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【レビュー】イップ・マン 序章(ネタバレあり)

中国武術には歴史があります。
その起源は、紀元前220年まで遡るとも言われています。
そんな中国武術を語る上で無視できないのが詠春拳です。
今でも香港映画やハリウッド映画のアクションシーンで取り入れられていることからもその知名度が高いことが分かります。
今回レビューする『イップ・マン 序章』は、その詠春拳を世に広く知らしめた武術家のひとり葉問の姿を描いた作品です。

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ストーリー

1935年、広東省佛山は武術の街として多くの武術館が開かれていた。
そこで暮らす詠春拳の達人イップ・マン<葉問>は、腕は確かながらも弟子を取っていなかった。
ある日、街に道場破りのカム・サンチャウが現れ、道場主たちを次々と倒してしまう。
やがてイップ・マンの元にもカムは現れるが、彼の詠春拳を前に手も足も出なかった。
街での評判をさらに挙げたイップ・マンは、一躍時の人に。
しかし1938年、日中戦争が勃発し、佛山は日本軍に占領されてしまう。

感想

今となってはハリウッド映画でも活躍を見せる俳優ドニー・イェン
私が彼の存在を初めて知ったのが本作でした。
そうして彼に惹かれたのは、本作で彼が演じたイップ・マンという男はとても素晴らしい人だったからです。
武術の達人にして愛妻家、どんな時でも冷静で人を思いやる人格者。
そんなイップ・マンのイメージにピッタリと当てはまるのがドニー・イェンであったわけです。
特にあのスマイル!
強いのにあんな優しそうな表情が出来るというのはズルいですよ。
彼の演技を通して、イップ・マンという人物に対する好感度が上がりましたね。



本作におけるドニー・イェンのもうひとつの魅力が詠春拳です。
詠春拳が何かよく知らなかった私でも彼の構えと動きを見ればその強さを感じられました。
攻撃と防御どちらも併せ持ったスピーディーな連続技は、見ているだけでも爽快。
武器を使った戦闘なんかもあって、満足度の高いアクションを楽しむことができました。

さらに面白いのが、イップ・マンが相手取る敵もなかなかの手練れだということ。
前半には様々な中国武術の流派とぶつかり合い、後半には日本軍の空手家たちとの異種格闘戦を見せる白熱の戦いは見ごたえ十分でした。
さらに、道場主や道場破りのカム、日本軍の三浦閣下など、登場人物の個性が強いのも戦いに見栄えを与えていました。
名前のないモブ相手でも10人抜きという盛り上がりなんてのもあって、終始退屈させない戦闘シーンでしたね。



そうした戦闘シーンが素晴らしい作品ではありますが、ストーリーも素晴らしかったです。
中でも良かったのが、中国人の誇りをイップ・マンが守り通していた事。
日本人に媚びる人間もいる中で、自身の武術と誇りを守り通す彼の姿は偉大な武人だということを感じさせます。
また、そうした姿を説教めいたことを言わず、行動で示すのですからカッコいい。
日本人から見ても尊敬するべき人間だと思わずにはいられませんでしたね。



人格者であるイップ・マンの強さと気高さを描いていた本作。 そこにドニー・イェンの演技、アクションが加わることで、映画としての見ごたえもしっかりとありました。 何度見ても楽しめる名作ですね。