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【レビュー】シンプル・フェイバー(ネタバレあり)

安請け合いをしてしまい、損をしてしまうということは珍しくありません。
大抵の人はその場合、後悔し、二度と安請け合いはしません。
しかし、中にはズルズルとその安請け合いを続けてしまう聖人のような人間がいます。
そんな変り者を主人公とした作品が、今回レビューする『シンプル・フェイバー』です。

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ストーリー

夫を事故で亡くしたステファニーは、一人息子のマイルズを育てつつ、動画サイトへ生活の知恵を投稿するシングルマザーであった。
ある日、マイルズと同じ小学校へ通っているニッキーを預かったことから、エミリーと仲良くなる。
それを期に、ステファニーは仕事で忙しいエミリーのためにニッキーの迎えを代行するようになった。
しかし、ある時を境にエミリーは失踪してしまう。

感想

この作品、実は公開当初映画館で鑑賞しました。
しかし、電車遅延によって冒頭10~15分ほどがガッツリ見られなかった心残りのある作品でした。今回は、その心残りを解消する目的もあって鑑賞。

で、冒頭10~15分は予想していましたが、大したことは起こっていないんですよね。
やっていることとすれば、ステファニーが動画でエミリーと出会った経緯をざっくり説明するのと、マイルズの学校のママ友たちと会話をするくらい。
とはいえ、本作はこの2つの要素が大切でした。
動画はそれまでの状況整理をさせるのと同時に、今時の主婦らしさを演出する効果がありました。
動画で得た情報が事件解決の一端を担っていたりと、子育てママで移動があまりできないステファニーの足となっていたのも印象的です。

ママ友(主夫も含む)関係はシンプルにステファニーの引き立て役として重要でした。
ステファニーを見て「あの人あんな性格だったっけ?」とリアクションを取らせたり、エミリーの事件に手助けをさせたりと、ほどよい距離感で自由に動かしていたと思います。



そんな本作のメインストーリーは、エミリーの失踪です。
ただこれ、劇的な展開もなければそこまで意外性のあるラストでもなく「普通に楽しめるかな」程度。
最大の謎であるエミリーの壮絶な過去も第三者から口頭で聞くだけと、全体的に淡々と事実が並べられていく印象がありました。
むしろ、面白いのはステファニーとエミリーの関係です。
初めは、ステファニーがエミリーに対して憧れを勝手に抱き、エミリーは面白半分にステファニーをイジって利用するだけでした。
しかし、そのエミリーの面白半分なイジリによってステファニーが成長。
やがてはエミリーを追い詰めるようになるのですから面白いです。
終盤での、エミリーが教えた「簡単に謝らない」をステファニーが彼女自身に対して実践するのはいいユーモアでした。
そうしたユーモアは二人の会話シーンにも。 世間話や家族の話、下ネタなど、エッジの効いた内容は思わずニヤリとしてしまうようなユーモアがありました。 また、彼女らが話すシチュエーションも特殊。 エミリーの家の豪華なキッチンで、マティーニを作りながら話し、酔いを回して赤裸々な告白へと至るという流れはセレブ特有の優雅さ。 そこへ、エミリーのユーモラスな性格が垣間見えるのですから、ステファニーが心を許してしまうのも頷けます。むしろ、羨ましい友人関係にさえ見えてしまうほどです。 事件に大きく関わるシーンではないものの、作品の面白さとしては不可欠なシーンだったと言えるでしょう。
もちろんこうした面白さは、演者が良かったから成立する話でした。
ステファニーを演じた、アナ・ケンドリックのチャーミングでありながらもセクシーな魅力は、成長し深みを増していくステファニーのイメージにピッタリ。
対するエミリーを演じたブレイク・ライブリーもミステリアスで可憐な女の役にピッタリ。恐ろしいほどの悪女と判明しても納得できる怪しい魅力をまとっていました。



現代要素を取り入れて、主婦を探偵に仕立て上げていた本作。
等身大の主婦を主人公におくことで、感情移入しやすくなっていたのが面白さにつながっていたと思います。
この設定なら色々なパターンで事件解決に導けるため、ドラマ化なんかもいけそうですね。