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【レビュー】ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋

昨今、映画においても男女差別の問題は無視できないものとなっています。
しかし、それを意識しすぎるあまりに、逆に男性が女性よりも劣っているかのような表現がされてしまい叩かれてしまう作品も少なくありません。
そんな男尊女卑、女尊男卑についての映画の在り方を考えさせられるのが、今回レビューする『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』です。

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ストーリー

2019年アメリカ。
国務長官であるシャーロット・フィールドは、チャンバース大統領がまもなく大統領を辞職することを知る。
チャンバースは、シャーロットを後押しすることを約束し、彼女は大統領選に出馬することを決意する。
彼女は、市民からも愛される人物であったが、唯一スピーチにユーモアが足りないことが問題視されていた。

一方、ニューヨークでジャーナリストをしているフレッド・フラスキーは会社が吸収合併されたことを知り、仕事を辞めてしまう。
そんな折、とあるパーティーで子供の頃に知り合いであったシャーロットと再会する。

感想

この作品、存在を知った当初、興味をもって映画館で見ようと思っていました。 しかし、地元で公開しないということで見れなかったんですね。
そんなことで、レンタル店で割と早い段階で借りて見ました。
その内容はどうだったかと言うと……面白かったです。
とはいえ「早く見れる」意外は映画館の利点もそこまでなさそうでしたし、今となっては良かったのかも。

で、具体的に何が面白かったかと言うと、コミカルなラブロマンスでした。 そもそも、前提の設定からしてなかなかにくだらないです。
幼きフレッドが家庭教師であったシャーロットとキスをして勃起してしまった黒歴史があるとか言うんですからね。
しかし、それが二人の再会のきっかけであり、物語の導入なのですから笑うしかありません。
こうした、少し下品でけれどユーモアの利いたネタが多いだけに、ハマる人にはガッチリくる面白さがあったと思います。
話のテンポなんかも小気味よく、個人的には見易く楽しい内容でした。



そんな本作ですが、メインテーマとなるのが、大統領選と二人の恋路の両立です。
大統領選と聞くと壮大に思えるかもしれませんが、ざっくり言うなら公私混同の恋愛が成立するかどうか。共感はできるラブロマンスです。
大統領選のために恋路を諦めるか否かを時にはシャーロットの視点、時にはフレッドの視点から描いた内容は王道的。
一方で、パソコンをハッキングされた映像で脅されるなどのようなあり得ない方法で恋路が邪魔されたりするのが、本作のオリジナリティだったと言えるのでしょう。(ここでもフレッドのオナニー動画が脅迫のネタにされるという下らなさが印象的)
変にシリアスな展開を長々と引っ張らないのは、コミカルな作風に引かれた身としては嬉しい展開でしたね。



本作で最もオリジナリティがあったとすればラストの展開でしょう。
脅迫を受けていたフレッドとの愛を優先したシャーロットが演説中に交際宣言、大統領にも選出されるという万々歳なハッピーエンド。
シャーロットはアメリカ初の女性大統領となり、フレッドはファーストレディならぬファーストミスターとなるのは珍しい展開でした。
とはいえ、女性であるシャーロットが大統領として活躍し、フレッドが夫として公私に渡って妻を支える姿は、作品のテーマとしても、キャラクターの引き立て方としても綺麗にまとまっていたと思います。

こうした展開は、何気なく見ていても気づくくらいご都合主義な展開でした。(演説中に恋人の話をしても大統領になったりとか)
しかし、映画とは本来そんなものですし、なにより本作のコミカルな展開を考えればもとよりフィクションとして楽しむ作品かと思います。
そういう意味では、いい意味でご都合主義だったと言えるのでしょう。



男性を優位にしすぎても、女性を優位にしすぎても失敗となってしまいやすい昨今。 そんな中で、本作はほどよいバランスを保っていたと思います。 アメリカで女性大統領が誕生すれば本作の知名度もまた高まるのかもしれませんね。