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【レビュー】イップ・マン 継承(ネタバレあり)

前作『イップ・マン 葉問』から5年。
香港で生きるイップ・マンのその後を描いたのが今回レビューする『イップ・マン 継承』です。
主演ドニー・イェン、監督ウィルソン・イップによるシリーズ3作目となります。

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ストーリー

1959年香港。
詠春拳の達人イップ・マンは、武館を営みながら妻ウィンシンと息子チンと共に穏やかな暮らしをしていた。
しかしある日、地上げ屋たちがチンの通う小学校を潰すために校長を拉致しようとする。
それを助けたのはチョン・ティンチという男であった。
彼は、イップと同門の詠春拳の使い手であった。

感想

シリーズ3作目ということで、ある程度ファンがついているであろう本作。
それだけに、本編の内容とは別に、ファンに対するサービスが光る作品でした。
まず、ブルース・リー
本編にはなんら関わってきませんが、今回ようやく大人に成長し、アクションを見せてくれます。
「アタッ」とか掛け声をあげながらのアクションはイメージするブルース・リーそのもの。
タバコを蹴り上げ、イップにダメ出しされるだけのアクションシーンではありますが、それでも楽しい時間でしたね。

もう一つのサービスが、今回の悪役フランクを演じたのがマイク・タイソンであったことです。
個人的になのですが、ドニー・イェン(イップ・マン)とマイク・タイソン(フランク)の戦いは、シリーズ4作の中でも最も熱く盛り上がる戦闘シーンだったと思います。
詠春拳vsボクシングの異種格闘技を通して、お互いの力を認めていく展開はなかなかに熱いです。
また、お互いが戦闘スタイルを次々に変えていくのも、死力を尽くしている感じがあっていい感じ。
そこに川井憲次の劇伴が加わるのですからシリーズ最高のアクションシーンと言っても過言ではないアクションシーンになりますよ。
ストーリーとしては「3分間戦って立っていられたら手出ししない」という、なんともあり得ないような展開ではありましたが、アクションがよければ問題なしでしたね。



こうしたサービスが面白かった本作ですが、もちろん本編も見ごたえがありました。
息子チンの通う小学校が地上げ屋に狙われているのを皮切りに、ヤクザたちとの戦闘を見せていたのが印象的です。
雑魚たち11人を人質を取られながらも相手どったりするハラハラした展開や、息子を守りながら雑魚を蹴散らしたりする爽快な戦闘は見ていて飽きない楽しさがありました。
さらに印象的であったのが、ムエタイを操るタイ人との戦闘シーン。
妻のウィンシンを守りながら、狭いエレベーター内や階段で戦う緊迫感は、これまでにない刺激的な戦闘シーンで見ごたえ十分でした。
全体を通して、本作では息子や妻を守りながら戦うシーンが印象的です。



そしてそのウィンシンとの別れが本作の泣ける所でした。
アクションメインな本作ではありますが、二人きりで楽しく過ごすシーンは欠かせないものであったと思います。
最後のシーンでは、1作目から本作までの二人の歩みを回想するシーンがあり、彼女の存在がイップにとっていかに大切であったかを描いていました。
シリーズファンとしては、グッとくる展開ばかりでしたね。



そんな本作のラストバトルとなるのが、イップ・マンとチョン・ティンチによる詠春拳vs詠春拳です。
こん棒から始まり、短刀、素手という詠春拳の限りを尽くしたぶつかり合いは盛り上がる展開でした。
チョンを演じたマックス・チャンもドニー・イェンと同じく、アクション俳優であるだけに、レベルの高い戦闘を見られるのは非常に満足度が高かったですね。

この戦いに至るまでに、チョンは同じ詠春拳の師でありながらもイップ・マンとの扱いの差に悩み苦しむという姿を見せていました。
そうした人間味溢れる姿を見ていると、ひとえに敵だとは思えない魅力的な相手でもあったと思います。
前2作とのラストバトルとは異なり、イップがトドメを刺さなかったのもそうした理由があるからなのでしょう。
彼の活躍は、スピンオフ作品『イップ・マン外伝 マスターZ』で見られるので、そういう意味でも恵まれたキャラクターでしたね。



妻ウィンシンの死であったり、詠春拳vs詠春拳という集大成のような展開を見せていた本作。
とはいえ、物語は4作目の完結につながっていきます。