スキマ時間 DE 映画レビュー

【レビュー】ゴールデン・チャイルド(ネタバレあり)

チベットには不思議な力を有する僧がいるというイメージがあります。
本当か否かはともかく、映画でチベットが登場すれば大抵は重要な意味を持っているものです。
そんなチベットの不思議な力を全面に押し出してきたのが、今回レビューする『ゴールデン・チャイルド』です。

f:id:sparetime-moviereview:20201031064702j:plain

ストーリー

千年に一度、産まれてくるという「ゴールデン・チャイルド
それは、世の中の優しさの化身であり、彼が死ぬと世界は地獄と化すと言われていた。
そのゴールデン・チャイルドをサードという男は誘拐し、殺す手立てを探していた。

ロサンゼルスで行方不明の子供を探すことを生業としているチャンドラーのもとに一人のチベット人女性が現れる。
彼女の依頼を受け、チャンドラーは「ゴールデン・チャイルド」を探し始めた。

感想

エディ・マーフィーが主演するという事でそれなりに期待していた本作。
正直、可も不可もない作品といった印象でした。
いや、たしかに時代を考えると確信的だったのかもしれません。
チベットの万能の力を持つ子供を悪魔が誘拐して殺そうとする」という設定の下、CGをふんだんに使い、時にはモーションピクチャーを使って、映像美を前面に押し出していましたからね。
ただCGが発達し、モーションピクチャーなんて久しく見かけない現代においてはチープそのものでしかないのです。
終盤に現れる悪魔なんて、本来なら盛り上がるハズのシーンなのに笑っちゃうくらい安っぽい。公開当時だったらもう少し正当な評価が出来たのかも知れませんね。

とはいえ、本作はシリアス半分コミカル半分くらいの割合なので、チープなのもある程度は受け入れられたのが駄作と呼ばずに済むところでした。
そのコミカルさを構成するのがエディ・マーフィー演じるチャンドラーです。
子供を愛するあまり、失踪した子供を探すことを生業としている、今の時代なら彼自身が変質者としてしょっぴかれそうな男です。
傲慢で皮肉屋で我が強く、女好きでお金にがめついというロクデナシを絵に描いたようなキャラクターは凄まじく濃い。売れない占い師のような風貌も含め、圧倒的な存在感を放っていました。
こうした一見、マイナスに思える特徴を魅力としているのですからエディ・マーフィーはやはりただ者ではありません。
ファンタジーの世界観にことあるごとに茶々を入れ、隙さえあればジョークを言う陽気な性格を1ミリの違和感もなく演じていました。

そうしたコメディ要素が強い作品だけに、他の要素が薄めに感じられたのが残念な所でした。
設定がファンタジーなのに普通の人間と戦うシーンばかりであったり、その戦闘シーンがもっさりであったりとイマイチ盛り上がりに欠けていました。
また、チベットへ飛び大冒険が待っているかと思ったらアスレチックみたいな所を飛び回って終わりという味気ない展開であったりと、なんだか期待外れなシーンが多かったです。
良く言えばコミカルな作風に合った、悪く言えばチープな内容は、冒頭にも書いたように可も不可もない面白さでした。


エディ・マーフィーの魅力とチベットのファンタジー要素を掛け合わせていた本作。
しかし、結局生きていたのはエディ・マーフィーの面白さだけであったように思えます。
とはいえ、1986年当時であればCGを駆使した映像は見所のひとつであったのかもしれません。
公開当時の評価もぜひ聞いてみたい作品でしたね。