【レビュー】ドクター・ドリトル(2020)(ネタバレあり)
一度根付いたイメージというものを覆すというのはかなり難しいです。
『ドクター・ドリトル』と聞くと、エディ・マーフィーが現代のアメリカで動物たちとコミカルなやり取りをするイメージがついています。
とはいえ、彼が出演しているのは(ナンバリングのついている)シリーズ5作中最初の2作だけです。
それでも彼のイメージが強いのは、純粋に作品が面白く記憶に残るからなのでしょう。
今回レビューする『ドクター・ドリトル(2020)』は、そんなイメージを払拭するべく、主人公のドリトルにアイアンマンのイメージがついたロバート・ダウニーJr.を起用した作品です。
ストーリー
動物と話せる能力を持つドクター・ドリトルは、過去にヴィクトリア女王の命を救い、動物たちと暮らせる保護区を得ていた。
しかし、妻リリーを海難事故で失い、保護区から彼が出てくることはなくなってしまっていた。
ある日、ヴィクトリア女王が病床に臥してしまった情報を聞いたドリトル。
初めこそ断っていたものの、保護区が解体される危機だと知った彼は、偶然知り合った少年トミーと共に、治療薬を探す旅に出る。
感想
海外で公開され、結構な酷評を受けていたことを聞いていました。
とはいえ、中身は王道ファンタジー。
ハードルが下がっていた分、そこまで悪い作品でもなかったと思います。
やはり見所であったのは、ロバート・ダウニー・Jr.演じるドクター・ドリトルでしょう。
髭ボーボーの引きこもりスタイルで初登場してきた時は何事かと思いましたが、さすがにそのまま冒険に出たりはせず、髭を剃ってスッキリしてきたのでホッと一安心。
とはいえ、過去に妻を失って引きこもりだったこともあってか、人付き合いは良くない印象を受けました。
傲慢で皮肉屋、マイペースというのは、良いのか悪いのか『アイアンマン』でついたイメージとピッタリでした。
とはいえ、演じるロバートの演技力が高かったことは事実。
"動物語"を駆使するだけでなく、体でその動きを真似ていたり、コミカルなリアクションを取ったりと、どこか『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウを彷彿とさせる演技を見せていました。
で、本作以外であったのがこの"動物語"です。
エディ・マーフィー主演作では超能力のような扱いであったのが、本作ではひとつの言語として扱われていました。
しかしこれは、原作小説の通りなんだとか。
原作通りなのに違和感を覚えさせるのですからエディ・マーフィー主演作でついたイメージはすごい影響力だとつくづく思いましたね。
また、トミーも少しずつ"動物語"を話せるようになっていっており、なんだかドリトルのアイデンティティーが揺らいでしまっている気がしました。
原作準拠といえば、時代設定にもあります。
原作シリーズは1830年代後半~40年代前半なんだとか。
本作も同じくヴィクトリア女王が登場するヴィクトリア朝時代のいずれかです。(正確な時代は明記されていなかったハズ)
この時代設定のおかげで大海原への船の旅にドリトルが出ることとなったわけなのですが、これがまたあまりよくなかったのではないかと思います。
現代を舞台としていたエディ・マーフィー版と比べるととっつきづらいんです。
あちらの作品は、現代で動物たちが話していそうなことを「動物あるある」を交えつつコミカルに描いていましたからね。
そうして見ると、本作はアドベンチャーをメインに据えていたのもネックとなっていたように思えます。
これによって、動物たちを冒険の相棒に据えたシリアスな展開を主体にする必要がありました。
その結果、なんだか動物を人間に置き変えても問題なさそうな作りとなっていたように思います。
ゴリラやシロクマ、オウムが登場するものの、人間味が強く野生さもないため、ほぼ人間と変わりがなかったです。
虎と戦えたり、水中で活動できたりは動物ならではですが、これまた過去シリーズと比較すると動物の特徴は生かせていなかった気がします。
後、CGはやはり初っぱなは、滑らかすぎる動きに違和感を持ってしまいますね。
まあ、後半くらいになると慣れるので悪いことではないと思いますが、動物感が薄いと感じるのは、こういう所もあるのかもしれません。
どうしても過去シリーズと比較をしてしまい、思い出補正があるからか「昔の方が~」となってしまいました。
とはいえ、冒頭にも書いたように、ハードルを下げて見ると普通に楽しめる王道アドベンチャーでもありました。
気楽に楽しめるという点では、今も昔も変わらない万人向けの作品でした。