【レビュー】ダークナイト(ネタバレあり)
ヒーローものの作品で、必ず登場するのが宿敵です。
そしてバットマンの宿敵といえばジョーカーでしょう。
そんな宿敵が登場するのが、今回レビューする『ダークナイト』です。
ストーリー
バットマンが守る街ゴッサムシティにピエロの姿で悪事を働くジョーカーが現れる。
一方、バットマン(ブルース・ウェイン)は、検察官のハービー・デント、ゴッサム市警のジム・ゴードンらとマフィアたちの資金源を断つべく動いていた。
マフィアたちは、バットマンを消すためにジョーカーを雇い入れる。
ゴッサムシティをも巻き込んだジョーカーの攻撃に、バットマンは少しずつ追い詰められていく。
感想
ノーラン監督バットマンでもシリーズ最高傑作と呼び声の高い本作。
たしかに文句なしの面白さです。
ヒーロー映画(ダークヒーロー)なのに、始まりはジョーカーの暗躍から始まる時点で本作での彼の存在の大きさが感じられました。
しかも、銀行強盗の仲間の一人として紛れ込んでいるという、なんともジョーカーらしい行動は作品の掴みとしてバッチリでした。
本編で印象的なのが、やはりハービー・デントの存在です。
前作では、バットマン(と協力者のゴードン)しか歯向かう者がいなかったゴッサムの街に、汚職に染まらず、暴力にも屈しない正義の象徴のような存在として君臨する姿はカッコイイ!演じるアーロン・エッカートの甘いマスクとセクシーな顎がまた魅力的でした。
しかも、ハービーは、ブルースの幼馴染であるレイチェルの恋人にもなっており、ますます無視できない存在に。
ブルース(バットマン)が、ハービーの正義感や人柄には好感を持っているのに、素直に応援できないというのは、なんとも煮え切らない状況でした。
そんな恋愛沙汰をさせないのがジョーカーです。
彼の仕掛ける"ゲーム"は本当にいやらしいものばかり。
「バットマンが正体を見せない限り1日1人殺していく」というゴッサム市民全員を人質に取った行動は悪党そのものです。
けれど、その自分で戦わずしてバットマンを追い詰めるという手腕は的確なのですからおそろしい。
特殊な技能や力があるわけでもないのに、多くの悪党を従え、常に先を行く、自由奔放な狂気には得も言われぬ魅力がありました。これが悪のカリスマというやつなのでしょうね。
他にも、ハービーとレイチェルを助けようとするバットマンに場所を逆に教えたり、フェリーに乗ったゴッサム市民に命の駆け引きをさせるようなゲームを見せていました。
ただ人の命を弄ぶようなゲームではなく、人の本質的な弱さをつつくような絶妙なゲームだからこそ、一概に「悪党の娯楽だ!」と否定できない魅力があったのかもしれませんね。
で、ジョーカーの魅力として語らないでいられないのが演じたヒース・レジャーの演技力の凄さでした。
恐怖を煽る狂気に満ちた言動の数々は、まさに怪演と呼ぶしかありません。
バットマンの宿敵として、クリスチャン・ベールに引けを取らない貫禄の演技であったのも素晴らしかったです。
作品のクライム要素をより深いものとする、高く評価されているのも納得の演技でした。
このように、前作以上にキャラクターが立っていた本作。それがタイトルでもある『ダークナイト』につながっていたのが、シリーズ最高傑作である理由でもありました。
そのキーパーソンとなるのがハービー・デントです。
彼は「光の騎士」として、素顔のままゴッサムシティを守る象徴として君臨していました。
しかし、ジョーカーの罠によって復讐鬼トゥー・フェイスに変貌してしまいます。
ハービーの正義の行動を無駄にしないためにもバットマンは自らが殺人犯となって「光の騎士」を守ることを決意。
そんな彼の行動を指してゴードンは、彼こそが「闇の騎士」(ダークナイト)だと称していました。
こうした、登場人物の粋な行動とタイトルの回収が実に素晴らしかったです。
「ゴッサムシティをより良い方向に導く」という、バットマン(ブルース)の意志もしっかりと感じられ、続編としてもしっかりと成り立っているのがまた良かったと思います。
悪の道へ落ちてしまうハービーもバットマンを「法に縛られずに行動できる者」として必要だと感じ、自らジョーカーをおびき寄せるエサになったりと、彼の正義感描いているのが、好感の持てるキャラクターとなっていました。
また、レイチェルの死を初め、裏切りや不信感が彼が悪の道へ落ちていく過程がしっかりとしており、トゥー・フェイスに変貌するのも納得でき、嫌いにはなれないキャラでしたね。
ゴードンやフォックス、アルフレッドなど、前作に登場したキャラクターもより魅力的となっており、ノーラン版バットマンの世界観をより強固で見ごたえのあるものにしていたのが面白さにつながっていたと思います。
キャラクターの個性、絡み、思惑……それらが複雑に絡み合いゴッサムシティの人々の運命を左右する状況を作り上げるストーリーの緻密さには脱帽でした。
そうした緻密さは、複数回見ても新鮮味を失わず、新たな発見があるぐらいです。
しかし、本作を侮れないのはアクションシーンを取っても複数回見て飽きさせない面白さがあることでしょう。
肉弾戦はもちろんなのですが、様々なギミックを使い、不殺で敵を倒していくバットマンのカッコよさは健在でした。
さらに目を引いたのがカーチェイスです。
中でもハービーを襲撃したジョーカーをバットマンが追跡し始める一連のシーンは見ごたえ抜群!
バットモービルによるド派手な登場、モービルからバットポッドへパージする驚きなど、盛り上げ上手な演出にくぎ付けになりました。
そこに、ハンス・ジマーの重厚な音楽が合わさればテンション爆上がり。
何度見ても盛り上がることのできるアクションシーンを見事に作り上げていました。
バットマンのアメコミらしさを残しつつ、これまでにない重厚なストーリーを作り出していた本作。
何度見ても新たな発見があり、楽しめる内容は、名作と呼ぶにふさわしい作品だと思います。