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【レビュー】E.T.(ネタバレあり)

名作映画というと何度見ても楽しめるものです。

そんな中でも老若男女に今なお親しまれているスティーヴン・スピルバーグ監督作品が、今回レビューする『E.T.』です。


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本作、十数年あまり見ていなかったにも関わらず、去年の「午前十時の映画祭 Final」で1回、コロナ禍による再上映で1回、そして昨日のBS放送で1回と、およそ1年の間に立て続けに3回も見てしまいました。

しかし、その面白さは全く薄れることがなく、毎回涙腺を緩ませてくるのですからこの作品は凄いです。

 

"E.T."と初遭遇する時のドキドキ、彼がどこから来たのか訪ねるとそっと空を指差すワクワク。

いつ、どんな時に見ても童心に帰らせてくれるのはなんと素敵なことか!

 

"E.T."に遭遇するのは、中盤までエリオットら子供たちだけというのもいい展開です。

大人には頼ることのできない環境で、彼らが手探りで"E.T."の正体や今後どうしていくのかについて悩んでいく姿は堪りません。

子供の頃は、エリオットと同じ目線で楽しんでいましたが、今ではエリオットたちの姿をほほえましく見守る立場で楽しめるのがこの作品の名作たるゆえんなのでしょう。

余談となりますが、私の涙腺ヤバいポイントは、やはりラストシーンになります。

けれど、エリオットと"E.T."が別れを惜しむシーンはまだ泣く所ではありません。

ではどこかというと、"E.T."が宇宙船で虹をかけて飛び去った後をエリオットが見上げるシーンです。

つまりはラストもラストのシーンとなります。

あのシーンで私はエリオットの成長を感じるんです。

涙も流さず、ただじっと上を向く姿。そこには、冒頭で兄の友人たちにイジメられていた弱々しさはありません。

「こうしてエリオットは成長して行くんだな」と考えると当然ウルッと来てしまいます。

 

こうして見ると本作は"E.T."によってエリオットとその兄妹たちが成長する物語でもあるわけです。

特に兄マイケルの成長は著しく、初めは弟をイジメていたのに、弟のために"E.T."の秘密を守り、"E.T."を星へ帰すという願いを聞き届けていました。

最初は「なんてイジワルな兄なんだ!」と憤りを感じましたが、途中からは応援せずにはいられないキャラクターとなっていました。

 

こうしたように、子供の扱いが非常にうまいのがこの作品の良いところです。

どういう風にうまいかと言うと、野暮なことをしないことです。

普通、子供といったら何かあれば親に相談したくなるもの。

それは本作なら"E.T."の存在を明かすことに当たります。

そうなればたちまち"E.T."と引き裂かれるのは必然です。(本作でそうなるシーンはありますし)

そのため、彼の存在は秘密にしないといけないわけなのですが、エリオットはもちろん、お調子者の兄マイケルも、おしゃべりな妹ガーティも、それを明かすことはしません。

若干、危ないシーンもありますがミラクルで回避されるなど、子供に野暮な行動をさせない作りになっていました。

それはそのまま、キャラクターを好きになれることにもつながっていたのは言うまでもないでしょう。

 

逆に、野暮な行動を取るのが大人たち。

エリオットたちの敵となる大人は顔が映されないようにされているのは、"E.T."の秘密がいかに限られた範囲なのかを意識させました。

とはいえ、最後には敵となっていたキーズも顔が映され、"E.T."を笑顔で見送っていたのが印象的。

誰しも昔は子供だったわけですし、"E.T."とエリオットの関係を見て、童心を思い出したことを感じさせていました。

野暮であっても悪人ではないのが大人というのが伝わってくる描き方でした。

 

そして、これら全編を彩るのがジョン・ウィリアムズによる音楽です。

幻想的でありながら希望を感じさせるスコアの数々は、間違いなくこの作品を2倍にも3倍にも素晴らしいものにしていたと言えます。

美しい映像との調和は、それだけでも鳥肌もの。

何度見ても楽しめるのは、こうした映画らしさがあるからなのでしょう。

 

間違いなく名作と呼ぶにふさわしい出来映えである本作。

久しく見ていない人がいれば、ぜひとも再び見てもらいたいです。

人生経験と共に美しさが変わる体験は、未知との遭遇のようにワクワクすることでしょう。