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【レビュー】ゾンビ・サファリパーク(ネタバレあり)

数多くのゾンビ映画が存在する現在、ゾンビは一種の娯楽とも呼べるかもしれません。

そんなゾンビ=娯楽に結びつけた設定を見せているのが、今回レビューする『ゾンビ・サファリパーク』です。


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ストーリー
ウイルスによりゾンビパンデミックが発生してから10年後。
勝利した人類は復興を果たし、ゾンビはビジネスの道具として使われるようになっていた。
中でも人気を博しているのが"リゾート"社がおくる、バカンス島に生き残っているゾンビを撃ち殺すツアーであった。
パンデミックで父を亡くし、その出来事がトラウマとなっているメラニーは、それを乗り越えるため、恋人ルイスと共にツアーに参加する。

 

感想

タイトルから溢れ出るB級映画臭と「ありそうでなかったゾンビ版ジュラシックパーク」という謳い文句に釣られて鑑賞。
うーん、悪くはないのですがゾンビ映画としてはイマイチです。というか、見てる途中に思い出したのですがこの作品1回見てました。それも劇場で。(余談ですが、渋谷のヒューマントラストシネマでしかやっていなくて、東京に居たのでわざわざ見に行った思い出)
それなのに忘れていたことからも察せられると思いますが、特徴があまりありません。
数で押してくることと、不意打ちしか攻撃方法のないゾンビたち。死ぬために用意されたかのような薄味の登場人物。エロなしグロなし斬新な殺し方なしのサバイバル。
とにかく味気なくて記憶に残らないんですよね。

 

私が釣られた「ゾンビ版ジュラシックパーク」という謳い文句は確かに生かされていました。
テーマパークにしたゾンビの狩場がシステムエラーで壊滅するという形で。
つまりは、システムエラーでゾンビが解放されてからはただのゾンビ映画なわけです。
そこへ、上に書いた味気なさがくるわけですから、大して面白くなる要素とはなり得ませんでした。
まあ『ジュラシックパーク』は恐竜が出るから人気なわけで……それをゾンビにしたらただのゾンビ映画ですよね。

 

と、ここまで見ると酷評に見えるかもしれません。なので、良かったところもご紹介。
まず、登場人物が薄味と書きましたが、唯一アーチャーだけはいいキャラしてたと思います。
ミステリアスで銃の名手、ゾンビから逃げるだけの寄せ集めのチームを引っ張るリーダー的存在は、本作をいくらか面白くしていました。
ただ、あまりにもミステリアスすぎてなんであの場にいたのかもよく分からんし、何がしたかったのかもよく分からんキャラとなっていたのは困りものでしたが……
なんにしても、主人公を除いての最強キャラってロマンがありますよね。

 

そして、本作で最もオリジナリティがあってよかったのが、"リゾート"社の裏でした。
本作を見ていたらきっと誰もが思うであろう疑問「ゾンビが尽きたら閉演になるじゃん」に答える裏工作は、辻褄もあっていましたしよく考えられているなと思いました。
で、その具体的な内容なのですが、ゾンビパンデミックによって住む場所を失った難民をゾンビに変えているというものでした。
メラニーに「難民には誰も目を向けないのね」というセリフを言わせていることからも、難民問題に対してメッセージ性を持たせていたことが感じられました。
また、"ゾンビ"の語源が"ザンビ"であるという話題を入れていたり("ザンビ"はコンゴでは「生ける魂」を表しており、奴隷制により死んだ魂となってしまったことから"ゾンビ"という言葉が生まれたのだとか)、人はいずれか死ぬのに死者であるゾンビを殺すのは倫理的におかしくないか、という会話があったりと、設定の割にまじめな作りであったのが印象的です。
ゾンビ映画にも関わらず、エログロがなかったことからも、あくまでやりたかったのはシリアスだったのかもしれませんね。
そもそもタイトルも原題は『THE Resort』と、至って真面目。勝手にサファリパークにしたのは日本です。

とはいえ、ゾンビ映画好きが求めているのはおそらく、ツッコミどころの多いB級感満載の作品でしょう。
そうした期待に少しでも応えようとした結果が、タイトルの「サファリパーク」で謳い文句の「ゾンビ版ジュラシックパーク」なのでしょう。

 

冒頭にも書いたように、ゾンビ映画としてはイマイチに感じられた本作。
しかし、社会問題を取り入れてきたのはなかなか面白い作品だなと思いました。