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【ネタバレあり・レビュー】ダブルボーダー | 譲らない、譲れない、男たちの闘い!

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ストーリー

メキシコの近くテキサス州の町ウバルデ。
そこでレンジャーとして町を守るジャックは、メキシコから輸入されてくる麻薬を追っていた。
その麻薬ビジネスを牛耳っているのはジャックの過去の友人ベイリーであった。
その頃、町には元軍人たちが貸金庫に眠るある物を狙い暗躍していた。

感想

一人のテキサス・レンジャーと六人の元軍人、一人の悪漢の計九人の男たちが集まったなんともむさ苦しいヴィジュアルが印象的であったこの作品。
それはなにも男たちが集まっているからというだけでなく、彼らが常に汗だくであったからでした。
それもそのハズ、本作の舞台となるのはテキサス州とメキシコという、温暖な地域。
そこを走り回ったり、銃撃戦を展開したりすれば当然汗だくになってしまいます。
また、常に命のやり取りが付きまとっているため、皆の間に緊張感が漂っているのも汗だくであった一因なのかもしれません。

そんな本作、冒頭は元軍人たちの紹介から始まります。
正直、ここでは彼らが書類上は死んでいるという情報しか入ってこず「一体、何が始まろうとしてるんだ?」という状態でした。
この後、急にテキサス・レンジャーのジャックの視点に切り替わり、ベイリー追跡の話に変わったりして疑問の多い序盤だった印象です。

面白くなってくるのは中盤から。
ハケット少佐率いる元軍人たちが銀行強盗のための下準備を始め、ジャックはベイリーを追う内に相棒を亡くすなど、だんだんと物語が加速していきます。
そして元軍人たちによる銀行強盗シーンは臨場感抜群。一筋縄には行かない展開含め、ハラハラドキドキとさせられる展開の連続に惹きこまれました。
この銀行強盗シーンでレンジャーたちを陽動させるため倉庫を爆破させるシーンがあるのですが、そのシーンの迫力が凄い!
80年代の映画でいったいどうやってあそこまでの爆発を出せたのか……
あのシーンを見るだけでも本作への力の入れようが窺えました。

そんな心をがっちり掴むのがウォルター・ヒル監督の手腕であったと思います。
無関係であったハズのレンジャーと元軍人たちが手を組むという熱い展開。
まるで西部劇のようなジャックとベイリーとの決闘。
銃撃戦に次ぐ銃撃戦のロマン。
気づけば手に汗握り、食い入るように画面を見ている自分がいました。
最高のロマンと迫力、男臭さを詰め込んでいたと思います。

個人的にヒットしたのがここで挙げた西部劇のような展開でした。
舞台がテキサス州であることもあり、常に西部劇風味ではあるのですが、ジャックらの生き様もそうなんですよね。
ジャックは町を守るために、ベイリーは己の私欲を満たすために、元軍人たちは任務のために行動をしていました。
善悪問わず、それぞれが抱いた信念を貫く。
それは西部劇でよく見る光景だと思います。

そうした中でも、主人公であるジャックが正義の位置にいるのがポイントでした。
ベイリーを今なお友人と信じ救おうとし、得体の知れない元軍人を信用して共に行動する、それはひとえに町を守るという正義を果たすためです。
そのために命を賭けた戦いへと踏み入れていく姿は、まさに漢。
西武時代を生きた誇り高きガンマンのようなカッコよさを持っていたと思います。
とはいえ、それでも悪が完全に根絶やしにされることがないラストシーンは、どこか皮肉めいたものを感じました。


テキサス州を舞台に、レンジャーの誇り高き戦いを描いていた本作。
その内容は、公開当時1987年の時代を感じさせるものであったと思います。(1982年のレーガン大統領による麻薬掃討作戦が成功し、別ルートであるメキシコからの輸入が横行し始めたのだとか)
そんなアメリカの歴史を感じさせる作品でもありました。