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【レビュー】インファナル・シティ/女捜査官サンドラ(ネタバレあり)

刑事モノの主人公にあるあるなのが、周囲の意見に流されないアウトローな性格をしていることです。
その型にはまらないワイルドな性格は主人公を魅力的に見せてくれます。
しかし、その扱いを少しでも間違えればただのクレイジーなヤツにしかなりません。
そんなアウトローさのさじ加減を考えさせられるのが、今回レビューする『インファナル・シティ/女捜査官サンドラ』です。

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ストーリー

パリからボルドー税関の麻薬局に転属してきたサンドラは、初めての仕事で命令無視をしたことから局長のシュルステルを初め、局の全員から疎まれることとなる。
ある日、麻薬局に強盗が押し入り、押収していた麻薬を強奪した挙げ句、警備員2人を殺すという事件が起きた。
内通者が手助けをしたことを確信したサンドラは、独自に捜査を開始する。

やがて彼女は、コミネッティという裏の世界の大物へとたどり着く。

感想

歴史映画以外はほとんどハズレを作ると(勝手に)思っている制作会社アルバトロス。
そんな会社のアクション映画だというのですから絶対に面白くないなと確信を持ちつつ鑑賞しました。
そうしたら意外とハードルを下げていた分、楽しむことはできました。
まあ、ストーリーに一貫性があって、ツッコミどころが多いという意味での楽しみ方でしたが。

そのストーリーですが、特に捻った設定とかはなくあらすじに書いた通り。
麻薬局の麻薬を盗んだ強盗が誰なのかを追い詰めている間に大物の悪党に辿り着いて追い詰める、という大物俳優さえ使えばビッグタイトルでもありそうな設定でした。
しかし、そんなスケールの大きさとは相反してショボいのが敵の組織。
セリフだけ聞けば巨大な麻薬カルテルなのですが、人員が少ない上にアホばかりで目も当てられません。
悪党側に、頭がキレる奴も、強そうな奴もいないというのはある意味スゴいメンツでしたね。(幹部っぽいのも一瞬で殺されていましたし)

そんな悪党たちに対するのがサンドラなわけですが、この人がまたある意味凄かった……
冒頭、いきなり命令無視をして暴走するトラックの前に立ちふさがり危うく轢かれかけるというワンマンプレーをみせていたことからも薄々気づいていましたが、頭がおかしいです。
警告も何もなく人の携帯をぶっ壊したり、銃を持って店に入ったかと思うとトイレの中で発砲をしたり、心配をしてくれている局長に対して罵詈雑言を浴びせかけたりと、チームワークや信頼なんて言葉は不要の超自己中なやつでした。
そんなですから当然感情移入もできるはずがなく……なにかしら手痛い失敗でもして態度を改めるのかなと思っていましたが、特にそんなこともなく最後までクレイジーを貫き通していました。まあ、これはこれでネタにはなるか。
このように、サンドラの大暴走が基本的に目立つ作品だけあってか、麻薬局のメンバーはほとんど無個性と言って差し支えないくらいキャラが薄いです。
そのため、作品のキモともなっている内通者の正体とか明らかになってもあんまり衝撃的じゃありませんでした。
というか、演出としてもデーン!と盛大なSEをつけているわけでもなく、「なんかコイツ怪しいな……」と匂わせてからいきなり正体を露わにしていますし、あんまり重要視していなかったのかも?
なんにしても影が薄く、裏切り者なのにサンドラよりもヘイトも少ないしで、あまり生きていない設定でした。


あからさまにご都合主義な展開が多く、悪党までもサンドラの都合のいいようにしか動かないチープな展開はさすがのアルバトロスクオリティ。
とはいえ、そうした点にツッコミを入れながら見るとそこそこ楽しめてしまうので、割り切ってしまえば悪くない作品であったと言えます。
もし仮にサンドラのようなアウトローがいたら、間違いなくクビか左遷になるのでしょうね。そうした反面教師にもなる作品でした。(真似しようと思ってもできないレベルでしたけどね)

ちょっとした雑記

本作で舞台となったフランス・ボルドー
主人公のサンドラはフランス・パリからここへ転属してきたという話でした。
では、その距離はどれくらいなのかというとおよそ580km。車の移動で約5時間半~6時間の距離です。
日本でいうとだいたい東京から南へ行くなら広島、岡山辺り、北なら北海道になりますね。

で、ボルドーの話にもどりますが、作中ではほとんど描写がされていません。
街を巻き込んだ派手なカーチェイスやアクションシーンなんかはほぼ皆無で、基本的にどこかの建物内かあるいは明らかに郊外っぽい場所でした。いかにも低予算さを感じさせるロケーションですね。
街中で屋外のシーンといえばどこかの建物の屋上くらい。(サンドラが仮住居として借りる部屋の屋上や狙撃手に狙われるシーンなど)
とある監督のインタビューで聞いたことがありますが、低予算映画を作るのに屋上という立地はうってつけなのだそう。
純粋に安価で借りられるのと、一般人が移りこまない(俳優のタイミングで撮影できる)という利点があるらしです。なにより景観的に見栄えがいいというのがありますからね。(仮住居の屋上のシーンなんかは街が見下ろせるいいロケーションでした)
もちろん、車の爆発シーンなんかもCGで、街に迷惑なんて掛けていません。(B級映画特有の安っぽいCGはある意味見どころでした)
舞台はボルドーではありますが、果たしてボルドーで撮影したのか謎ですね。

では、ボルドーらしさが皆無だったかといったら一応ありました。

それがコミネッティの有していたワイン蒸留所です。
ボルドーワインは、ブルゴーニュワインと並び立つほど有名でもので、ボルドー=ワインというイメージが根付いています。
そんなボルドーの精神を意識してなのか、コミネッティがブドウ畑を有しており、醸造まで行っている描写がありました。
まあ、本編でなにかの役に立ったかといったらNoなのですが、一応ボルドーらしさを作りたかったのかもしれませんね。

このような感じでボルドーを舞台にしていた本作。
低予算でありながらも、街を巻き込んだ壮大な事件に見せようとする努力は、並大抵の映画よりも創意工夫が感じらるのは面白かったです。