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【レビュー】ヒューマン・キャッチャー(ネタバレあり)

たいてい、モンスターの登場する続編作品は、モンスターが新たな能力を見せてきたりするものです。 今回レビューする『ヒューマン・キャッチャー』も例に漏れずそのパターン。 新たな能力と新たな一面によって、我々観客を楽しませてくれます。
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ストーリー

23年ごとに23日間、復活するモンスターがとある田舎に現れる。 その22日目。農場を管理しているタガートは次男をモンスターに連れ去られた。 23日目。バスケットボールチームを乗せたバスがパンクし、道路上で立ち往生してしまう。 そこへモンスターの魔の手が迫る。 一方、モンスターに復讐を目論んでいたタガートは、バスからの救助要請を聞きつけ現場へ向かう。

感想

タイトルこそ『ヒューマン・キャッチャー』ですが、『ジーパーズ・クリーパーズ2』である本作。
シリーズ2作目なのに、1作目、3作目と比べるとなかなか鑑賞するのが難しいし作品です。
それでもなんとかレンタルショップで借りて視聴。
見てみると、意外と面白いじゃないか!
前作のホラーテイストな作風とは異なっているものの、犠牲者を増やしたホラー展開とモンスターと戦うエンタメ展開の融合は、盛り上がりという点だけで見れば前作以上でした。
バスが吹っ飛んだり、乗用車が爆発したり、怖がらせるよりも楽しませることに特化していたのが本作の利点と言えるでしょう。



これだけ聞くと、前作とのつながりが無いように思われるかも知れませんが、そこもしっかりと網羅。
前作から数日後を舞台にしているため、作中に殺されてしまったダリーがちょい役ながらも再登場していたり、彼らの事件がニュースで報道されていたりと、世界観が確実につながっていることを感じさせる粋な演出がありました。



そして、最もつながりがあるとすればシリーズの看板でもあるモンスターです。
本作でも結局その正体や名前は分からずじまいですが、その暴れっぷりは健在。(便宜上、クリーパー呼びとします)
コウモリの翼を使った空からの攻撃を主軸に、今回からは手裏剣やナイフの投合で人間の機動力を奪うなど、なかなかこすいマネをしていました。

こうした、クリーパーの新たな一面が見られたのも楽しい点でした。
前作ではほぼ一方的な戦いであっただけに見られなかった回復力が見られたのが個人的には収穫。
抉られたグロい顔をアンパンマンよろしく自分で引きちぎって取り替える描写は、スプラッター映画好きには堪りません。
前作では(おそらく)全て特殊メイクでモンスターの造形を作っていたのに対して、今回はCGを取り入れていたのが印象的。
前作がヒットして予算が増えたからなのかなぁ……としみじみ。

そんな自由度が増えたからか、クリーパーも虐殺を楽しんでいる様子でした。
バスの中のターゲットを選別するのに「お前じゃなくて後ろのやつ」みたいなジェスチャーをする愛嬌。
食べた分だけ命があるという体質を生かして(?)、バスに突進して死ぬというはっちゃけすぎた謎の行動。
ミステリアスだけどユーモアたっぷりな性格は、前作以上に魅力的でした。



惜しかった点があるとすれば人間側です。
農場を営むタガートと、バスケットボールチームの二つの視点で多くの登場人物が現れるため、誰がメインキャラなのか分かりません。

最初は、バスケットボールチームのスコッティという男かと思いましたが、コイツはシーンが多い割にドが付くほどのクズ。
人を犠牲に自分が生き残ろうとするやつでした。
次に出番が多いのが'D'ことデイヴィス。
スコッティから黒人差別をされてもちゃんと助けようとする聖人のようなやつ。
黒人差別をする自己中白人男が死に、聖人のような黒人男が生き残るのは、何気に社会的なメッセージを感じたり……

何かしらクリーパーの秘密を知っていそうで、大した解決策を生み出さないのがチアリーダーとして居合わせたミンシー。
特に大きな活躍もせず、モンスターの設定のメッセンジャー的存在だったので主人公からは程遠いのかもしれません。

主人公ばりに活躍するというならタガートです。
ただ、ちゃんと活躍するのは後半からで、登場シーンで言うとちょっと物足りないかなという感じ。
「息子思い」という以外にキャラも掴めなかったですしね。

このように、誰に感情移入したらいいのか分からないというのは少し残念。
前作は、トリッシュとダリーの姉弟だけというシンプルな分かりやすさの方が良かったですね。



前作から数日後と、ほぼ直後からのスタートとなっていた本作。
要素の引き継ぎなんかもしっかりとしていて、なかなか楽しめました。
前作同様、製作総指揮にフランス・フォード・コッポラが携わっているのが影響を与えていたのでしょうか?
とりあえず「さすがコッポラ」とでも言っておけば通っぽく聞こえるでしょう。