【レビュー】犯罪王リコ(ネタバレあり)
マフィア映画は長い。
そんなイメージがあるのはおそらく『ゴッドファーザー』のためでしょう。(1作目177分、2作目200分、3作目161分)
とはいえ、他の作品『アンタッチャブル』(119分)、『ヒート』(171分)、『アイリッシュマン』(210分)などを見ても長くなる傾向があるのは確かだと言えます。
時代背景と共にマフィア間の抗争なども描いていれば当然なのかもしれません。
今回レビューする『犯罪王リコ』は、マフィア映画でも異例の79分というコンパクトさに抑えた作品となっています。
ストーリー
マフィアとしてのし上がることを夢見ている田舎の悪党リコは、相棒ジョーと共にNYへ進出する。そこでマフィアの幹部サムの下に着くことにした。
一方、ジョーはダンサーとしての夢を追い始め、オルガと出会い恋に落ちる。
短気で手柄を挙げたいリコは銃を使い、やりたい放題していた。
彼の猛威に恐怖したマフィアたちは彼に従い始める。
感想
冒頭にも書いたように、マフィア映画であるにも関わらず、79分という短さに興味を惹かれた本作。当然のことながら、長い=名作というわけでもなく、むしろこの短さだからこそ楽しめる内容となっていたと言っても良いのかもしれません。
というのも、マフィア映画といったら大抵、主人公が成り上がるまでを裏社会のルールや警察との掛け合いなどを通してじっくりと描いているものです。
けれど、本作ではそうした要素をテンポよく描くことで進行。ストレスなく直感的に楽しむことができました。
一方で、マフィア映画で面白いと感じる要素をしっかりと押さえていたのも魅力であったと思います。
マフィア間の抗争、警察との確執、マフィアへとなり上がる仮定、友情などなど、テンポよく次々と事件が巻き起こる面白さは、下手に長くするよりもずっと良かったですね。
また、ひとつひとつの要素が薄いかといったらそうでもありませんでした。
マフィア間の抗争では街中での銃撃なんてクレイジーな展開でしたし、警察との確執もリコが刑事を殺すという衝撃があります。
マフィアへとなり上がるまでには幹部であるサムを蹴落とす展開がありましたし、ジョーとの友情も色濃く描かれており、短いエピソードの連続ながらも記憶には強く残るものばかりでした。
こうしたエピソードにより深みを与えていたのが、登場人物の感情でした。
個人的な感覚なのですが、登場人物にフォーカスしていることこそが名作マフィア映画に当てはまる特徴のひとつであると思います。
そこを色濃く描いていたからこそ、本作もまた名作になり得る面白さがあったのだと言えるのでしょう。
で、本作において印象に残っているのが、やはりリコの描写でした。
偉大なマフィアになるという夢を持ち、それを実現するためであればどんな手もいとわない傲慢さはある意味人間らしいです。
その傲慢さによって、マフィア幹部サムや警察のフラハティの怨みを買うのですから彼の感情が引き起こしたいざこざであったと言えるでしょう。
しかし、彼にも義理人情というものが残っており、それが感じられるのがジョーと対峙するシーンでした。
二人が正面から向かい合うのは本作の中でも印象的なカット。
リコが動揺を見せ、ジョーを殺せないのは、傲慢な彼の中にも人間らしさが残っているのが分かり好感が持てました。
とはいえ、最後は己の傲慢さによって追い詰められ、ジョーが主演する劇の広告看板の裏で命を落とすのですから皮肉な話でした。
よくも悪くも彼の傲慢さが彼の運命を左右した物語だったわけですね。
短いながらも見所が多く、マフィア映画としての面白さがあった本作。
今あるマフィア映画も本作の影響を少なからず受けているのかもしれませんね。