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【レビュー】ナイアガラ(ネタバレあり)

「ナイアガラの滝」といえば、日本でも有名な観光名所ですよね。
今も昔も愛されるのは、その雄大な自然が感じられるからなのかもしれません。
そんな「ナイアガラの滝」の雄大さを生かした映画が、今回レビューする『ナイアガラ』です。

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ストーリー

ナイアガラの滝を臨むロッジに訪れたカトラー夫妻。
二人はそこで、ローズとジョージの夫妻に出会う。
ローズいわく、ジョージは従軍したことにより精神を病んでおり、その静養のためロッジを訪れていた。
ある夜、カトラー夫妻はジョージがロッジ客の前で暴れるのを目撃し、彼をなだめる。そこでローズに出会ってからの彼の追い詰められた境遇を知った。
その数日後、ジョージは行方をくらませる。しかし、カトラー夫妻に奇妙なことが起こり始める。

感想

モノクロ映画からカラー映画が主流になり始めた頃。そんな1953年に公開されたこの作品。
「カラー映画万歳!」とでも言いたげな映像には、時代を感じさせ、なんとも面白い装いでした。
なんといっても目玉はナイアガラの滝です。
遠くからであったり、近くからであったり、時には真下、ラストには滝上からという、バリエーションに富んだアングルは、タイトルに偽りなしの豪華な映像でした。
また、状況が悪化することを滝つぼに落ちることに例えるといったユーモアも見せていて、本編中ずっと滝を忘れられない構成になっていたのは印象深かったです。

もちろん、事件にも滝が関わっています。
例えば、カトラー夫妻がローズの不倫現場を展望スポットで目撃したり、死んだと思われていたジョージが滝の水しぶきに紛れて現れたりといった感じ。
滝から人が落ちるという衝撃的な展開もあり、雄大な美しさも人のちっぽけさを強調する残酷さも、滝の持つ姿の全てを描いていました。



とはいえ、当然ながら滝はただそこにあるだけの自然の産物。
サスペンスを起こすのはいつだって人間です。
本作で言えば、マリリン・モンロー演じるローズが問題でした。
夫を殺して間男との逃避行をしようという考えは、昔のサスペンス映画のイメージそのまま。
やり方も滝に呼び出して殺そうという、実にお手本のような展開でした。 しかし、そこで間男が殺されて夫ジョージがローズを殺そうとするのですからひと味アクセント。
間男が死んだのを明確にせず、ジョージが亡霊のように現れる展開には驚かされました。ああした、鑑賞してる私たちに向けての演出があったのも面白かったです。



本作は冒頭にも書いたように、カラー映画が取り入れられて割と早い段階の作品です。
そのため、サスペンスの核ともなっている"人"においてもカラー要素が生きていました。
例えば、登場人物全員が着ることになるカッパなんかも女性は黄色、男性は黒といった感じで見栄えがあります。
他にも寝間着姿や私服、パーティードレスに水着など、衣装の変化も多く、色とりどり。
中でも、マリリン・モンローの着るピンクのパーティードレスは作中でもインパクト大。
彼女の美しい金髪もあって、カラーに映えに映えていました。
マリリン・モンロー初のカラー映画ということもあって、気合いが入っていたのでしょう。(本作が彼女の知名度をよりたしかなものへとしていったというエピソードもあります)



ナイアガラの滝を舞台に、痴情のもつれを描いていた本作。 カラー技術の躍進もあって、ナイアガラの滝の雰囲気を存分に堪能できるのは素晴らしい体験でした。