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【ネタバレあり・レビュー】インベージョン | 眠ったら発症の激やばウイルス映画!

人が人を認識するのに第一に見るのが外見です。
見知った顔であればまず疑う余地もなく知り合いだと認識するでしょう。
しかし、もしその中身が違ったとしたら?
そんな人間の内部が侵略される恐ろしさを描いたのが、今回レビューする『インベージョン』です。

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ストーリー

ある夜、宇宙探査を行っていたスペースシャトルが墜落する。
その船体には宇宙に漂う未知のウイルスが付着していた。

その頃、精神科医であるキャロルは患者からの相談で自身の夫がまるで別人のようだという相談を受けていた。
初めの内はそれが精神的な問題であると考えていたキャロルであったが、やがて自分の周りにも同じような不気味な人間がいることに気づく。
キャロルは元夫に連れていかれた息子オリバーを取り返し、街を出ることを決意する。

感想

最近のコロナ禍な情勢を受けて「ウイルスパンデミックものでも見てみよう」と思い立ち、探した結果見ることとなったこの作品。
「未知のウイルスが人間の細胞を半分乗っ取り別人のようにしてしまう」というのは、果たしてウイルスパンデミックものなのか?という疑問が沸きますが、体液で感染者が増えるという設定でしたし、広義の意味でウイルスパンデミックものなのでしょう。(その方法がゲロを吐いて直接口に注ぎ込むというダイナミックさには笑いました)
なんにしても面白い作品でした。
知人が本物か疑心暗鬼になる緊張感、次々と増えていく感染者たちに追われる焦燥感など、頭脳戦やチェイスなどエンタメ性に優れた内容となっていました。

中でも秀逸だったのが、感染と発症は別物であったことです。
上にも書いたように、本作での感染の仕方はゲロを口移しされるというものでした。
ただ、これだけだと人体には特に問題がなく、発症するのはREM睡眠状態に入ったらなんですね。
そのため、感染してからも行動可能であることが本作の面白さを生み出していたと思います。
感染者に捕まればアウトなのはもちろん、安全な場所に辿り着いても油断したら眠ってしまうという、常にハラハラさせられる状況は見ていて面白かったです。

そうしたハラハラする展開に拍車をかけていたのが俳優です。
本作の主演はニコール・キッドマン。演技派俳優という事もあって、異常事態に陥りながらも母親として息子を救おうとする、脆くありながらも大切なもののために強くあろうとする繊細な演技を見事に表現していました。
感染者の中を感情を殺して歩く(そうしないと感染者に察知されるため)というシーンもあり、その演技の幅の広さには驚かされるばかりでした。

キャロルのパートナー役ベンを演じたダニエル・クレイグもまたいい味を出していました。
冷静沈着で常にキャロルの味方でいる頼もしさは唯一無二の存在。
キャロルを引っ張りながらも出過ぎたマネをしないという渋い立ち回りはクレイグの魅力ありきのキャラクターであったと思います。
それだけに、ベンが感染していると分かった時の絶望は凄まじいものでした。
キャロルと一緒に驚愕してしまうくらいには感所移入できるキャラクターであったと思います。

こうしたエンタメ色の強い作品ではありますが、根底にあるテーマは意外と社会派で面白かったです。
そのテーマとは「人間らしさがどこにあるか」
本作で現れたウイルスは全てが一つの"個"であるため、人間のように、"個"と"個"が衝突して争いが起こることが決してないと言っているんですね。
現に、作中では北朝鮮が友好的な交渉をしているというニュースが流れていたりもしました。
では、ウイルスがワクチンによって駆逐されたらどうなったのかというと、再び争いが起き始めていました。
皮肉なことに、争いをすることが人間らしさであることを体現してしまっていたのですね。
その事実にキャロルが気づいたシーンで作品が終わるのですからなんとも考えさせられるラストでした。

これは、現実世界にも言えることのように思えます。
現状、コロナウイルスの蔓延により、戦争の勃発などは起こっていません。
しかし、ニュースではコロナ後に米中戦争が勃発するのではないかと取り沙汰されているのも事実です。
果たして現実ではどうなるのか、それはコロナウイルスのワクチンができて根絶されてからしか分かりませんね。


ウイルス映画とはいうものの、ほぼほぼパニック映画であった本作。
エンタメ色が強いながらも、その中に人間の本質を描いていたのは面白かったです。
設定も斬新で見ごたえのある作品でした。