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【レビュー】ペット・セメタリー2(ネタバレあり)

「シリーズものの続編は駄作になる」

そんなジンクス(というか傾向?)があります。

しかし世の中にはその存在すらあまり知られていない作品も数多く存在しています。

今回レビューする『ペット・セメタリー2』もそのうちのひとつ。

スティーブン・キング原作の1作目とは異なり、オリジナルで作られた続編になっています。



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ストーリー

有名な女優を母にもつ13歳の少年ジェフはある日、撮影現場で事故により彼女が感電死する場面を目撃してしまう。

失意に暮れるジェフのため父チェイスメイン州ラドローへ引っ越すことを決意した。

そこでジェフは同い年のドリューと仲良くなった。

ある日、ドリューの義父であるガスが、ドリューの愛犬ゾーイを射殺してしまう。

ジェフはドリューに頼まれ、ゾーイの埋葬を手伝うことを受け入れた。

そこで彼は、死体を埋めると生命が甦ると言われているミクマク族の墓地の存在を知る。

感想

今年(2020年)に入ってすぐにリメイク作が公開されたことでも話題となった『ペット・セメタリー』

映画では『セメタリー』、小説では『セマタリー』となっていたりして、どっちの表記に合わせるのか(『セマタリ―』は作中で見られる子供の誤字)モヤモヤさせられますが、それはさておきリメイク元とリメイク版(2019)はとりあえず両方見ています。(記事にはできていませんが……)

ただ、本作キャストもスタッフも一新されていることからも分かるように、ほとんど前作を見ている必要なんてありませんでした。



そんな中、唯一継承されているのが設定です。

前作、悲劇の起きたメイン州が舞台となっており、そこにあるミクマク族の墓が生命を蘇らせる力を持っているという設定は、前作を見ていた方が断然に受け入れ易かったと思います。

また、前作の被害者でもあったクリード家が廃墟になっていたり、階段話になっていたりと、知らなくてもいいけれど知っていれば楽しめる要素が含まれていたのは面白かったですね。







そんな本作ですが、前作やリメイクよりはぶっちゃけ面白くありません。いうなれば典型的な二番煎じです。


動物を埋めてセメタリーの力を知る→蘇った動物が凶暴性を見せ始める→人間が死んで埋める→蘇った人間が凶暴性を見せ始め人を殺しだす



この流れをほぼ踏襲しており、個人的に目新しさがあまり感じられませんでした。

一方で、前作と大きく変えてきたのが主人公です。

前作では大人であるルイスが娘を失ったことから原住民の墓地へ遺体を埋めて甦らせていました。(リメイク版もだいたい同じ)

本作ではそれを13歳の少年ジェフに変更。相棒役も、前作では老人ジャドであった所を同学年のドリューに変えていました。後、ペットが猫から犬に。



その主人公ジェフを演じたのが、当時人気絶頂であったエドワード・ファーロングでした。(彼が一躍スターとなった『ターミネーター2』が1991年、本作は1992年)

しかし、彼を主演に迎えたのに興行的には失敗という手痛い結果に。とはいえ、彼の演技力は確かなもので、イマイチな本作の中でも見所のひとつとして挙げられる働きをしていました。

特に感情表現が素晴らしく、母親を目の前で失った悲しみ、それを抱えながらも生きていこうとする苦しみ、セメタリーの存在を知ってからの動揺……そうした大人顔負けの演技を見せていたことには驚きました。

そんな彼の最高の演技が、精神を病んでしまって母親を甦らせようとするシーンでした。

正直、ストーリー的にはなにをきっかけにおかしくなったのかも分からず「いきなりどうしたんだコイツ」状態なのですが、演技としては文句なしの活躍を見せていました。



このように主人公が少年であることによって、エドワード・ファーロングの活躍が見られる作品なわけですが、個人的にネックとなっていたのも、主人公が少年であったことだと思います。

前作『ペット・セメタリー』の魅力のひとつが「いい歳をした大人が死を受け入れられない」ことでした。

死の必然性を娘に諭しながらも、自らは突然の死に向き合えないという矛盾と、向き合えなかったがために家族全員を崩壊させるという皮肉の効いた内容は実にスティーブン・キングらしさがありました。

そうした意図が少年視点になると、ただ死を受け入れられない子供の物語としてしか機能しないんですね。

また、前作では大人のルイスが、ネコ一匹、子供一人を埋めるのにも大変な苦労を強いられており、それを通して罪の重さを表現していました。(原作通りに)

ただ、本作では大型犬を子供が一人で運んだり、大人の死体を簡単に埋めてしまったりと、死がかなり軽く描かれています。

目の前で人が死んだのに「どうする?」「埋めよう」って軽すぎるよ……

また、甦る人間の設定も結構あいまいになっており、どう考えても前作や原作よりも人間らしさが残っており、脅威があまり感じられません。

なぜか死んでいるガスが普通にジェフの手伝いをしていたりするのには笑ってしまいました。

なんだか良くも悪くもやりたいことが定まりすぎていて、そこへ向けての過程がガバガバになってしまっていた印象がありました。







スティーブン・キング原作の『ペット・セメタリー』の続編として、映画オリジナルの物語を展開していた本作。

しかし、そこに目新しさはなく、なぜ作ったのかよく分からない作品となっていました。(一作目もそこまで高評価なわけではないですし)

こればっかりは、歴史に埋もれても復活することはなさそうですね。