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【ネタバレあり・レビュー】溶解人間 | 涙腺まで溶ける!感動の溶解ホラー!

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ストーリー

土星探査を行っていた宇宙飛行士のスティーヴ・ウェストは特殊な宇宙光線を浴びてしまう。
地球に帰還し一命を取り留めたスティーヴであったが、彼の体は少しずつ溶解し始めていた。
ショックのあまり研究所を飛び出したスティーヴは、次々に人を襲い始める。
友人で会ったテッド・ネルソン博士は、彼を救うためその行方を追う。

感想

「ようかいにんげん」と聞くと普通ならベ〇・ベ〇・ベ〇の妖怪人間を連想するかと思いますが、ホラー映画好きであれば間違いなく本作『溶解人間』の方を思い浮かべるハズ。
それくらい、本作は記憶に残る衝撃の一作なのですね。

で、何がそんなに衝撃的なのかというと、やはり「溶解」要素。
CGのない時代ということもあって、手作りなわけなのですが、その質感が凄い!
テロテロのドロドロでまるでタール漬けにでもなったかのよう。
その色合いも素晴らしく、絵の具を何色も混ぜたみたいな淀んだ色合いは、体に害がないのか俳優の人が心配になるくらい。
さらに凄いのが進行度です。
溶解人間のスティーヴは、少しずつ体が溶けていくという設定。
そのため、作品が進むにつれてどんどん体が醜く溶けていってしまうんですね。
登場する度にどんどんデロデロになっていく様はシーンが変わるごとに楽しみになってくるほどでした。
そして、最後の怒濤の溶けシーンは圧巻の一言。
それまでスティーヴの骨格らしきものがガイコツのように浮かび上がっていたのですが、それすらも溶けてしまうという衝撃映像はもはや芸術すら感じさせるものでした。あのシーンが見られただけでも見てよかったと思いましたよ。

そうした、溶解シーンが衝撃的ではあったのですが、それだけではないのが本作の面白さです。
例えば、スティーヴが釣り人を襲うシーンでは生首が吹っ飛ぶび川流れをするというインパクト抜群なシーンを展開。
それだけでも面白いのですが、さらに凄いのが川流れをしてきたこの生首が小さな滝から落下し潰れるという芸術点の高いグロテスクなシーンを作っていること。
思わず笑ってしまうようなシーンですが、一生記憶に残るであろうシーンであることも事実です。
もうひとつ、冒頭のスティーヴに追いかけられる看護師の逃亡シーンもかなりのインパクト。
ガラス突き破りもそうですが、胸をバルンバルンと揺すりながら走る姿をスローで切り取った下品さは天才かと思うほどの表現力でした。


さて、こうしたふざけたシーンが多い中、ストーリーはなかなか真面目なのにギャップがありました。
宇宙飛行士として唯一生き残ったスティーヴが、人に出会えば化け物扱い、行く当てもなくさ迷う姿はただただ切なかったです。
常に管制塔からの通信を幻聴として聞いている辺り、精神的に地球に帰りつけていなかったように感じられるのがまた悲劇でした。
最後には理解者であったネルソン博士も亡くしてしまい、溶解。なんとも救いのない結末のように思えましたね。(しかも人類は歴史を繰り返すかのように次なるロケット発射を行ってしますし)
溶けゆくスティーヴが夕日をバックに歩く哀愁漂う姿はしばらく忘れられそうもありません。


ざっくり言うと、人間が溶けていくだけの作品であった本作。
しかし、芸術的なドロドロ表現や切ないストーリーは、名作ホラーになりえる感情を揺さぶるものがありました。
溶解人間』というタイトル含め、見た人が忘れることの出来ない作品だと言えるでしょう。