【レビュー】ジョンベネ殺害事件の謎(ネタバレあり)
1996年12月26日。
その日、アメリカの事件史の中でも1、2を争うくらい有名な「ジョンベネ殺害事件」が起きました。
謎多きその事件は日本でも話題となり、今なお未解決事件の話題となると挙げられる事件です。
そんな事件をドキュメンタリーとしてとり扱ったのが、今回レビューする『ジョンベネ殺害事件の謎』です。
ストーリー
ジョンベネ殺害事件の再現ドラマを制作するためのオーディションが行われた。参加した人々はそれぞれジョンベネ事件をリアルタイムで知っていたり、役作りのために調査をしていたりした。
そうした人々のオーディションの様子を再現ドラマを交えつつ描く。
感想
本作において「ジョンベネ殺害事件」の真相が明らかになることはありませんでした。それは最初から分かっていたことなので別に気にもならなかったのですが、そこを無視したとしても本作はなかなかに酷い作品でした。
最も嫌だったのが、未解決の事件かつ遺族が存命な中で、あたかも特定の人物が犯人かのように匂わせていること。
いくら個人的な意見とはいえ、まだ未解決の事件をあそこまで偏った形に切り取っているのはなかなかにキツいです。
しかも、それを全方位(ジョンベネの父、母、兄、侵入者)に向けているのですから、なんだか見ていても釈然としません。
ラストシーンには、ありとあらゆる可能性(まるで家族の誰が犯人でもおかしくないですと言わんばかり)の再現ドラマをぶっこんでくるのですからまた複雑な気持ちに。
自分が遺族だったらと思うと何かしら文句をつけてやりたくなると思います。
まあ、このテーマの作品を見ておいて「不謹慎だ!」と騒ぐのもどうなのかという話ではあるのですが……
ただ今回、こうして荒々しい気分になったのは単純に作品がつまらないからといつのもあります。
そもそもドキュメンタリーというのは見ていて「なるほど」となるのが面白さだと勝手ながらに思っています。
そのためには、見識の広い人や事件モノならばその現場に居合わせた人を連れてくるものでしょう。
ただ、本作は事件にはまったく関係なく、捜査に関してもまったくのトーシローである俳優志望の人しか集まっていないのです。
こんなので事件のインタビューをしても浅い話しか出てきません。
ネット、又聞き、噂話、etc...
そんな証言で「私は母親が怪しいと思います」なんて言ってるのを見ても何も得られるものはありません。
なんなら事件当時の近所の人のインタビューの方がまだ有益なのではないかとさえ思えました。
それが延々と続く……だけではありません。
本作、再現ドラマのオーディションをしているという設定のもと話が進んでいきます。
そのため、なぜか彼らの経歴や役に対する思いを聞かされます。
正直、ひたすらどうでもいい……のに参加人数がやたら多くて時間が掛かります。
なんだか、オーディションのドキュメンタリーでも見せられているかのような気分でしたね。
と、思いきや最終的にはオーディションにきた人たちの身の上話を聞かされるという脱線具合。
たしかに子供を失ったとか病気になったとかは同情しますが、あまりにも事件に関係ない話がして、他人の私からしたら「他所でやってくれ」という思いでした。
本作で良かったとすれば、ドキュメンタリーの演出と、再現ドラマを交えつつ展開させるという手法でしょう。(内容は置いておいて)
再現ドラマを交えながらというのは斬新でしたし、物語の進行→そのシーンについてのインタビューというのは分かりやすい表現だと思いました。(あくまで構成だけ)
また、冒頭で悪い意味として紹介していた犯人を匂わせる手法も、つなぎが上手いという意味では誉めるべき所。
話の内容としては不満ばかりでしたが、演出としてはドキュメンタリーでありながらスリラーのようになっていて面白かったと思います。
実際に起きた事件を取り扱っていた本作。
ただ、それを見て思ったのは未解決事件の扱い辛さと不毛さだったと思います。
とはいえ、解決をしてしまえばもはや見る意味すらなくなってしまう作品なだけに、見るなら今しかない作品であると言えますね。