スキマ時間 DE 映画レビュー

【ネタバレあり・レビュー】夜の訪問者 | 南フランスで魅力が光る!チャールズ・ブロンソン×テレンス・ヤング第一弾!

f:id:sparetime-moviereview:20210217222854j:plain

ストーリー

フランス南部の港町で、観光客にフェリーを貸し出すジョーは、妻と義娘と平穏な暮らしを送っていた。
ある夜、ジョーたちの暮らす家にジョーの刑務所仲間ロスの部下が現れる。
ロスは、過去に脱獄計画をジョーの裏切りにより失敗したことから恨みを持っていたのだ。
ロスの部下を殺したジョーであったが、間もなくロスたちが現れ妻子が人質に取られてしまう。
ジョーはロスの計画するアヘン密輸入を手伝うこととなるが、逆襲の機会をうかがっていた。

感想

主演チャールズ・ブロンソン、監督テレンス・ヤングといえば、翌年の『レッド・サン』(1971)やさらにその翌年の『バラキ』(1972)でもタッグを組みます。
そんな二人の出会いとも言えるのがこの作品。
見ていて思いましたが、非常にブロンソンの扱いが上手だったと思います。
現在は家族を愛する大黒柱として優雅な生活を送っている主人公ジョーが、実は数年前に刑務所にいたという過去を持っていたというキャラクター性は、ブロンソンのイメージにピッタリです。
決して派手なアクションは見せないものの、巧みにその場の状況や武器を駆使して敵を倒すのも彼らしい。
なによりコッコイイのが、ハードボイルドな立ち振る舞い。
敵に銃を向けられようが、警察から追われようが、冷静沈着に対処してしまうハードボイルドさは、渋カッコイイブロンソンの魅力を最大限に引き出していたといたと言えるでしょう。

そんな本作でブロンソン演じるジョーは、3人の男に妻子を人質に取られた状況からの逆転を強いられます。
このシチュエーションは、アクション映画でもありがち。「一体この状況からどうやって逆転するんだ?」というワクワク感を煽るのは面白いと思います。
ただ、その状況が最期まで続くとさすがに胸やけ感がありました。
ようやく助かったかと思ったら敵に銃を向けられて……という展開が2,3回繰り返されるとさすがにハラハラよりももどかしさの方が上回ってしまいます。
最後の逆転のシーンも、敵の隙を突いてでしたし、最後まで人質という枷がある状況というのは少し苦しかったように思いましたね。

本作において、ひそかに楽しかったのが、南フランスの様々なロケーションでした。
まず、港町ではクルージングやパリ祭で人が賑わう様子が見られます。
山岳地帯では、ジョーの妻ファビエンヌとその娘が逃走劇が繰り広げられたり、ジョーが警察とのカーチェイスをしたりと、その地形を生かした展開を見せていました。
街中でも同じくカーチェイスを展開していたのが印象的。
このように、なにかとシチュエーションが生きていたのは面白かったですね。
また、序盤の方でファビエンヌが家の中でロスの部下と遭遇するまでのシーンは、テレンス・ヤング監督が過去に監督した作品『暗くなるまで待って』を連想させました。
ロケーションを生かすのが上手い監督の手腕を垣間見た気がしました。


チャールズ・ブロンソンといえばハリウッド俳優です。
けれど、本作ではフランスで大暴れを見せていました。
ラストシーンでは、フランス共和国の成立を祝う日のパリ祭にも参加していました。
2年前の1968年の作品『さらば友よ』で始まったフランス版ブロンソンの歴史を根付かせることとなった作品だと言えるでしょう。