【レビュー】インターステラー(ネタバレあり)
ストーリー
近未来。地球は異常気象によって作物が育たなくなっていた。
元技術者であったクーパーは、父親と息子トムと娘マーフィー(マーフ)と共に苦労をしながら暮らしていた。
ある日、家に起きた怪現象がきっかけでクーパーはNASAに所属するブランド教授とその娘アメリアに会う。
NASAは地球が寿命を迎えており、"彼ら"が宇宙に作ったワームホールを使い、別の惑星に移住する必要があると判断をしていた。
クーパーはその計画の飛行士として計画への参加を促されるのであった。
感想
(おそらく)私がノーラン監督の作品を初めてIMAXで見たのがこの作品でした。
そんな感動もあってか、当時は「映像すごい!」という感動ばかりが前に出てきていました。
たしかにそれはテレビで見た今回も変わらず感じることで、トウモロコシ畑を突っ切るトラックの非日常感や宇宙へ飛び立つロケットの迫力、美しい宇宙の風景、個性的な特徴を持つ惑星の姿などなど、視覚的に楽しめることに間違いはありませんでした。
しかし、今回テレビで見たことによって感じたのはストーリーの奥深さでした。
まず、声を大にして言いたいのは、文系でも分かったつもりになれるSF映画を作れるすごさについてです。
私は宇宙のあれこれについてなんて、小学生~中学生くらいの知識しか覚えていません。
けれど、本作を見ているとなんとなく地学や物理学に詳しくなった気になれるんですよね。
特に「ガルガンチュア」(ブラックホール)の説明の辺りなんて、ろくに知識がないのにそのロマンにワクワクさえできてしまいます。
文系だろうが理系だろうが関係なく、作品の世界にグイグイと引っ張り混んでいく分かりやすさは、見ていても楽しかったですね。
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こうした世界観への入り込める理由は、目的がしっかりと定められていたからだと思います。
荒廃した地球のから人類を脱出させるか、あるいは新たな命を他の惑星に定住させるかの二択の可能性を探るための宇宙旅行というのはなんともとっつきやすいです。
そのためにクーパーが娘マーフ(と息子トム)との別れを天秤にかけなくてはならないという葛藤は、共感しやすいテーマでもありました。
SFな内容でありながらも、登場人物の感情を深く掘り下げたストーリーは、それだけでも感情移入して熱中できる魅力があったわけです。
その登場人物の葛藤として面白かったのが、氷の惑星にいたマン博士の存在でした。
彼は、惑星探査の計画の発案者であるにも関わらず、偽のビーコンでクーパーたちを呼び出すという取り返しのつかないことをしていました。
しかし、彼が悪人かと言うと私にはそうとは言えません。
なぜなら、彼は初めから人類を見捨てていた訳ではなく、自身の星が人類の生存に適さないという事実に絶望したために行動を起こしていたからです。
根っからの悪人でもなければ、クズとも言い難い、むしろ「生きたい」と望む姿は人間らしいとすら言えます。
たしかに、クーパーたちにとっては大迷惑な存在ではありましたが、人間味溢れる彼のことを私は嫌いになれなかったですね。(俳優がマット・デイモンであるのも理由のひとつ)
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この、マン博士のエピソードでも描かれているように、本作は絶望と希望を通して人の身勝手さと自己犠牲が見られました。
人が身勝手になる瞬間、それはマン博士やブランド教授のように、救いがあるという希望が打ち砕かれ絶望してしまう時だと思います。
現に二人は持っていた希望が絶望に変わったことで真実を隠していましたからね。
逆に、自己犠牲ができるのは、希望があるからだと思います。
クーパーはアメリアを生かし、自らは「ガルガンチュア」へ飛び込むという自己犠牲を見せていました。
それは人類存続への希望が残されていたからこその行動だと言えるでしょう。
クーパーの場合、マーフたち子供に対する愛があったからできた行動でもあると言えるのかもしれませんが……
本作において一番大切であったのが、この"愛"でした。
作中、アメリアは恋人であるエドマンズの惑星に不思議な力で引き寄せられている感覚があると語っていました。
そして実際その感覚は正しく、エドマンズの惑星こそが人類の生きることのできる惑星でした。
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クーパーとマーフとの間にも"愛"によって奇跡的なつながりが描かれていました。
何光年も離れた二人が、親子の愛によってその距離を埋める展開は感動的。
五次元空間の構造であったり、"彼ら"の正体がクーパーであったりといった難しい話も感覚で受け入れられてしまう面白さがあったと思います。
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クリストファー・ノーラン監督が初めて宇宙SFに手を出していた本作。
天文学であったり物理学であったりの難しい用語が出るにも関わらず、分かりやすく見させるのはさすがの才能と言うしかありません。
想像力を刺激し、空を見上げたくなる。そんなロマンに満ちた作品でした。