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【レビュー】マイ・ボディガード(ネタバレあり)

ボディガード=要人を守る仕事というイメージがあります。
しかし、メキシコではそれ以外にもボディガードを雇うそうです。
それが富裕層の子供の警護になります。
今回レビューする『マイ・ボディガード』は、そんなメキシコでのボディガードと少女の関係を描いた作品です。
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主演がデンゼル・ワシントン
もうこれだけでただ事では済まないニオイがプンプンしてくるこの作品。
とはいえ、序盤は幼き頃のダコタ・ファニング演じるルピタと打ち解けるまでを描いており、意外と微笑ましいです。
クリーシーが「ボディガードの対象と仲良くする気はない」と突き放しておきながら、ルピタの優しさに惹かれ、親友にまでなるのはチョロいなと思いました。
まあ、かわいくて愛嬌もあるルピタを前にしたらチョロくなるのも必然ではあるのでしょう。ダコタの今とは違う魅力が見れます。

当然、そんな微笑ましいまま終わるはずもなく、中盤に差し掛かる頃、ルピタを狙った誘拐犯が現れます。
「ようやくデンゼルが暴走するか!」とワクワクしていたら……やられちゃいました。
デンゼル=無敵なイメージがあっただけにこれは意外。
強襲であることや汚職警察官までグルになっていて数で攻めてきたことまで考えると負けてしまったのも仕方が無いとはいえ、やはりショッキングでしたね。
しかも、その後の人質交渉でルピタが殺されたなんて言うんですからなお衝撃です。なんて救いのない世界なんだ……
そこでようやくデンゼルのエンジンが始動!……を通り越して暴走状態に。
誘拐犯を突き止めるまで、関わった悪党全員を痛めつけて最後に殺すという爽快感は、流石のデンゼルクオリティです。
純粋に撃ち殺したり、車ごと崖から突き落したり、ケツに爆弾を埋め込んでみたりと、悪党ばりな残虐非道を行くのはある意味爽快でもありました。

で、流石は映画。終盤にルピタは実は生きてましたのどんでん返しが起こります。
「よし!今度こそデンゼル無双だ!」と、思っていたらルピタを助け出した直後に絶命しちゃいました……
つくづく、こちらの予想を裏切ってくる展開でしたね。
悪党の黒幕はまともな警察官が倒してくれたから良かった良かった。

こうして見ると分かるように、デンゼルの暴走を除けばリアルな展開が色濃く描かれていた印象があります。
例えば、映画の暴徒では「誘拐された被害者の7割は生きては帰らない」なんてテロップが出ていたり、全編においてスペイン語が多用されていたりなど、メキシコ感がひしひしと出ています。(行ったことないですが)
また、演出においても、光の使い方によって映像を濃く見えるようにしてメキシコ=暑い国なイメージを助長させてていたり、フラッシュバックのようにカットをコマ切れにしたような見せ方で臨場感を増していたりと、リアル路線を貫いていました。
まあ、デンゼルの暴走シーンなんかはリアル路線かと言われるとアレですが、臨場感という意味ではこれでもかと感じさせるような作りになっていた印象でした。

A・J・クィネルの小説『燃える男』が原作となっている本作。
傷を負い、体に負担を掛けながらも一切止まることのないデンゼルの姿はまさに燃える男そのもの。
最後に燃え尽きてしまうのも含め、そのタイトルが当てはまっていることが分かります。
原題も『Man on Fire』(原作小説のタイトルのまま)であることから『マイ・ボディガード』というのは微妙なのではないかと思ったり……
とはいえ、『燃える男』ではダサいし『マン・オン・ファイヤー』では掴みどころがありません。
あらすじありきで映画を見る人の方が多い、日本色が出たタイトルなのでしょう。
作品の質は変わりませんし、見ごたえたっぷりのサスペンス・アクション映画でした。