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【ネタバレあり・レビュー】人面魚 THE DEVIL FISH

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ストーリー

ある日、悪霊に取り憑かれた中年男が家族一家を殺害するという事件が起きた。 霊媒師であるリンはその男から悪霊を取り出し、魚へと憑依させる。 しかし、その除霊の様子を見ていたジャハオが好奇心から魚を家へと連れ帰ってしまう。 悪霊は、精神的に不安定なジャハオの母ヤーフェイに取り憑こうと目論む。

感想

タイトルからしシーマン的なやつが出てくるオカルトチックなB級映画を期待していた本作。 蓋を開けてみれば、魚に魔神が取り憑いて人を襲うという予想外なものでした。

まあ台湾の都市伝説をベースに、シリアス&真面目なホラーを展開しているため、駄作というわけではないのですが、色々と物足りなさすぎる…… そもそも物語があまり盛り上がりません。 過去に数々の悪霊を退治してきた虎爺(フーイエ)の力を憑依させられる霊媒師リンが、悪霊の痕跡を地道に追っていたり、悪霊の被害者となるシングルマザーのヤーフェイとその息子ジャハオの関係をじっくりと描いたり…… とにかく地味です。

盛り上がるとすれば後半部からなわけですが、こちらもなかなか独特。 ピアノで呪いを振りまき、人を衰弱させたり、悪霊が乗り移って人間をゾンビ化させたりと、ホラーなのですがファンタジー染みています。 最終的には、虎爺(フーイエ)の力を使ったリンが虎を召喚して魔人を倒してしまいますし「一体なにが起きているんだ……」と、置いきぼりにされた心地でした。 台湾の人ならあるいは納得のいく内容なのかもしれませんね。軽くカルチャーギャップを感じました。

そんな本作ですが、分かりやすかったのは解決方法です。 悪霊に取りつかれたヤーフェイを助けようとするジャハオ、魔神を前に死にかけていたリンを救ったのは、共通して"家族愛"でした。 「愛は〇〇を救う」というフレーズはよく聞きますが、どうやらそれは世界共通なようで、愛によって魔神の目論見は失敗に終わってしまうという展開を見せていたんですね。 個人的にはこうしたこてこてな感動パート嫌いではありません。 父親と離ればなれになったジャハオと、妻を亡くしたリンがそれぞれ"家族愛"を取り戻すというテーマに共通点も見られましたしね。

盛り上がるシーンがファンタジックであったり、ハートフルであったりしますが、この作品はあくまでホラーです。 そのため、ホラー要素にも少し触れておきますが、これは正直イマイチでした。 基本的にビックリ系で驚かそうとしてくるのは、お約束でもあるため目をつぶるとして、怖いキャラがいなかったというのが致命的です。 一応、本作では魔神とそれに利用されて悪霊にされた少年(体が魚のように鱗に覆われる病気であった)の2人がいるのですが、どちらも脅威も怖さも特にありませんでした。 その理由としては、先にも挙げたビックリ系の脅かし方しか出来ないのと、あまり登場する機会がないから。 このせいでホラーなのかファンタジーなのかよく分からないジャンルと化していたのは損している感じがしましたね。


台湾の伝説をテーマに、作られていた本作。 台湾の伝承を下敷きにしていることもあり、独特な雰囲気がそのまま作風に表れていたように思えました。 面白さはそこそこですが、雰囲気は新鮮で目を惹く作品でした。