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【レビュー】ロイヤルネイビー 米軍最強兵器を破壊せよ!(ネタバレあり)

B級映画を輸入する際、配給会社はまず第1に多くの人に見てもらうことを意識しなくてはなりません。
そのためには、多少の脚色は厭わないとさえ言えるでしょう。
そんな脚色をしまくった邦題がつけられたB級映画が、今回レビューする『ロイヤルネイビー 米軍最強兵器を破壊せよ!』です。

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ストーリー

元軍人であったサムは、ある日生後八ヶ月の子供が熱を出したことから薬を買うため外出をする。
その道中、何者かに拉致されたサムは、目覚めると無人の工場に閉じ込められていた。
脱出を試みるサムであったが、彼女は目に見えない何者かからの攻撃を受ける。

感想

タイトルからして戦争モノかと勝手に思っていたのですが、まさかのSFモノ。しかも駄作というダブルショックを受けさせられました。
そもそもの話、邦題がオリジナリティを出し過ぎているんですよね。
原題は『Stalked』(ストーカー)となっており、作中に登場する悪役の異常性を表していて納得出来ます。
一方、邦題は『アメリカ最強兵器を破壊せよ!』。いや、間違ってはいないのですがそんな壮大なストーリーには思えないんですよね。
犯人の目的は私利私欲のためで軍事利用とか特に考えている感じでもなさそうでしたし、ステルススーツが最強兵器であることは変わりありませんが、そこに脅威は感じられません。
でも見たくなる邦題であるのは確かなわけで……「見るための興味を惹く」という点では有能なタイトルなのかもしれません。後々ヘイトが溜まりますが。

とはいえ、本作のクオリティそのものが低かったのも事実。
設定のあいまいさ、スケールの小ささ、展開の少なさ……全てにおいてガッカリな内容でした。
まあ「人を痛めつけることが趣味な男がステルススーツを使って主人公たちをいたぶる」というのがストーリーの大半を占めている時点で面白くなる要素がほぼほぼないと言えるでしょう。
しかしそれを加味しても本作の退屈さは凄まじかった……
サムが拉致され目覚めてからの10分近くを探索するだけの時間に裂いたり、緊迫感を演出するためのカットの連続(例えばサムと犯人の距離が縮まっていくのをカットをだんだん短くしていく表現)がくどいくらい連続して使用されたりと、とにかく尺伸ばしのような演出が多すぎでした。
特に必要のないキャラクターが登場して無駄死にするという扱いなんかもあって、途中までは何故この作品を作ったのか謎なくらいでした。

で、その理由がおそらくステルススーツの存在なのでしょう。
後半あたりから、このステルススーツがスマホのカメラに映る(理論はよく分かりません)という特性を生かしてサムと犯人とのかくれんぼ的なのが始まります。
設定はガバガバですが、正直「スマホで見えるようになる」という発想は面白いなと思いました。
とはいえ、ただただカメラで犯人を追いかけつつ隙が出来たところで攻撃→ステルス機能が切れるという発展のしなさにはガッカリしました。
あと、この戦闘シーンの迫力のなさはある意味本作のベストシーンだと思います。
もっさりとした動きなのに効果音(パンチを繰り出した時の風切り音とか)はしっかり加えられているチグハグさは真面目に作ってあるだけに笑えてしまいました。

他にも、殺人ドローンをレンガ一発当てただけで破壊してしまったり、後日談もなく犯人を倒したら即エンディングなど、B級映画のお約束でもなぞっているかのような展開の数々は悪くなかったと思います。
序盤の退屈な時間さえ凌げば、ツッコミ所もあって楽しめたというのが最終的な感想ですね。駄作という事実は覆りようがありませんが。

余談となりますが、ステルススーツを着た透明人間が襲ってくるという展開は、最近見た『透明人間』(2020)を思い起こさせました。
評価は天と地ほどの差がありますが、本作の方が先に公開されているというのはなんだか面白い話だなと思いました。


いかにも壮大なタイトルをつけておいて超スケールの小さい作品であった本作。
メインヴィジュアル(記事冒頭の画像)には「『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のスタッフが放つ」と書いてあるのに関わっているスタッフは2人しかいないなど、拡大解釈をしまくっていました。
ある意味、配給会社の愛が見える作品でした。