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【ネタバレあり・レビュー】クリスタル殺人事件 | 安楽椅子探偵を映画化する面白さ!

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ストーリー

1953年イングランド
片田舎のセント・メアリ・ミードにハリウッドからの映画隊が訪れていた。
それを率いる監督のジェイソン・ラッドと、その妻であり女優のマリーナ・クレッグはそこでパーティーを開く。
近隣に住んでいた女性ミス・マープルもまたそのパーティーに参加をしていた。
しかし、彼女はパーティー中、足を痛めて帰宅することに。
同じ頃、邸宅では一人の女性がお酒を口にして死亡する事件が起きていた。

感想

ミス・マープルといえばアガサ・クリスティの小説の登場人物であり、安楽椅子探偵……すなわち現場にいかず伝聞により事件の真相に近づいていく探偵というイメージが強いです。
本作もその例に漏れず、マープルはほとんどを自宅で過ごし、伝聞で事件を解決するというのが見所となっていました。

こうなると問題となるのが映画としての見栄えです。
個人的にですが、安楽椅子探偵モノは面白いものの映画向きではないと思います。基本、動きませんからね。
では本作はその問題をどのように解決していたかといえば映像の美しさで乗り越えていました。
ジェイソンとマリーナが暮らしている邸宅の内装であったり、彼らが撮影現場として使う映画のセットであったりは、1950年代という時代も見えることから視覚的に楽しめるんですね。

ただ、それだけだと「テレビでもいいのでは?」という疑問が生まれてきます。
実際、このミス・マープルのシリーズはドラマ化されており、シーズン6まで制作されている人気シリーズですからね。
では本作を映画化したことの利点がどこにあったかというと、壮大さにあったと思います。
本作、冒頭のパーティーシーン~殺害シーン、マリーナの映画撮影現場など、なにかとエキストラが多いです。
そこから見えてくるのは、撮影規模の大きさ……だけでなく犯人の大胆不敵さ。
人が多い中でも、犯行へと踏み切る犯人の行動力は、ドラマの枠では収まりきらない恐ろしさを感じさせています。
さらに、容疑者も絞りきれないという状況。まさに、映画スケールの展開であったと言えるでしょう。

さて、そんな本作が取り扱う事件がパーティー中に起きた毒殺事件。
基本的にマープルは家におり、聞き込みなどは彼女の甥ダーモット(ロンドン警視庁の警部)がやってくれます。
このダーモットがまたなかなかのキレ者かつユーモラスな性格をしているんですね。
そのため、聞き込みシーンであっても効率よく情報収集しますし、マープルとの何気ない会話でもちょっとした楽しさがあったりと小気味良いテンポで話を進めめくれます。
そんなダーモットの聞き込み結果を得てマープルが推理をするわけですが、これまた驚きの連続。
犯人こそ予測はつきましたがその動機がまさか序盤から明らかになっていたとは思いもしませんでした。
この動機が明かされる回想シーンも映像があるからこそ呑み込めるものとなっていたのが良かったですね。
で、さらに衝撃がラストシーン。
犯人が自殺するという展開は珍しくはありませんが、あそこまで美しい幕引きというのはなかなか見れません。
予測はできても驚きのある内容は見ごたえのあるものでした。


ミス・マープル作品の中でも屈指の名作と言われている本作。
マープルを演じたアンジェラ・ランズベリーのハマり役っぷりや映画だからこそ楽しめる要素はその名作をより面白くしていたと思います。
ミステリー小説を映画化するお手本のような作品でした。