原作準拠なのかは不明です。

そんなストーリーですが、意外と関係ないのが殺害シーンの入ったDVD。 アリスを連れ戻したいエバなのですが、ヒューゴが邪魔だてするため、戦闘状態に陥るという状況ですから証拠とか不要なんですね。 そのため基本的にはサスペンス・アクションものとなっています。 ヒューゴが迫りくるエバの部下を銃で殺していくのが本作の見どころです。

そんな銃撃シーンでもっとも盛り上がるのがホテルにエバが依頼したボント大佐の傭兵との大立ち回り。 客がいないホテルが舞台なため、特に被害とか気にせず銃を撃ちまくり合う展開はそこそこ楽しめます。 画面が暗くて状況が分かりにくいとか、BGMがないとか、セリフがないとか、長ったらしいとか、いろいろ不満はありますが、本作の中ではもっとも盛り上がるシーンでしょう。 個人的にはもう少し刺激があっても良かったかと思います。

曖昧な表現からも分かるかと思いますが、この作品はぶっちゃけあまり盛り上がるものではありません。 戦闘シーンも今挙げたシーン以外はかなり薄味で、気づけば敵が倒されていたというのがほとんど。ラストシーンには格闘シーンがありますが、これもなんだかもっさりしていて見ていても複雑な気持ちになります。 で、その原因はおそらく予算。 本作は予算が600万ドル(現在相場なら約6億5000万円)しかありません。 2000万ドルでも低予算とか言われる映画業界ですからこれはかなりの低予算です。 そうして考えると、イマイチであったとはいえ、本格派サスペンス・アクションの体を守ろうとする涙ぐましい努力が垣間見える作品であったと言えるのでしょう。

低予算ながらもサスペンス・アクションと同時に傭兵と少女の絆も描いており、手堅くまとまっていた本作。 とはいえ、盛り上がりに欠けていたのは事実。低予算映画であることを知ってから見たかった作品でした。