スキマ時間 DE 映画レビュー

【ネタバレあり・レビュー】ジョン・デロリアン | 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でお馴染みデロリアンを作った男のヤバすぎる実話!

夢を追うこと、それにはリスクが伴います。
その夢が大きければ大きいほどより大きなリスクを負うのは必然だと言えるでしょう。
今回レビューする『ジョン・デロリアン』は、革新的な車を作るためリスクを負いながらも挑戦をした男を追った作品です。

f:id:sparetime-moviereview:20201224164448j:plain

ストーリー

1977年。
パイロットであるジム・ホフマンは、麻薬のバイヤーであるモーガンに騙されコカインを運ばされたことからFBIにマークされる。
彼らの情報屋となることで逮捕されないでいたジムであったが、FBI捜査官ベネディクトはモーガンを捕まえるべく口うるさくホフマンを煽った。
時を同じくしてホフマンは隣人と出会う。
それは名車を世に送り出してきた男ジョン・デロリアンであった。

デロリアンを作った男の物語……でない!?

バック・トゥ・ザ・フューチャー』でお馴染みのデロリアンを作った男ジョン・デロリアンの物語と聞いて「これは見なくては!」と公開当時から思っていました。
けれど、見ることの出来る劇場が近くになく、当時はしぶしぶ諦めることに。
今回は、その雪辱を果たすために鑑賞でした。

ただ、この作品は私が求めている映画とは違いました。
私が求めていたのは、ジョン・デロリアンの半生からどのようにして車業界のトップに躍り出ていったのかという事です。
しかし、本作はデロリアンが隣人のパイロット、ジム・ホフマンに騙され麻薬の売却に関わった罪に問われるまでを追っているのです。
たしかにそれも実話っちゃあ実話なのですが、少し面喰いましたね。そんな限定的な箇所なのかと。
で、問題はそこだけではなく、そもそも彼が主人公ですらないことにあります。
では誰が主人公であったかというと、先にも触れたジム・ホフマンでした。
彼は偶然デロリアンの隣家に妻と越してきたのですが、麻薬密売人とつながっていることからFBIにマークされており、それがデロリアンにも不幸をもたらすことになるわけです。

本作はそのホフマンが裁判所の証言台に立つシーンから始まります。
この時点では話が全く見えず、ちんぷんかんぷんなわけですが証言を通して回想へ。
ただ、普通の回想と異なるのは、何度か裁判シーンに戻るという事でしょう。
ホフマンがデロリアンと友人となった経緯であったり、なぜ彼を騙すという選択を取ったのかを法廷シーンでの証言を交えつつ描くのはなかなか面白い取り組みであったと思います。

とはいえ、ジョン・デロリアンの物語を見たかった私としては、ホフマンの視点から描かれる、底知れないデロリアンのミステリアスさを強調していたのは少し物足りなさがありましたね。

偶然の出会いと友情

最初の項目にも書いたように、本作はジョン・デロリアンデロリアンを作る(ややこしい)までを追った作品ではなく、むしろホフマンとデロリアンの友情がメインストーリーとなっていました。
作品冒頭にも紹介されるように本作は「実話を基にした物語」であり、デロリアンは当然ながら、ホフマンもまた実在した人物です。
とはいえ、彼は証人保護プログラムにより現在の居場所も分からないらしいので、どこまで脚色があるのか分かったものでもないように思えます。
まあ、法廷で証言した記録からの再現なのでしょう。

偶然の出会いからホフマン知り合ったホフマンとデロリアン
そのため、ホフマンとしては初めからデロリアンをハメる気などさらさらありませんでした。
むしろ、車好きな彼はデロリアンに尊敬の念すら抱いていたと言えます。
デロリアンの大らかな性格も手伝い、ホフマンはパーティに呼ばれるくらいの仲に。
全編を通してデロリアンの人の好さがにじみ出ている気がしました。

問題があったとすれば、ホフマンの置かれた状況でしょう。
FBIと麻薬バイヤーのモーガンとの間に板挟みにされ、妻からは「ロクデナシ」と罵られる生活は、彼にとって苦痛そのもの。
その重圧から逃れたいがために、デロリアンを売ったのだと分かる経緯が作中では描かれていました。
とはいえ、デロリアンデロリアン(車)が売れないために財政難に陥り、ホフマンにグレーな言い方で資金調達を依頼していましたし、どっちもどっちなのでしょう。

作中では、まるで2人の間に絆があってホフマンが許されたかのような描写になっていましたが、実際はどうであったのか……
それはデロリアンのみぞ知る真実です。

デロリアンファンには堪らない作品!?

おそらく本作を見た多くの人が求めていたであろう要素がこのデロリアン(車)要素でしょう。
レビューサイトの投稿などを見てみると「デロリアンが見れて良かった!」なんて声もちらほら見られました。
ただ、個人的には少々消化不足であったと思います。
たしかに、デロリアンデロリアン(車)の構想を話したりするのは面白かったと思います。
ただ、走行シーンがないというのはいささか寂しかったと思います。
一応、ラストシーンでデロリアンが登場して「いよいよ走るのか!?」と思っていたらまさかのエンスト。
デロリアンが故障しやすい車であることは作中でも言われていましたが、とはいえ最後まで走行しないというのは残念です。
まあ、あの車体を見られるだけでも盛り上がったのは事実なわけで……
つくづくロマンの詰まった車だと思いました。


デロリアンによるデロリアン開発から失敗までを友人であったホフマンの視点から描いていた本作。
そこから見えたのはデロリアンの夢へ対する探究心と責任の強さでした。
知っての通り、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』により、一躍伝説の車へと祭り上げられたデロリアン
当時は完全な失敗作扱いであったものが脚光浴びるというのは奇妙な話ですね。