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【レビュー】ナイト・ストーム(ネタバレあり)

赤の他人を家に上げるというのは普通なら抵抗があるものです。
信頼もない相手にプライベートな空間を見せるわけですから当然でしょう。
それを臆することなくできるとすれば、よっぽどのお人よしか、あるいは上げる理由があるからか……
今回レビューする『ナイト・ストーム』では、ある嵐の一夜、家に帰れなくなった男が異常な夫婦の住む家に泊まることになる作品です。

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ストーリー

嵐が迫る日の昼。
海軍上がりのバディは、ある家の柵を修理するため現場へと向かった。
そこには元海兵隊のウォルターとその妻ファンシーが暮らしており「当日中に柵を直せば追加報酬を渡す」と言われる。
作業に取り掛かるバディであったが、嵐が来たことから作業を止めることに。
さらに車の故障のため、ウォルターの家に泊めてもらうこととなった。
そこでバディはファンシーから誘惑され、それを知ったウォルターに命を狙われることになる。

感想

ニコラス・ケイジ主演作はアタリとハズレの差が激しい。
そんなことは重々承知の上で、明らかにヤバそうながらも好奇心に勝てず本作を鑑賞しました。
その結果……見事なハズレ作品でした。
まあ、あらすじからして嵐の夜に妻が誘惑した主人公に嫉妬した夫(ニコラス)がキレる、というなんとも意味不明な内容。
そんな内容に行き着くまでを本編97分の内、ほぼ半分を使っているのですから笑えません。
では、それまで何をしているかというと、ウォルターのいやーな性格であったり、ファンシーがバディを誘惑するシーンなんかを見せられます。「なんだこれ」という感想しか出てこないですよ。

で、話が展開したかと思えばウォルターが病気の妻を殺してほしいとか言ったり、逆にファンシーがそれは嘘だと言ったりてんやわんや。一体、何が目的なのかがよく分からないというのは見ていて退屈に感じられました。
せめて、バディが二人のヤバさに気づいて脱出を目指すとか行動指針が定まればマシだったのですが、彼もなあなあで居座り続けていましたし、目標がないというのは結構退屈でしたね。

ようやく目的が分かったかと思ったら、二人は自分たちの子供を産ませるために若者を誘拐していたというエキセントリックなものでした。(ウォルターはファンシーに付き合ってという形でした)
けれど、それが判明した直後、彼らはバディに罪を被せる形で解放しており、なんだか拍子抜け。もっと、危機的状況とかあるのかと思っていました。
その後のウォルターとファンシーの隠す気もない警察へのガバガバな対応を見て思いましたが、二人とも結構抜けている所が多い、小物感のすごい悪党でした。

ウォルターの動機のひとつとして、軍の体制への不満がありましたが、それも説得力があまりありませんでした。
誰だって、負傷した兵士を前線に送るわけがないのに、そうしなかったことから軍の体制に不満を募らせていたというのは、ただの異常者でしかありません。
まあ、前線に一緒に行っていれば共に死ぬはずだった仲間たちと同じように、名誉の死を遂げようと思っている所からして異常であることは確定的ではありますけどね。
とはいえ、なんだか名誉の死であるかのように描いていたラストはなんだか釈然としない感覚でした。

さて、そんな不満が多い作品ですが、ニコラス・ケイジはいつものクオリティでいい演技をしていました。
冒頭の酔っ払いのロクデナシを絵に描いたような嫌な性格や、中盤での嫉妬に狂った頭のおかしさを感じさせる振る舞いなどは、経験のある彼でないと表現できない不快さがあったと思います。
そもそも、あらすじを見てもそこまで惹かれる要素はないのに見てしまったのはニコラス・ケイジが主演であったからでした。
そう考えると、本作の存在を知らせただけでも彼を起用した意味があったと言えるのでしょう。
存在感、演技共に彼の魅力がしっかりと生かされており、それゆえにストーリーのガッカリさがより浮き彫りにされている感じがしました。


嵐の一夜を舞台に、サスペンスを見せていた本作。
ニコラス・ケイジが主演であることが数少ない見どころではありますが、そのせいで本作を見てしまう人は多かったのではないかと思います。
ニコラス・ケイジのファンにならかろうじて勧められる作品でした。