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【レビュー】アクセレーション(ネタバレあり)

ドルフ・ラングレンといえば、知る人ぞ知るアクション俳優です。
近年では年を取ったこともあってか、あまりアクションをする姿を見なくなってきています。
しかし彼の存在感は凄まじく、出演すれば必ずその存在に気づくほどの風格をいつも漂わせています。
そんな彼が挑む(現状日本で見られる作品の)最新作が、今回レビューする『アクセラレーション』です。

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ストーリー

女殺し屋であるローナは、銃を売り捌く仕事が失敗に終わったことから裏切りの容疑を掛けられる。
クライアントであったマフィアのボスヴラディクは、落とし前を着けさせるために彼女の息子を誘拐し、5つの仕事を強要した。
リミットは夜明けまでの7時間。ローナは息子を救うために動き始める。

感想

ドルフ・ラングレン目当てで見たこの作品。
ドルフ・ラングレンあんまり活躍してないじゃん……」というツッコミはさておき、全体的にあまり楽しめる作品ではありませんでした。
そもそも掴みが酷すぎました。
いきなりアクションシーンから始まって、事の発端へと遡っていくのはよくある手法なので許せます。
けれど、遡ったのに結局話が途中からっていったい何がしたいのか……
「ヴラディク(ラングレン)に息子が攫われて5つの仕事を果たすように言い渡されている」と、状況説明はされますが、経緯や動機、ヴラディクとの関係についてはノータッチ。
その癖、展開は早送りのごとく次々に進んでいくのですからついていけません。「アクセラレーション」(加速)するのはいいですけど、それで見る側を置いてけぼりにするのは如何なものかと思います。

全てが判明したらしたでわけが分からないのもガッカリ要素です。
そもそもローナが息子との生活のためにお金と密輸する銃を盗む→ヴラディクが息子を誘拐する、という流れは分かりますが、それでなぜ5つの仕事を頼む話になるのか……
借金で首が回らない(すぐに返さないと殺される)状況なのに勢力の拡大とかやってる場合なのかと謎でしたね。

これらの話が分かりづらかったのが、視点のごちゃごちゃさにありました。
本作、主人公こそローナなわけですがヴラディクの視点であったり、悪党ケインの視点であったりと、目まぐるしく変わっていきます。
これがもし、後々事情が分かってくるタイプの作品でなければまだ分かりやすかったのかもしれません。
しかし、ローナが何をしたのか、ヴラディクがローナに何をやらせたいのかがすぐに分からいない本作だといたずらに話をややこしくしているんですよね。
ストーリーの幅を広げるためのストーリー構成が逆に伝わりづらい辛くなるという残念なことになってしまっていたように思えました。

そんな中でも見所を見いだせるとすればアクションなのでしょう。
やたらカット割りが多かったり、肝心のトドメを刺すシーンが物陰に隠れていたりと不満点は多いものの、本作を最後まで見れたのはアクションシーンで刺激を入れていたからだと思います。
基本的には生身のアクションが多く、ちゃんとしている印象がありました。
むしろ銃撃戦が酷すぎたから生身のアクションがマシに見えたのかもしれません。
撃ち合いなのに同じ空間にいるとは思えないアングルであったり、物陰に隠れず撃ち合っていたりと、ガバガバなことこの上なかったですからね。
逆にそれが楽しかったのもありましたが。

そして、本作肝心のドルフ・ラングレンは、冒頭に書いたように活躍シーンが少なかったです。
銃撃戦も上に書いたように酷いもので魅力がまったく伝わってきません。
アクションシーンは……なんというかすごく辛そうでした。
その場にいるだけでも強そうなオーラは放っているので、下手にアクションはしなくてもいいのかもしれませんね。
その点『クリード 炎の宿敵』は、彼の使い方を分かっていたのだなと改めて思いました。


ドルフ・ラングレン目当てで見た本作。
面白いとは言えませんが、多彩なネオンでオシャレな裏社会を見せていたり、早回しでテンポよく見せようとしたりと、演出の努力が見えるのは評価したいところでした。
ドルフ・ラングレン出演というだけで、多くのアクション映画ファンを釣ることは出来ますし、ラングレンさまさまな作品でした。