スキマ時間 DE 映画レビュー

【レビュー】エスパーズ 超人大戦(ネタバレあり)

SF映画において、異質な存在とそれを追う者の関係というのは王道ストーリーです。(おそらく『ブレードランナー』が火付け役)
とはいえ、そこからどう面白くしていくかは制作陣の手腕しだい。
今回レビューする『エスパーズ 超人大戦 』は、そんな王道ストーリーを面白くする難しさを考えさせられる作品です。

f:id:sparetime-moviereview:20201116181121j:plain

ストーリー

ハイテク企業"サイセイ"社の実験により、特殊な能力を持たされたミュータントを追うジョージは、一人の女性アンナと出会う。
ミュータントは攻撃的で危険な存在だと聞いていたジョージであったが、アンナと言葉をかわす内に、それが"サイセイ"社の嘘であったことを知る。
二人は協力し、これまで捕らえられたミュータントを解放すべく、"サイセイ"社に挑んでいく。

感想

超能力者とそれを追う組織の攻防を描いていた本作。
シリアスなSF世界観を作り上げようとしているのはなんとなく感じられたのですが、何かいまひとつ盛り上がりに欠ける……
その理由を探り続けていたらいつの間にか終わっていたという作品でした。

そして出た結論ですが、盛り上がりに欠けるのは作品の安っぽさにあったのではないかと思います。
例えば、超能力者を追う組織。
彼らは強力な力を持つ超能力者を相手どるにも関わらず、組織内の人は少なく、施設は狭い、支給されている武器もショボいという、まさにB級クオリティの環境で超能力者と戦っていました。
そんな安っぽさ溢れる武器を持って、なにやら奇妙な構えを見せつつ超能力者と対峙するシーンはもはや滑稽にしか見えません。
シリアスなのに映像は滑稽。そのちぐはぐさは面白さが損なわれてしまっていたと思います。

で、これは超能力者側の動きにも言える話です。
彼らは宇宙人の力を取り込んだ人間であることから、常人離れした力を使えるようになっているのですが、イマイチそれが伝わりづらい!
能力を使って敵を圧倒したりするのですが、その映像に迫力がないせいでその凄さが伝わってこないんですよね。
そもそも衝撃派と身体能力強化とか視覚的に分かりづらい能力を選んだ時点で失敗している気もしますが……(あるいは予算的にそれくらいの表現しか出来なかった?)
超能力者の脅威が伝わってこないために、それを追う組織の必死さも理解できないという悪循環に陥ってしまいました。

これらの悪循環がもたらすのが作品への没入感の薄れです。
そしてそれは、作品の設定の雑さによってより強まることとなっていました。
本作、超能力者のランクをA~Eまでで表しており、Aが最も危険ということになっているんですね。
でも、そんな設定は特に意味はありません。
「アイツAランクだ!ヤバいぞ!」ということ以外に使われることもなく、なんなら他のランク(Dランク辺り)は登場すらしない、正直なくてもよい設定です。
他にも、宇宙人の力をアンナたちが得た理由や経緯が一切語られていなかったりと、説明不足……というか細かい所はそのままスルーしている感じがしました。
こうした説明不足が、より作品へ対する興味を損なわせてしまい、没入感を薄れさせてしまうことにつながっていたように思います。

こうした説明が足りていない理由として考えられるのが、アクションが優先されていたからだと思われます。
というのも、本作の監督ジェームズ・マークはもともとスタントマンを務めていました。
そのため(なのかは分かりませんが)、作中でもアクションシーンだけには力が入っていました。
身体能力が強化された超能力者がアクロバティックな動きで攻撃をしたり、やられる兵士たちがオーバーリアクションよろしくひっくり返ったりする様子はそこそこ楽しむことができたと思います。
とはいえ、スタントの技術のせいなのか、見せ方のせいなのか分かりませんが、こちらもB級クオリティに感じられました。なんだか爽快感がないんですよね。テンポが悪いというか……
ここは自分の感覚的な話なので、そこまで深掘りはしないままにしておきます。


(物理的に)目の色変えて抵抗する超能力者と、目の色変えてそれを追う組織との攻防を描いていた本作。(後半は協力関係になっていましたが)
アクションを取り入れたいがために、設定をないがしろにしている感じがしたのは、SF映画好きとしてはやや不満が残るものとなりました。
調理の仕方によってはもっと面白くなりそうであっただけに、残念な作品であったと思います。