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【ネタバレあり・レビュー】アイ・アム・ユア・ファーザー | 故デビッド・プラウズへ捧げる、愛に満ちた作品!

映画において、素顔を晒すことのない役柄というのは珍しくありません。
特殊メイクであったり、かぶり物を着けての出演であったりがあるからです。
そうした素顔を晒さないキャラクターとして、おそらく最も有名なのが『スター・ウォーズ』に登場するダース・ベイダーでしょう。
そんなダース・ベイダーのマスクの下に素顔を隠してきた俳優デビッド・プラウズを追ったドキュメンタリーが、今回レビューする『アイ・アム・ユア・ファーザー』です。

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ストーリー

ダース・ベイダーの中の人であるデビッド・プラウズ。
彼は『スター・ウォーズ』エピソード4~6までダース・ベイダー役を演じてきたものの、ラストシーンで役を降板させられた。
彼と制作スタジオの間で何があったのか、彼の半生を追いながら探るドキュメンタリー。

感想

つい先日、デビッド・プラウズの訃報が報じられました。
そこで、以前デビッド・プラウズのドキュメンタリーがあったことを思い出し、今回鑑賞するに至りました。
この作品、実は公開当初にも1度鑑賞をしており、今回は2度目の鑑賞。
けれど、1回目と同様にワクワクしながら見ることのできるクオリティの高い内容でした。

このクオリティの高さを感じられたのは大きく2つのポイントがあったからです。
1つ目は、エピソードの面白さ。
デビッド・プラウズは、『スター・ウォーズ』のエピソード4~6(旧三部作)に渡ってダース・ベイダーのいわゆる「中の人」を演じてきていました。
しかし、その素顔が明かされるエピソード6のラストシーンでは、セバスチャン・ショウが代役を務めることとなり、彼は実質降板させられることに。
作中では、なぜそんなことになったのかの経緯について上手くまとめているんですね。
また、ジョージ・ルーカスこそ出ませんが、旧三部作の製作として関わっていた人たちの話も聞いているため、より当時の状況が分かりやすくなっていました。
で、話が進んでいくと明かされるのが「デビッド・プラウズがエピソード6の撮影時にダース・ベイダーの死をマスコミにリークしたことで降板させられたものの、そんな事実は一切なかった」ということ。
おそらくこの事実だけ提示されても「いやいや、でも結局デビッドがどこかで口でも滑らせたんじゃないの?」と思うでしょう。
しかし、作中のプロデューサーを初め、多くの人たちのコメントを本作では集めており、事実確認などもしっかりとしているため、たしかにプラウズに非はなかったのだと納得できました。
多くの情報を集めていることによって、説得力が増す。
それはドキュメンタリーとしての質の高さを感じさせました。

プラウズが降板させられた事実とそれに対する反証をしていたこの作品。
このプラウズを初めとした俳優に対するリスペクトが窺えたのがポイントの2つ目です。
本作は、上に挙げた降板問題の他に、プラウズの半生についても描いています。
彼がもともとボディビルダーであったことや、『スター・ウォーズ』以前にも映画に出演していた事(『時計仕掛けのオレンジ』のジュリアン役であったことには驚きました)、「グリーン・クロス・コード・マン」なる交通安全のキャラクターを演じていた事など、ダース・ベイダー以外にも活動していたことを知らせてくれていました。
なにより貴重であるのが、実際にデビッド・プラウズにインタビューをしていることです。
それを通して、彼の人柄であったり、『スター・ウォーズ』に対する思いであったりが感じられるのは嬉しい限りでした。
また、彼がイベントに参加する様子なんかも追っていたりして、ファンに対するサービス精神旺盛な姿が見られるのも良かったですね。
件の降板騒ぎによって公式のイベントに参加ができないというのは理不尽な話でした。

そうした、不遇の扱いを受けたプラウズのために、エピソード6のダース・ベイダーのラストシーンを再現するという粋なことをしているのも本作の良さ。
残念ながら、権利の関係で実際に作られた映像は見ることができませんが、その力の容れようはプラウズに対するリスペクトを感じさせていました。

全編を通して、『スター・ウォーズ』に対しても、ダース・ベイダーに対しても、デビッド・プラウズに対しても並々ならぬ愛を見せていたと思います。
こうした愛があるからこそ、クオリティの高いドキュメンタリーとして仕上がっていたのでしょうね。


デビッド・プラウズの半生と、ダース・ベイダーを演じたエピソードを追っていた本作。
エンドロールでは、歴代の素顔を見せていないキャラクター(フランケンシュタインや狼男など)を演じた俳優を紹介をしていたりと、まさに「マスクの下の俳優に捧げる」作品といった感じでした。
残念なことに、デビッド・プラウズは亡くなってしまいましたが、こうして愛ある作品に残ったというのは素敵な話だと言えるでしょう。