スキマ時間 DE 映画レビュー

【レビュー】聖女/Mad Sister(ネタバレあり)

韓国ノワール映画といえば、一種のジャンルとして確立されるほど有名なものとなっています。
そのバイオレンスな描写は、刺激的で見る者を魅了してくれます。
今回レビューする『聖女/Mad Sister』は、そんな刺激的な世界を女性主人公が見せる韓国ノワールです。

f:id:sparetime-moviereview:20201117181618j:plain

ストーリー

格闘技でたしかな実績を持つイネは、過剰防衛により科せられた1年半の服役生活から釈放された。
学生の妹ウネと再会を果たしたイネは、学校へ行くのを渋る妹を説得し、学校へと行かせる。
しかし、ウネは知的障害を患っており、それがきっかけで学校ではイジメられていた。
それがエスカレートしたことから、ウネは裏社会の男と接触をしてしまう。
それを知ったイネは、ウネの行方を追い始める。

感想

アクション映画のひとつにリーアム・ニーソン主演作の『96時間』というものがあります。
私はあの作品が大好きで、その理由が容赦なく敵を倒していくテンポのよさでした。
本作はそんな『96時間』を彷彿とさせる、容赦ないアクションをテンポよく描いていました。
ただし、本作の主人公は女性。そこがまた斬新であり、衝撃的な点でした。
格闘技で腕を鳴らしたイネが、美しく赤いドレスを身にまとい、悪党を次々に倒していく明快かつ爽快な内容は、アクションを存分に堪能するにはうってつけであったと思います。

そんな本作ですが、目を惹いたのがアクションの粗さです。
"粗さ"と聞くとマイナスイメージに聞こえるかもしれませんが、それが良かったのです。
というのも、本作は別にスポーツをやっているわけではなく、殺し合いをしています。
そこに上品さなんていりません。相手をノックアウトできるなら髪の毛引っ掴んで壁に叩きつけるのだってありなわけです。
その何でもありの死闘が本作は素晴らしかった!血まみれになりながらも敵を倒していくイネの生々しいアクションは、粗さがあるからこそ命がけであることを感じさせました。
拳銃、ナイフ、スタンガンなど、使えるものは全て使っていくなりふり構っていられない戦闘スタイルも含め、見ごたえがありまくりなアクションシーンでした。
ここら辺は深く考え始めると「いくら相手が悪党で恨みがあるからとはいえ躊躇なく痛めつけられないでしょ」とか思ってしまいますが、そこはもう映画として割り切った方がいいですね。

そんなテンポよく進む痛烈なアクションを楽しむ作品なわけですが、ストーリーに色々と感じるものがあったのも事実です。
作中、イネが妹のウネを追う内に判明するのが、知的障害を持っているウネをエサに欲を満たしている男たちがいるという事でした。
弱者が食い物にされる環境が存在しているというのは、なんとも胸糞悪くなる話ではありますが、現実に大なり小なりそうした格差社会が存在しているのは事実でしょう。
特に韓国では貧富の差が激しい実態があるだけに、この問題はなかなか刺さるものがありました。
それだけに、イネがそうした格差など関係なく、悪を裁くという勧善懲悪ストーリーは痛快で応援したくなる魅力を持っていたんですね。


テンポよく進む生々しいアクションが楽しめた本作。
しかし、そこには韓国の格差社会も見られました。
こうしたショッキング性強めな作品は、興行などを考え始めるとなかなか作れるものではありません。
それだけに、貴重な作品を見られた気分となりました。