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【ネタバレあり・レビュー】大統領の料理人 | フランスの美味しいを詰め込んだ映画!

大統領や官僚たちが普段どのような食生活をおくっているのか、という事は一般市民では知り得ません。
ましてやそれがフランスとなればなおのこと。漠然とオシャレなものを食べているというイメージしかつかないです。
今回レビューする『大統領の料理人』では、そんなフランス大統領が食した料理を作ったある女性シェフの戦いを描いた作品です。

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ストーリー

フランスの片田舎でレストランを営む女性シェフ、オルタンスは、大統領の指名によりエリゼ宮で昼食を作ることを任ぜられる。
男性シェフしかそれまでいなかったこともあり、オルタンスは主厨房とは相容れない。
逆境の中、彼女は助手のニコラと共に大統領に喜ばれる料理を提供していく。

感想

実在した大統領の料理人ダニエル・デルプシュの物語を映画化した作品ということもあって、料理人の物語ながらもドラマ中心で来るかと思っていたら、結構ガッツリと料理映画でした。
とはいえ、それが本作の面白さでもあります。
オルタンスが様々なシチュエーションで臨む料理シーン。
そこから生み出されるおいしそうな見たこともない料理は、空腹時に見ると危険なくらい食欲をそそられるものでした。
唯一、残念なのがフランスが舞台ということもあって、産地を言われてもよくわからず、料理名を言われてもよく分からず、調理の技術を言われても分からずという、料理が出てくるまでは何もイメージが沸かなかったことです。
おそらく、自分がフランス人だったらもっと楽しめたのかなと思いました。

料理要素が濃い本作ではありますが、もちろんドラマ要素もしっかりとしていました。
そもそもこの作品は、ジャーナリストが南極のキャンプ地でシェフをしているオルタンスの下を訪れるシーンから始まっています。
つまり、エリゼ宮での日々は回想録となっているわけ。
彼女の回想を通して、なぜ南極のキャンプ地に彼女が来たのかが紐解かれていくのが作品のテーマでした。

で、その回想から分かってくるのが、オルタンスがエリゼ宮を辞めたのはあまりにも自由のない環境であったから。
初めこそ彼女はノビノビと料理をし、大統領とも親しい関係を築くなど、シェフとして不自由のない環境で仕事をしていました。
けれど、公務に追われる大統領の料理に対する反応を見ることが出来なかったり、健康食を重視する栄養士から作る料理の制限を課せられたり、主厨房の男たちから偏見を持たれたりと、だんだん窮屈さの方が目立つように。
そうした心労が彼女をエリゼ宮の職から辞す結末へとつながってしまったわけですね。
そうして見ると南極のキャンプ地でのオルタンスは、自由な発想で料理を提供し、それを食べる人々も笑顔になっているという環境で、なぜ彼女がそこへ行ったのかが感じら取れるようでした。

そんな本作ではありますが、フランス映画という事もあってか、非常に落ち着いた雰囲気であったのが印象的でした。
劇的な展開もなければ派手な演出もない、一番印象に残るのは料理にフォーカスした映像といういかにもフランス的な作品であったと思います。
それだけに、やや心残りな部分があったのも事実です。
例えば彼女がエリゼ宮のシェフを辞めることとなって、彼女を女性だからと目の敵にしていた主厨房のシェフたちが「自分たちが勝った」と喜んでいた事や、良好な関係を築いていた助手のニコラとは特に別れの挨拶もなかったりといった事は、少しモヤモヤが残る気分でした。
モデルであるダニエル・デルプシュの物語を尊重したのか、はたまたただ不要な描写と判断されたのかは分かりませんが、そこくらいはフィクションを加えてでもドラマにして良かったのではないかと思いました。


フランス大統領へ料理を作るシェフを題材にしていた本作。
その知られざる裏側で作られるフランス料理の数々は映像越しでも食欲をそそる美しいものでした。
見ているだけでお腹が空いてくる、素晴らしき料理映画でした。